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老後、あなたの住む家はあるか?

高齢者住宅難民問題待ったなし(1/2ページ)

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2019年に噴出した“年金2000万円問題”。しかし老後の不安はなにも年金問題だけではない。老後の住まいが見つからない“漂流老人”がここ数年で急増し、社会問題になる可能性があるのだ。もしあなたが老後、住む家をみつけられなかったとしたら・・・。 『老後に住める家がない!』 を上梓した司法書士の太田垣章子氏に高齢者の住宅問題について聞いた。

――太田垣さんは、高齢者の住む家がなくなる住宅難民がここ数年で表面化していくと警笛を鳴らしています。

単身高齢者世帯は、2015年には601万世帯であったのに対し、2035年には762万世帯まで増加すると予測されています。日本はこの20年足らずで超高齢社会となりました。準備に時間がないのは分かりますが、このようにいびつな人口の偏りでは安心して子どもを産める社会とはいえません。子どもが苦労するのが当たり前の世の中で、誰が子ども産みたいと思うのでしょうか。制度、そして社会は完全に破綻しています。

私が司法書士として賃貸住宅のトラブルに携わったのは2002年からで、その頃は家賃滞納などの問題はありましたが、高齢者の住居問題はとくにありませんでした。その年代の人は、持ち家に住んでいたり、家族がなんとかしていたので、賃貸でのトラブルというもの自体がなかったのです。最近では高齢であるが故に住む家がない、立ち退き後に住む家が見つからないなどといった問題が顕在化しています。実際に私が担当している2~3割は高齢者の案件です。将来の不安を反映してかリースバック(所有していた不動産を売却した後、購入した第三者より当該物件を借り受けること)の登記なども増えてきました。巷では、「持家VS賃貸」などと言っていますが、そんな悠長な局面ではないことに全員が気付くべきです。日本は色々な面で対応が遅く、古い借地借家法に縛られていますが、現在の賃貸業界に果たして合っているのでしょうか? 誰も得していない。家主も借主も古い法律に苦しめられているのです。誰かが声を上げて、この問題を表に出さなければいけないと思ったのです。

――高齢入居者の受け入れを緩和させる制度として終身建物賃貸借契約(借主が死亡したときに契約が終了する賃貸借契約。通常の賃貸借契約では借主が死亡しても契約は相続人に引き継がれる)や住宅セーフティネットなどもあります。

終身建物賃貸借契約はほとんど使われていないという現状があります。ただでさえ、高齢者の入居は家主にとってハードルが高いのに、終身建物賃貸借契約は認可を受けなくてはいけない。当然届出も必要で、このことがさらにハードルを上げている。これじゃ誰も使わないですよね。住宅セーフティネットも同様です。本来であれば、国が高齢者のために住宅を用意しなければいけないはずなのに、できていないから民間の家主へしわ寄せがきている。なのに、国が決める制度には配慮がないのです。上から目線ではダメで、もっと現場の声を拾っていかないといけません。

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この記事を書いた人

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