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賃借物の一部滅失その他の事由による賃料減額について(2/2ページ)

森田雅也森田雅也

2022/06/17

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1, 減額の時期

賃料は、一部滅失等が生じた時点から減額されます。そのため、賃借人が賃借物の一部が使用収益できない状態になってからしばらく経って貸主に通知した場合、一部滅失等が生じた時点がいつか特定できず、実際に使用収益できなくなったのはいつなのか分からないという点でトラブルになり得ます。

そこで、オーナーとしては、まず賃貸借契約書において、借主に対して貸主への通知義務を明示的に課すとともに、減額割合の算定方法についても契約書の中であらかじめ定めておくことが有効といえるでしょう。

もっとも、通知義務を明確に定めることによって、むしろ借主からの請求を招いてしまうおそれがあることに注意が必要です。

また、借主からの通知があった際は、使用収益できない部分については、部品の調達や業者の手配等にある程度の時間を要することがあるので、無用な紛争を避けるために、修繕の完了に向けたスケジュールや状況等について、借主に対して具体的に説明を行っておくことが重要です。

2, 減額の割合

上述の契約書の通り、一部滅失の程度や減額割合については明確な基準がありませんので、貸主と借主で、減額の割合や期間を協議することとなります。

協議において減額割合や減額期間を検討するにあたり、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が、『貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン』を作成し、ホームページにて公開しています。

こちらのガイドラインには、電気やガス等住宅設備が使えない場合の具体的な賃料減額割合や免責日数(物理的に代替物の準備や業務の準備にかかる時間を一般的に算出し、賃料減額の計算日数に含まない日数)などを用いて、減額する額を計算する方法が掲載されています。

なお、上記ガイドラインは、あくまでも目安を示しているものであって、必ずしも裁判上全てが認められるというわけではありませんが、借主との協議の際、客観的な基準として参考になるものと思われます。

賃料減額の規定については改正されたばかりで、具体的な事例の蓄積が待たれるのが現在の状況です。通知義務も含めた賃貸借契約書の作成や借主との協議の方法について、ご不明な点がございましたら、弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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