繰り上げ返済は本当におすすめの返済方法なのか
牧野寿和
2016/01/04
繰り上げ返済には手数料がかかる
繰り上げ返済をすると利息が減って総返済額を減らすことができます。しかし、場合によってはあまり大きなメリットにならないこともあります。ここでは、繰り上げ返済に関して、さらに詳しく紹介していきます。
まず、繰り上げ返済には手数料が必要になることがあります。手数料がいくらかかるかは利用している金融機関によって違いますが、無料にしているところもあれば、数万円程度かかるところもあります。
手数料は、どうやって繰り上げ返済の手続きをするかによっても金額が変わってきます。具体的には店頭窓口で手続きをすると数千円から数万円程度かかることが多いのですが、インターネットを使ったネットバンキングで手続きをすると手数料が必要なかったり、もしくは大きく値引きされたりすることがあります。
さらに、利用している住宅ローン商品の金利が変動金利型か固定金利型かによっても、手数料が違ってくる場合があります。
ごく少額の繰り上げ返済を何回も繰り返すと、場合によっては手数料がかさんでしまい、あまりお得にならないかもしれません。もし繰り上げ返済をこまめに行なう予定があるなら、住宅ローンを借りる前に繰り上げ返済の手数料をよくチェックしておくべきです。
繰り上げ返済ができない場合もある
繰り上げ返済ができない場合もあります。
借り入れ先の金融機関によっては繰り上げ返済の最低金額が設定されており、民間の銀行の多くでは1万円からだったり、あるいは最低金額が設定されていなかったりするのですが、フラット35や財形住宅融資では最低金額が100万円と少々高めに設定されています。貯蓄以外の余剰資金を100万円貯めるというのは計画的に行なわないと少々大変なので、こまめに繰り上げ返済をしたい人は民間の銀行で借りるのがおすすめです。
住宅ローン減税への影響を忘れずに
もうひとつ、繰り上げ返済が影響するもので忘れてはいけないのが住宅ローン減税です。
住宅ローン減税(または住宅ローン控除)とは、12月末の時点で住宅ローン残高の1パーセント(毎年40万円までの上限あり)が、原則所得税から控除される制度です。住宅を取得する場合、最長で10年という制限はありますが、条件を満たしているなら手続きをすれば税金の還付を受けることができます。
この制度のどこに繰り上げ返済が影響するのかというと、「控除額が12月末のローン残高で決まる」という部分です。サラリーマンの方が冬のボーナスで繰り越し返済をしようとしたとき、年を越してからにしたほうが有利になる場合があります。
また、ローン減税とは、「残り返済期間が10年以上の住宅ローンを対象に、最長10年間適用される」ものです。もし、最長期間である10年が経つ前に、期間短縮型の繰り上げ返済を行なったことによって残り返済期間が10年を切ってしまった場合、ローン減税が適用されなくなってしまいます。
どうするのがいちばん有利か考えてみよう
それでは、ローン減税制度を受けられる間は残り返済期間が10年を切るような繰り上げ返済をしないほうがよいのかというと、そうでもありません。ローン減税には上限額がありますし、繰り上げ返済で利息が減るメリットのほうが大きいかもしれません。また、期間短縮型ではなく返済額軽減型の繰り上げ返済をしてローン減税を受けるという選択肢もあります。
自分のケースではどうするのが一番有利なのか、ファイナンシャルプランナーなどに相談してみることも選択肢のひとつです。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。