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「聞きコミ!大家さん」――「神は細部に宿る」芸術にまで昇華した賃貸経営

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取材・文/浦邊 真理子 撮影/編集部

 大阪で陸の玄関口である「新大阪駅」から2駅、約4分に位置する「吹田駅」。大阪でも、環境やアクセスもよいといわれる吹田市は、各ポータルサイトの「大阪府版 住みたい街ランキング」の上位常連である。その吹田市に、ドイツの美しい街並みを再現しているオーナーがいる。それは、グリーンワルトの岡本幸治オーナーである。岡本オーナーの行う30年に及ぶ「街づくり」は、賃貸経営で重要視される「利回り」や「資産形成」という考えを超え、自身の第二の故郷である美しいドイツの街並みやスピリットを賃貸経営に生かし、たくさんの入居者たちに愛される物件を創り出している。現在は全て満室だが、その素晴らしさをお伝えする。

12年のドイツ駐在生活からの「街づくり」

これは……大手ゼネコンの一連企画なのかと思うほど、墨色の屋根と白いオーダータイルが特徴的な白亜の建物が並ぶ一画。ここは、岡本オーナーがプロデュースした建物が、緑豊かな区画内に6棟建ち並んでいた。


航空写真による一画 画像提供/グリーンワルト

個人で1棟目を建ててから約30年。この一画だけが、ヨーロッパにワープしたような、旅先でホテルに着いたような、そんな世界が広がっている。

手入れの行き届いた美しい木々が茂る「メイン通り」を進むと、昔ながらの和風の豪華な門戸がそびえている。ヨーロッパ風の街並みに、なんともいえない絶妙さでマッチした重厚感のある門構えである。


岡本オーナーの生家の門構えを生かしたエントランス 撮影/編集部

門戸をくぐると、さらに驚く光景が目に広がる。岡本オーナーの住居となる建物だそう。この建物は、ドイツ駐在時に利用した美しいホテルの再現を試みた渾身の作品なのである。


2016年竣工、屋根のラインが美しい「ヴィラ・エンゲルストロイメ」 岡本オーナー住居兼ファミリー用住居 撮影/編集部(左)
岡本オーナーが再現を試みた、ドイツ ニーダーザクセン州のローテンブルグに実在するWachtelhof (うずらの庭)という名のホテル 画像提供/Tripadvisor(右)

大手電機機器メーカーのドイツ駐在員として、12年間ドイツに滞在した岡本オーナー。ドイツの美しい街並みや、緑豊かな森に強く惹かれ、帰国後は、その美しい街並みを吹田市に再現し、居住者の満足はもちろん、近隣住民にとって土地としての価値向上にも貢献する結果となった。

岡本オーナーは現在、17棟 100戸の部屋を運営しており、全てにドイツ語の美しい物件名が付けられている。岡本オーナーの建物とドイツへの愛と美意識が感じられる。


経年しても白いオーダータイルと木々の緑で美しさが増す 提供/グリーンワルト

「神は細部に宿る」

室内は、植栽一つ、照明一つ、壁紙やカーテンの房飾り一つに至るまで、完璧に整っている。岡本オーナーは、過去に「美しい」と記憶に残ったものを積極的に取り入れているそうだ。長年暮らしたドイツの深く高貴な色、シンガポールで利用した空港のトイレ、安土桃山城の天守閣、クオリティの高い美しい車のパンフレットなど、その美的センスを物件作りに生かし、建築家や工務店任せにせず細部にまで指示を出すという。


部屋の一例 画像提供/グリーンワルト

岡本オーナーの求める世界観を伝えるため、建築家をドイツにまで連れていき実物を見せたというのだから、生半可なこだわりではない。
 
居住者が利用できるジャグジーやサウナもある 撮影/編集部

通常であれば、賃貸物件は分譲物件と違い、建築に費用をかけてしまうと回収するのに年月がかかってしまうため、なるべく安価に最低限のグレードで建築するケースが多いだろう。しかし、岡本オーナーは分譲物件以上のクオリティを追求するという。

ドイツのモダニズム建築家“ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ”の言葉といわれている、「神は細部に宿る」。岡本オーナーは、細かいディティールにこだわってこそ芸術として完成するのだという。


お城のような物件エントランス 提供/グリーンワルト


高級感溢れる共用部。大理石の床、階段装飾、傘立てや表札、細部に至るまでこだわりがみられる 撮影/編集部

賃貸経営に生きる“松下幸之助の教え”

これほどに費用を投じた部屋ならば、家賃も高額なのだろうと誰もが思うであろう。しかし、これほどの高クオリティにも関わらず、家賃は近隣と比べてもそう高くはないのだから驚きだ。それで利回りは取れるのだろうか……。

