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マンションの火災保険・地震保険

押さえておきたい基本と注意点

平野 敦之平野 敦之

2018/12/18

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火災保険や地震保険など住まいの保険を考える際、損保各社の火災保険商品の補償の違いや保険料の違いなど気になる点も多いのではないでしょうか。
火災保険では、例えば物件の所在地によって保険料率は都道府県別に異なりますし、同じ都道府県でも山や崖、河川の近く、住宅密集地など発生するリスクの大小はさまざまです。一戸建てとは違うさまざまな特徴があるマンションの火災保険・地震保険についてのポイントをまとめます。

構造の違いによるリスク

所在地の他にも頭に入れておきたのが物件の構造です。火災保険の区分けで説明すると現在区分は次のように3区分あります(住宅物件)。

・M構造(マンションなど)
・T構造(耐火構造、鉄骨造など)
・H構造(非耐火構造、木造など)

特にマンションのような共同住宅の場合、構造上は台風や竜巻、雹、雪などの災害に対して木造などに比べると強固ですが、漏水などによる水濡れが多くなります。

マンションにかかる火災保険・地震保険の特徴

火災保険や地震保険、あるいは管理の側面も含めてマンションならではの特徴を整理してみましょう。

・お金や保険などの設計や決定が自分の単独意思で決められない
・構造上、水濡れのリスクが高い
・マンション所有の場合、専有部分と共用部分で別々に保険を設計する

また、マンションの専有部分の火災保険の場合、上層階に居住している人であれば床上浸水などのリスクはなくなります。水災の補償などは除外して保険料を引き下げることも可能です。

マンションにおける火災保険などの契約は、「専有部分」と「共用部分」に分かれます。一部の古い物件を除くと現在では、専有部分については各所有者が個別に火災保険や地震保険の契約を行い、共用部分についてはマンション管理組合が一括して契約するのが一般的です。

専有部分については自分の好きなように契約できるものの、共用部分についての契約は話し合いで決めていきます。これはマンションの管理そのものについても同様です。同じマンションなら似たような所得層の人が集まっているでしょうが、タワーマンションなどだとこの辺りは分かれてくることもありますし、購入時期によっても違います。

自分がお金を支払って購入したマンションであっても、マンション管理にある程度積極的な人もいれば、あまり興味を示さない人もいます。このあたりの微妙な温度差が難しいところです。

火災保険・地震保険(マンション向け)の最近の傾向

実は近年、火災保険や地震保険の改定が続いており、全国平均では保険料率は上昇傾向にあります。地域差はもちろんありますが、構造上では、マンションなどのM構造は値上げの傾向です。

これまで木造などと比較して保険料が安かったこともありますが、主な原因は保険金の支払い増加によるものです。この収支の悪化の原因の一つは、気候変動に伴う自然災害の増加、もう一つは水濡れ損害の増加です。

冬場の水道管凍結などによる破損事故はもちろんですが、マンションの水濡れ損害は増加傾向です。もともとマンションはその構造上、どうしても水濡れ損害は火災などより多くなります。

2015年10月に火災保険の改定が行われましたが、このときマンションの保険料率は引き上げられています。特に共用部分の保険についてはこの傾向が顕著で、物件の築年数が古いと保険料率が変わる「築年数別の料率」が採用されています。

各社で一律ではありませんが、おおよそ築20年くらいから5年刻み程度で保険料が引き上がっていきます。実際にこの改定が行われる前には、築年数の古い物件について共用部分の火災保険の契約を断る損保もでていました。

また2019年にも各社地震保険や火災保険の改定を実施する予定です。マンションの特に共用部分の火災・地震保険を取り巻く状況は大きく変わってきているのです。

マンション保険にかかる対策とは?

マンションの共用部分の火災保険については、生命保険と同じような状況になってきていると考えてください。

・高齢である、健康状態が悪いと生命保険の契約を断ることがある
 (築年数が古い、マンションの管理状態が悪いと保険の契約を断ることがある)

・生命保険の契約はできるが、高齢になると保険料が高い
 (管理組合の保険に加入できるが、築年数が古いと保険料が高い)

現在、生命保険会社は各社、健康増進や予防にかなり力を入れています。例えば健康が維持されている場合にインセンティブがあるような内容です。

これをマンションに置き換えると「適正なマンション管理」ということになります。若いときは病気に無縁な人が多いでしょうが誰でもいずれ年を取ります。マンションも新築のうちはいいですが、やがて設備は古くなり、修繕が必要になるのはどこでも一緒です。

マンションという資産保全の観点からは、面倒でもマンションの管理に積極的に関わることです。言われるままに火災保険などに加入するのは良くありませんが、マンション管理の契約も同様です。

保険の観点からは、自分が補償を手厚くしたくても、管理組合に予算がない、あるいは他の所有者が必要ないとの声が多ければ、自分の考えているようにはなりません。その場合専有部分の補償だけでも手厚いものにする、家財にも火災保険・地震保険に加入する、地震保険の上乗せの補償を検討するなど予算の範囲で可能な対策を取っておきましょう。

単純に火災保険や地震保険の設計だけでなく、管理も繋がっていることをよく認識しておくことが大切です。

 

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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