土地の購入資金が住宅ローン控除の対象になる条件
高橋敏則
2016/01/30
土地にしか名義がない場合は?
住宅ローン控除は、その名の通り住宅購入に関するローンが対象となる控除でしたが、1999年(平成11年)から敷地部分(土地)についてもローン控除の対象となりました。とはいえ、あくまで「住宅」が中心にある控除ですので、土地の購入資金の控除に関しては一定のルールがあります。
では、まず土地と住宅の名義が違う場合はどうなるのでしょうか?
たとえば、土地の名義が夫で2000万円のローンを組み、住宅の名義が妻で1500万円のローンを組んだ場合、夫は土地部分にしか名義がないために、実態としてはその住宅に住んでいたとしても、「家屋を伴わない土地の購入資金のためのローン」と判断され、住宅ローン控除を受けられません。もちろん、妻のほうはそのほかの要件を満たしていれば、住宅部分の1500万円のローンを対象とした住宅ローン控除を受けられます。
この場合、夫の名義が共有持分としてあれば考え方が変わります。住宅に夫の名義がある場合、その金額が妻より少なかったとしても「家屋を伴う土地の購入資金のためのローン」と判断され、そのほかの要件を満たせば土地のローンである2000万円が住宅ローン控除の対象となります。
このように、土地と住宅の名義については、購入後の控除まで頭に入れて慎重に決めましょう。
土地を先に購入した場合の扱いは?
分譲マンションや建売住宅・中古住宅の購入の場合は、住宅と土地をセットで購入することになりますので、土地についての借入金も住宅ローン控除の対象となりますが、土地を先行で購入した場合はどうなるのでしょうか?
たとえば、2016年1月に土地を購入したとしましょう。この土地の先行取得に関して「家屋の新築の日前2年以内にその家屋の敷地を購入した場合」は住宅ローン控除を適用できることを税法で定めています。
ということは、2017年12月までに建物が完成・引き渡しされていれば住宅ローン控除の対象となるということです。ここで注意したいのは、新築工事の契約や着工ではなく完成・引き渡しが2年以内に行なわれることが条件になりますので、2017年6月に着工したとしても完成が2018年3月では2年を超えていますので対象にはなりません。
また、土地の先行取得について、土地の取得代金についてはローンを組み建物については自己資金でまかなう場合、完成した新築物件に土地の借入金を担保する抵当権設定が行なわれていれば、家屋の新築・購入と同時に敷地の購入にあてる借入金と判断され、住宅ローン控除の対象となります。
借地権・底地の購入についての考え方
中古物件の場合、借地権(建物の所有を目的とする土地賃借権)や底地(借地権の付着した土地の所有権)が同時に売り出されているケースがあります。
借地権の購入に関しては、家屋の新築・購入と同時に敷地の購入にあてる借入金と判断されることから、借地権購入の権利金は一般の土地と同じ扱いとなります。また、底地に関しては、底地を購入後2年以内に建物を建てた場合に住宅ローン控除の対象となります。
このような借地権や底地については、専門的な知識も必要になりますので、一度、不動産仲介業者などに相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
金融機関との打ち合わせも必要
土地が関わる住宅ローン控除に関しては判断が難しい部分があるので、プロフェッショナルの意見を聞くのが問題解決の早道です。ローンを組む金融機関の担当者に、土地を購入する条件やその後の新築建築計画などを相談し、どのようにすれば一番有利な住宅ローン控除を受けられるのかを教えてもらいましょう。
自分が納めた税金分とはいえ、家の購入時は出費がかさむもの。正当な権利として、還付されるべきお金は還付してもらえるようにしていきましょう。
この記事を書いた人
公認会計士、税理士
1979年、中央大学商学部卒業。80年、公認会計士二次試験合格。アーンスト・アンド・ウイニー会計事務所、監査法人を経て独立、高橋会計事務所を開設し、現在に至る。経理・財務・税務の指導ほか、中小企業の経営コンサルティングに従事。 「専門知識がなくてもわかる解説」が人気となり、税務研究会、企業の社内研修会など各種セミナーの講師として活躍するほか、ビジネス書の著者としても多くの書籍を執筆している。 著書に「相続・贈与でトクする100の節税アイデア」「小さな会社の税務がすべてわかる本」、「小さな会社と個人事業主の消費税がすべてわかる本」 (ダイヤモンド社)、「不動産オーナの節税対策/知っておきたい土地建物の税金」(清文社)、「法人税/有利選択の実務」「消費税/有利選択の実務」(税務研究会)など多数