「普通はそう思うでしょう。しかし、喜んで住んでいただくと、『ずっと引っ越したくない』と思うので、私の物件では退去者が少なく、20年以上継続して住むという方もいるのです。また退居が出るときも、退居前に部屋を内見せずに、建物外観や周りの環境、部屋の写真などを見てすぐに次の入居者が決まっています。反対に、家賃を高くし入退居が頻繁に発生してしまうと、空室期間が発生するうえに、クリーニング費や仲介手数料や広告費、人件費などが発生してしまい、結果的に家賃数カ月分の出費となるのです」(岡本オーナー)

退居が出たときは、5年以上経った部屋の場合、トイレなどの水回りは最新の物にかえ、シーリングライトなども交換するという。

「時代に合った美しい部屋を提供することで、人気物件であり続け、次の退居までの期間も長くなり、家賃を下げる必要もないのです」(岡本オーナー)

よい製品を適正価格で厳格に集金する

ほかより圧倒的にいいものを、提供する側が売りたい価格で提供するのではなく、消費者が適正と思う価格で提供する。これは松下幸之助の教えである。

目先の利益と、早い資金回収を考えてしまう一般の投資家には難しいことであるが、岡本オーナーの賃貸経営にはこの真髄が生かされているのだ。「お客様に最高の生活環境を提供する」という経営方針のもと、このように30年間変わることなく、美しい物件と街並みを創り続けている。

30代で迫る危機に気付く

岡本オーナーの生家は、代々大阪府吹田市のこの敷地内に住み、残りの土地を借地としていたという。大学卒業後、大手電機機器メーカーに就職し、ドイツ駐在員として順風満帆な生活を送っていた岡本オーナーは38歳で帰国するのだが、その頃、今後この敷地を相続することに対して迫る危機を感じていた。

借地権は相続されることは知られているが、底地(借地権を設定した土地)を所有する地主も、毎年の固定資産税に加え相続税がかかる。現状の日本は、相続税が高い。

時代はバブル期、莫大な相続税が発生することに気が付いた岡本オーナーは、このままでは全ての土地が相続により没収されてしまうとおののいた。

そこからは独学と試行錯誤で、サラリーマン生活と並行して賃貸経営をスタートした。無知のなか勢いと理想だけで建てた1棟目は、物件にこだわりすぎて収支計画は崩れていたと現在の岡本オーナーは笑う。しかしゆるぎない「よりよい物を生みだし適正価格で提供する」という精神は首尾一貫し、借地も全て買い戻し現在に至るのだった。

二つの故郷であるドイツと日本に恩返し

岡本オーナーが運営するグリーンワルトは財団を作り、2010年よりドイツから毎年2名の若者に、3カ月間の日本研修を提供する活動を行っている(20年よりコロナ災禍のため停止中)。研修生用にゲストハウスが用意され、毎月の活動費を提供、日独関係機関や大学のゼミ生との交流など、日本の文化を学ぶ場を提供しているという。
 
岡本オーナーは研修生を迎えることが喜びだという 画像提供/グリーンワルト

岡本オーナーがドイツと深い関わりを持つきっかけになったのは、大学生時代に国際技術学生研修協会の研修生として留学したことだったそうだ。この経験が人生を決める大きなきっかけとなり、後の自分を作ってきたという。そのようなきっかけを多くの若者に与えたい、恩返しがしたいという思いと、日本の素晴らしさを伝えるためには、実際に見て経験し、祖国に帰って広げてもらうことが大切であるという考えのもと、多くの研修生を受け入れているのだという。

そんな岡本オーナーのいまの日常は、毎日物件を回り、雑草一本、ゴミ一つを片付ける。全ての草木に水をやるだけでも数時間の労働だ。しかし、次の物件に思いをはせ、敷地内の木々の成長を想像し喜びを感じている。

経営というものは、非常に躍動的なしかも生きた総合芸術である。
経営には心理が活かされ、善も美も活かされている。そして国家社会のために大きな貢献をするのが、経営である。こう考えると、経営というものは、本当に崇高な総合芸術である。

これも松下幸之助の格言である。まさに、岡本オーナーが行う賃貸経営の本質ではないのだろうか。

※現在満室のため、空室が出たときにお知らせがある「空室待ち」リクエストが可能です。
https://uchicomi.com/chintai/owner/19605/

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この記事を書いた人

「聞きコミ!大家さん」 担当編集

「聞きコミ!大家さん」では、賃貸物件を所有する大家さんが直接入居希望者を募ることができるウチコミ!をどのように活用しているのか、建物へのこだわり、ちょっとしたアイデアで空室が解消された事例などを紹介していきます。それぞれの工夫や取り組みが、賃貸経営に悩めるオーナーに対して少しでも参考になればと思います。

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