意外と多い重複契約――しっかりとした補償を管理するには
平野 敦之
2019/12/21
イメージ/123RF
火災保険に加入に際して無駄なコストは省こうと考えている人は多いでしょう。それにも関わらず火災保険の契約が重複するかたちで2契約以上の複数加入してしまっている人がいます。
契約に無駄がないようするために契約が重複した場合の取り扱いについてみていきましょう。
重複契約における生命保険と火災保険の違い
生命保険では自分の健康状態の告知をしますが、火災保険でも契約について告知項目があります。具体的には、建物の構造・用法、所在地などのほかに他の火災保険契約の有無やその情報を告知事項として求めています。
生命保険では人に保険をつけますが、そもそも人には金額をつけようがありません。加入限度額はあるにしても500万円生命保険に加入して、その後別に500万円重複するかたちで加入しても通常問題ではありません。
これに対して火災保険のように物に保険をつける場合、金額の評価が可能です。原則として評価額をベースに保険金を支払います。火災保険は実際の損害に対して保険金を支払う実損払いが原則です。
火災保険に重複して加入するパターンとは?
具体的に火災保険の契約が重複してしまういくつかのパターンをみておきましょう。
・他の損保や共済なら別だと思っていた
・住宅ローンを組んだ際に加入しているにも関わらず忘れていて別に加入した
・増築と同時に既契約と別にさらに火災保険に加入した
・建物と家財を別の火災保険で加入した など
よくわかっていなかったり、きちんと管理できていなかったり、忘れていたりすることが原因のことがほとんどです。
2015年10月から火災保険は最長で契約期間が10年に短縮されましたが、以前は住宅ローンの期間に合わせるかたちで最長36年間の契約が可能でした。
10年も20年も経つと火災保険のことを覚えている人は少ないでしょうから、忘れていて契約を重複してしまうケースは意外とあるのです。新たに火災保険や火災共済に加入する際には、他の火災保険契約がなかったか改めて確認することが必要です。
重複契約した場合の取り扱い
実際に火災保険が重複して複数の契約に加入してしまった場合の取り扱いをみていきます。具体的に保険金がどのように支払われるかというのは最も気になるところでしょう。
住宅であれば建物や家財もしくはその両方を目的として火災保険の契約をしますが、保険金の支払いは適正な評価額で契約した金額が限度です。
本来火災保険は火災や台風などで損害を受けたときに修理したり、再築・再購入をするためのものです。被害を受けたのに複数から保険金が限度なく支払われたら儲かってしまい、むしろ被害に遭ったほうがよくなってしまいます。
火災保険契約が重複する主なパターンを見ましたが、この中で問題がないのは建物と家財をそれぞれわけて加入しているケースです。複数契約ではありますが、火災保険をつけている目的が別々なので重複とは意味が異なります。
また損害保険会社同士でも2社足して適正な評価額であれば、双方の保険会社に告知しておくことが必要ですがこれはこれで駄目ではありません。
もっともこうした契約形態はメリットが何もないのでおすすめしません。災害などで被害を受けたら2つの損保会社とやりとりが必要なので面倒なだけです。また評価額は適正範囲におさまっていても、補償内容が異なると片方からは保険金がでるのに、片方からはでないというややっこしいことにもなりかねません。
一番よくないパターンは同じ対象に完全に契約が重複することです。適正な評価額を超過するかたちで無駄な保険料をかけてしまいます。他にも共済契約と火災保険を建物など一つの目的に重複しないようにしましょう。
理由は共済と損保それぞれで相手の契約の取り扱いが異なる可能性もあるからです。それぞれ規定は異なるので一概には言えませんが、相手の契約を有るものとする、あるいは無いものとしたりすることもあります。
火災保険で保険金の請求をするということは、住まいに何らからの損害や問題が発生しているときです。そんなときに火災保険の契約が重複していることで保険金の支払い手続きが遅れてはストレスになるだけです。
火災保険を重複して複数加入しないようにするポイント
このように火災保険の重複契約は、ストレスになることの方が多いのが現実です。例えば住宅ローンを組んだときに金融機関でそのまま火災保険に加入するケースも珍しくありません。
火災保険の重複を避けるためのポイントについてまとめておきましょう。一般的な専用住宅なら付帯する契約は次のものがあります。
・建物:火災保険、地震保険
・家財:火災保険、地震保険
保険の目的に分けると建物と家財、それぞれに火災保険と地震保険があります。これらをすべて加入すればフルに加入していることになります。
保険証券などにメモ書きなどでどこに何をつけているか分かるようにかいておきましょう。増築したりする場合など住まいに変化がある際も保険にも手を入れる必要があると覚えておいてください。その上で火災保険の相談をする、加入する際にはこれらのことを相手にきちんと伝えることを忘れないようにしてください。
この記事を書いた人
平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp