そのポイントと注意点
平野 敦之
2018/11/20
地震保険はこれまでも複数の改定が予定されており、2019年1月に3段階2回目の改定が実施されます。地震保険は火災保険と一緒にしないと契約することができませんが、その火災保険も次の改定の動きが2019年以降にでてきています。火災保険の次回の改定への動きとその対処について解説します。
火災保険の改定への一般的な流れ
2018年5月から6月にかけて一部のメディアで火災保険の改定について2019年にも値上げ改定される旨の報道がありました。こうした改定の報道をみるときに知っておきたいことは改定のどの段階で話を報道しているのかということです。火災保険が改定されるときの一般的な流れは次のようになっています。
1.損害保険料率算出機構が改定の必要性について検証
2.改定が必要な場合、金融庁長官に改定を届出
3.その後届出内容について、適合性審査結果通知受領
4.一定の周知期間・準備期間を経て、各社改定を実施
火災保険や自動車保険など自由化されている商品は必ずしも同じ時期・内容で改定するわけではありません(地震保険などは各社共通のため同じ時期・内容で改定)。ただし、制度そのものが大きく変わるような改定が伴うと各社同じタイミングで改定をするケースが一般的に多くなります。
火災保険の前回(2015年10月)の改定
火災保険は前回、2015年10月1日からの契約分について改定されました(これについては各社同じようなタイミングで実施)。主な改定内容は、全国平均で火災保険の参考料率(※)を3.5%引上げ、火災保険の契約期間を最長10年までにするというものでした。
※火災保険料は、事故発生時に保険金の支払いに充てられる部分の「純保険料」と保険会社の事業経費部分となる「付加保険料」で構成されます。参考純率とは純保険料部分に関する部分になるため、実際の火災保険料の改定幅は各社の契約条件によって異なります。
改定の背景は以下の2つです。
・自然災害や水濡れ損害による保険金支払いが増加していること
・地球温暖化により自然災害の将来予測に不確実な部分が増していること
自然災害などで保険金の支払いが増加しているので平均での保険料を値上げ、また自然災害の将来予測が難しくなっているため、これまで最長36年契約できた火災保険の期間を10年にしたということです。これが2015年の改定です。
火災保険の次回改定にかかる届出内容
届出されている火災保険の改定内容は以下のとおりです。
・火災保険の参考料率を全国平均で5.5%引き上げ
実は単純に料率の改定のみになっており、制度改定などは届出されていません。
改定の理由を見てみると、自然災害や水濡れ損害による保険金支払いが増加と前回と同じです。ちなみに自然災害と水濡れが原因とありますが、水濡れというのは水道管凍結による破裂や漏水事故などをイメージしてください。
火災保険の次回改定の時期と改定率
ここまでのことを踏まえて火災保険の改定がいつ行われるのかというと、正式に公表はされていません。他の種目の改定も含めてこれまでの動きでみてみると、改定の届出に対して金融庁から適合性審査結果通知受領がでてから、1年前後くらいのタイミングでされることが多いようです。
今回は単純な火災保険料率の改定が中心です。各社火災保険の補償の拡充や特約の新設など細かいところの改定もあるでしょうが、前回のように契約期間を10年にするといった大きな制度改定はありません。料率改定だけが中心であれば各社バラバラに実施するでしょう。早いところは2019年1月に地震保険と一緒に火災保険の改定を実施する動きもあるようです。
改定幅は先ほど解説しように参考純率で5.5%引上げとなっています。実際の保険料に反映されるのはこの通りではありませんが、一つの目安にしてください。
地震保険も改定の途中であることにも注意
地震保険に加入している人は、現在3段階の改定の途中である地震保険の改定動向にも注目してください。
・3段階2回目の改定 2019年01月
・3段階3回目の改定 未定
3回目の改定は日時が決まっていませんが、2021年1月とも言われています。1回目の改定が2017年1月だったこと、この改定が熊本地震の前に決まっていたことを考えるとこのような時期になるでしょう。
火災保険の値上げへの対処
保険料改定については全国平均では値上げとなりますが、すべてのケースで値上げとなるわけではありません。値下げされるケースもあります。保険料率もすべての地域や構造で開示されていないので、細かいところまでは改定が近くなってこないと具体的にはわかりません。
また「物件の所在地」や「建物構造」などによっても改定率が違うのは当然ですが、「建物だけ」、「家財だけ」、「建物・家財の両方」という火災保険の加入の仕方によっても改定幅は変わります。
値上げされるようなら改定前に見直しをすることを考えておきましょう。加入している火災保険の加入時期と満期の時期、火災保険及び地震保険の改定がいつ実施されるかがポイントです。
重要なのは自分のケースでどのように改定されるかです。何年も先の満期は様子見でいいでしょうが、数か月先なら2018年内の見直しも視野に入れておいてください。こうした改定は当面続きますから、改定動向に注意して満期日までにこだわらずに小まめに対処していくことが必要です。
この記事を書いた人
平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp