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家賃滞納は他人事ではない。今の日本であれば誰もが陥る可能性がある(1/4ページ)

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太田垣 章子(おおたがき あやこ)さん  章(あや)司法書士事務所代表、司法書士。

太田垣 章子(おおたがき あやこ)さん  章(あや)司法書士事務所代表、司法書士。 30歳でシングルマザーとなり、6年間の極貧生活を経験。36歳で司法書士試験に合格。これまでにのべ2200件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託。その際、多くの家賃滞納者の気持ちに寄り添いながら業務に従事してきた。著書に『家賃滞納という貧困』(ポプラ社刊)、『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社刊)などがある。

シングルマザーとして経験した極貧生活

──現在、司法書士事務所の代表を務める太田垣さんですが、シングルマザーとして大変苦労した時代があったそうですね。

30歳のときに乳飲み子を抱えて離婚しました。それまで専業主婦だったため、スキルもおカネもなく、やっと仕事に就いても子どもがいるために残業はできず、極貧生活が6年間続きました。少ない給料の中から家賃を払って、司法書士試験を受けるための講座費用や受験費用などを引いたら、生活費は3万円。1万円は水道光熱費、1万円は食費、1万円は雑費となると、手元に残るおカネはありませんした。

──司法書士試験に合格したのはいつですか。

36歳のときに試験に合格しましたが、すぐに生活が好転するわけではありません。実務経験ゼロ、36歳のシングルマザーを雇ってくれる事務所はなかなかありませんからね。30通の履歴書を送ったものの、どこも面接すらしてもらえませんでした。その後、やっと面接をしてくださるという事務所にうかがったときには、開口一番、「給料はいらないので、1ヵ月、私を試してください!」とお願いしたくらいです。採用された後も、給料は手取りで15万円くらい。大変な生活は続きました。

──そういった経験もあって、今回のご著書『家賃滞納という貧困』を執筆するにいたったのでしょうか。

自分自身も一歩間違えれば家賃滞納者になった可能性はありました。しかし、いまの時代、家賃滞納という状況は他人事ではなく、誰でも陥る可能性があるのです。私が家賃滞納という現実を初めてみたのは、司法書士になったばかりのころです。不動産会社に不動産登記の仕事をいただけないかと営業に回っていたとき、たまたま家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きの依頼を受けました。それ以来、多くの家賃滞納者の実態を見ることになりました。家賃滞納者を擁護するわけではありませんが、彼らがそこにいたるまでに社会のさまざまな問題が絡み合っていることが分かりました。今後、家賃滞納者は加速度的に増えていくと考えられます。“見た者の責任”として、この実態を多くの人に知ってもらいたい、そして世の中の人がそれぞれの立場でできることを考えてもらいたいと思い、この本を書くことになりました。

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この記事を書いた人

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