夫婦、または親子で住宅ローンを借りる場合の注意点は?
牧野寿和
2016/02/26
夫婦でローンを組む場合
夫婦で共働きをしているなど、収入が一カ所からではない家庭も多くあります。そういった場合は、住宅ローンもひとりで返す場合とは違った形を取ることができます。ここでは、そうした住宅ローンを組むときの注意点をお話しします。
まず、共働きの夫婦が返済する主な方法としては、以下の3つがあります。
(1)夫または妻が単独名義で住宅ローンを組む
夫か妻のみの年収で借入れが可能な場合。または夫か妻に健康上など何らかの問題があり住宅ローンが組めない場合です。
(2)収入を合算する
ふたつめは、夫婦の収入を合算して住宅ローンを借りる方法です。
収入を合算することで借り入れ金額を増やすことも可能です。夫婦のどちらかがローンを組み、もうひとりは「連帯債務者」もしくは「連帯保証人」となります。
たとえば、ローンの名義は夫にして、夫婦で収入合算して住宅ローンを組んだ場合、妻が「連帯債務者」か「連帯保証人」で、住宅ローン控除が受けられるかどうかが変わってきます。
具体的には、妻が連帯債務者となる「連帯債務型」では、夫婦ともに住宅ローン控除を受けることができますが、妻が連帯保証人となる「連帯保証型」では、住宅ローン控除を受けられるのは夫だけとなってしまいます。
財形貯蓄融資や【フラット35】で収入合算した場合は、妻は「連帯債務者」となり夫婦でローンの借入額を按分して夫婦とも住宅ローン控除を受けることができます。
しかし、多くの銀行の住宅ローン(一部の金融機関を除く)は、この場合、妻は、「連帯保証人」となることが多く、住宅ローン控除を受けられるのは夫のみで、妻は住宅ローン控除を受けることができません。
住宅ローン控除を夫婦で受けたいのであれば、「連帯債務型」の住宅ローンを選ぶことをおすすめします。
(3)ペアローンを組む
3つめの方法は、ひとつの物件に対して夫婦がそれぞれ別々にローンを組んで返済していく方法です。
「ペアローン」とも呼ばれるこの方法では、完全に違う複数のローンを組み合わせることになるので、金利タイプや返済期間が異なるものをあわせて使うことができます。
ただし、別々の金融機関でローンの借入れを希望した場合、各金融機関の抵当権の順位の同意を得ることができなく、ローンが組めないことがあります。
親子でローンを組む場合
ふたりで行なうローン返済は共働き夫婦に限った話ではありません。同居を前提とした二世帯住宅の場合、親子で返済することも考えられます。
親子の年齢差を考慮している点で特徴的な返済方法が、「リレーローン」です。親子リレー返済とも呼ばれるこの方法は、親世代の年齢が高い場合によく使われます。
高齢のため、長期の住宅ローンを組めない親が融資を受ける際に、子が連帯債務者となり、ローン返済を引き継ぐことで、長期のローンが組めるようになるというものです。
このリレーローンを利用すれば、「長期ローンを組みたくても組めない親」と、「働き始めてはいるがまだ収入が少ない子」の双方の希望が満たせます。
ただし、リレーローンには注意点も多くあります。
まずリレーローンは、親も住宅ローンの債務者になるので、親自身に返済能力がなければいけません。少なくとも借入れ時には収入が必要です。
それにリレーローンには、親と子のどちらがどういう割合で返済するのか、あるいは返済したのかが、わかりづらくなる恐れもあります。
そうなると、親子間の金銭トラブルにつながってしまうかもしれません。同居して生活していくために二世帯住宅を購入するのに、そんなことになったら大変です。
また、同居を子どもの家族以外にも子どもがいる場合、その子たちを含めた、親の相続の問題、この場合遺産の分配の方法を事前に決めておく必要があります。
ふたりで行なうローン返済は、ひとりで返済を行なうよりもリスクが小さいとされます。
しかし、気をつけなければいけない点は、むしろふたりで返済するケースのほうが多いかもしれません。家族と慎重な話し合いを重ねた上で、安心安全な返済計画を組んでいきましょう。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。