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日本の「賃貸」は住みよくなる? 省エネ性能表示制度が来春スタート

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賃貸住宅に住むと老化が早くなる?

先日、目に留まったオーストラリア発の研究報告だ。タイトルは「Are housing circumstances associated with faster epigenetic ageing?」――訳すと、

「住宅環境はエピジェネティックな老化の加速と関連しているか?」

なかなかショッキングな内容になっている。

ちなみに、ここでの「エピジェネティック」は、生物の遺伝に関するかなり専門的な言葉となる。そのため、短くわかりやすい日本語に直しづらい。そこでとどのつまりをいえば、このレポートが示すもっとも衝撃的な部分は、すなわちこうなっている。

「住宅環境は人間の老化と関係がある。特に民間賃貸住宅に住むことは、生物学的老化の促進につながっている」

「民間賃貸住宅に住むことは、失業を経験することのほぼ2倍、喫煙よりも50%高い割合で、人間を老化させる」

報告書の内容は「Forbes」英語版が先月(10月11日付)要約して記事に採り上げ、それを日本語に訳したものが同日本語版に掲載されている。それぞれのリンクを掲げておこう。

原報告書」(英語)
Forbes英語版の記事」(英語)
同・日本語版の記事」(日本語)

建築物の省エネ性能表示制度が来年4月にスタート

一旦、話を変えよう。

先般9月25日、国土交通省が「建築物の省エネ性能表示制度のガイドライン等を公表した」旨、報道発表を行った。要点をかいつまんでまとめていこう。

どんな制度か?

不動産(建築物)を販売したり、賃貸したりする事業者が、その建築物の省エネ性能を広告等に表示することで、消費者などがそれらを把握したり、比較したりできるようにする制度。

目的は?

住まいやオフィスなどの買い手、借り手による省エネ性能への関心を高めることで、同性能に優れた建築物の供給が促進される市場を創る。

(さらに掘り下げると、このプロジェクトは「2030年度温室効果ガス46%削減(13年度比)」、「2050年カーボンニュートラル」という、国の大目標達成に向けての作業のひとつとなる)

表示はいつから? 誰が行う?

2024年4月以降、住宅などの新築建築物を販売または賃貸する事業者は、広告等に、その建築物の省エネ性能を示す「省エネ性能ラベル」を表示することが、努力義務となる。

(ここでの新築建築物とは、24年4月1日以降に建築確認申請が行われるものを指す。それ以外の既存の建築物についても表示は推奨されるが、しない場合でも勧告等(下記)の対象にはならない)


(上図は「住宅(住戸)」の省エネ性能ラベル(国交省資料より抜粋))

制度に従わない(努力義務を果たさない)事業者はどうなる?

国からの勧告や、公表、命令を受ける場合がある。

賃貸住宅オーナーへの影響は?

影響アリ。賃貸住宅オーナーは「建築物を反復継続的に賃貸する事業者」として、上記の努力義務の対象となる。すなわち、勧告等の対象ともなる。

(ただし、国交省からは「当面は社会的な影響が大きい場合が勧告等の対象」の旨アナウンスされている。個人オーナーは当分の間、対象から外れるだろう)

オーナーは具体的にどう動く?

前述の「努力義務」を負う者として、オーナーは、建築物=自らの賃貸物件の設計者に対し、省エネ性能ラベルの提供を求めなければならない立場にある。

なおかつ、入居者募集の依頼先である管理会社や、元付け仲介会社(※)に対し、ラベルを発行し、与える立場ともなる。

もっとも、実際にはオーナーが率先して動かなくとも、各事業者が先回りしてサポートにつとめるケースがほとんどだろう。だが、立場上あくまで主体はオーナーだ。そのことを忘れてはならない。

(※)…オーナーから直接、募集の依頼を受ける位置にある不動産会社


(上図は賃貸における省エネ性能(ラベル)の伝達イメージ(国交省資料より抜粋))

以上、制度の要点をかいつまんだかたちでまとめてみた。さらに詳しい内容について、特に賃貸オーナーは下記でぜひとも確認してほしい。

国交省 建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度特設サイト
同・報道発表資料

省エネ住宅とは、すなわち温熱環境に優れた「健康住宅」

話を冒頭に戻そう。

紹介した研究報告は、オーストラリアのチームがイギリスで集められたデータをもとにまとめたものだ。分析は深く、綿密なもので、1,420人分の血液サンプルから採られた情報も採用されている。

そこで、その結論に掲げられた要点はすでに記したとおりだが(=賃貸に住むことで人の老化が早まる)、仮に、同じような調査、研究が日本で行われたとしたら、結果はどうなるだろうか?

「やはり似た答えが出る」――との懸念を残念ながら抱かざるをえないといったところだろう。

ちなみに、民間賃貸住宅の居住者が、老化を加速させられる要因として、上記研究においては、不十分な暖房など住宅の環境面がおよぼす影響とともに、家賃の滞納経験がクローズアップされている。すなわち、心理的な側面だ。

一方、わが国において「賃貸暮らしが老化を加速させる」と、仮にいえるとすれば、そのもっとも大きな理由として、温熱環境が挙がることはおそらく間違いのないところだろう。

たとえば、冬のヒートショック、夏の“屋内”熱中症に象徴される状態のことだ。冬寒く、夏暑い日本の多くの住宅、とりわけ賃貸住宅のほとんどが抱えている周知の課題となる。

その意味で、今回の国の制度が、同じ建築物として分け隔てなく賃貸も対象に加えたことの意義は大きい。

省エネ性能に優れた住宅とは、すなわち温熱環境に優れた住宅にほかならない。外気温に翻弄されにくく、冷暖房効率が高い、住む人が健康に暮らしやすい住宅にほかならないからだ。

よって、制度の直接の目標はあくまで省エネであったり、2050年カーボンニュートラルであったりで、もちろん構わない。

しかしながら、より身近な期待としてこの制度に注目したいのは、賃貸市場によりよい淘汰を生んでいけるかどうかとなる。

人々が健康に暮らせる賃貸が増え、そうでない物件が消えていく将来への第一歩として、今後を注意深く見守りたい制度となるわけだ。

(文/賃貸幸せラボラトリー)



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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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