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リースバックはピンチを救う。しかし正体は「高負担のローン」かもしれない

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売った自分の家に、借り手として住み続ける

リースバックの話題が近頃よく目につく。リースバックとは? まず、簡単に説明しよう。

「自分の家を他人に売り」
 (売るのだ)

「売った代金を手にする」
 (お金をもらうのだ)

「そのうえで、自分が売った家の借り手となって」
 (その家を借りるのだ)

「家賃を払いながら、引き続きその家に住む」
 (あなたは借家人になるのだ)

――以上を実現するサービス、あるいは取り引きをリースバックという。

よって、リースバックは、

何かの都合で、
「家を売らなければならないほどのまとまったお金が必要」

しかしながら、
「いま暮らす家には住み続けたい」

あるいは、
「事情あって住み続けなければならない」

――そんなピンチを救ってくれる存在として、注目されている。

一方で、リースバックに関しては悪評も多い。

利用して「後悔した」「騙された」などの声が、あちらこちらで聴こえることもまた事実だ。

リースバックの「本質」を理解しよう

たしかに、リースバックを扱う業者の中には、半ば(あるいは本気で)一般の人を騙そうと企むとんでもない連中もいる。

しかしながら、そういったケースは論外として、リースバックを契約し、あとで後悔している人のなかには、明らかに勉強不足だった人が少なくない。

そう。リースバックでは、事前の勉強が欠かせないのだ。

もちろん、リースバックに限らず、不動産取引は多くがそうなのだが、とりわけリースバックはそれ(=勉強)が大切なひとつとなる。

まずは、仕組みをよく知ることだ。そして、なぜそういった仕組みになっているのか――本質を理解しておくことが、とても重要だ。

そこで、この記事では、必ず押さえておきたいリースバックの本質について、大事なポイントを3つ挙げていく。

現在、リースバックを検討中の方は、これらを読んで特に注意を払ってほしい。

こうした認識が、「自分には漏れていないか?」をしっかりとチェックしよう。

リースバックは業者にとって物件の「仕入れ」

まず、第1の本質だ。

リースバックは、これを事業とする業者にとっては仕入れそのものとなる。一戸建てなり、マンションなりの物件を契約相手(リースバックの利用者)から“仕入れる”のだ。

これは、工場を経営する会社が原材料を買ったり、商店が店で売る品物を卸売業者から購入したりするのと、ほぼ同じことになる。

すると、どんな商売でも当たり前だが、仕入れ値は安い方がいい。

そこに加え、リースバックは、イマイマお金が必要な、売り急ぎたい人が利用するケースが多い。つまり、売る側は足元を見られやすい。

ゆえに、

  • 「リースバックは買い叩かれる」
  • 「実際に買い叩かれた」

そう、たびたび聞かれるのは、当然のこととなる。

では、どのくらい買い叩かれるのかというと、よく挙がる数字が“7掛け”だ。

よくて“8掛け”といったところだろう。

すなわち、その物件をたとえば個人と個人が不動産会社の仲介を通して売り買いするとして、その場合に通常成立しうる価格(相場、市場価格)の7割程度まで金額が下がるのは、リースバックの力学的な構造上、致し方ないといったところだ。

ちなみに、一部の悪質な業者だと、さらに容赦がない。

相手が無知で不勉強、かつ無警戒と見るや、相場の1/10にも満たない額を平気で提示してくるような、かなりあくどいケースもあるようだ。

なお、その場合、彼らはウソの開発話などを持ち出して、「この家には将来、住んでいられなくなる」などの脅しをかけてくることもあるらしい。

騙されないよう、本当に気をつけたい。

買った物件は「在庫」。業者は早くお金にしたい

不動産物件を「仕入れ」た事業者は、それを持っているだけでは、単なる在庫となる。

しかも、それらは基本として税金や管理費用のかさむスジのよくない在庫だ。なので、早く現金化したい。あるいはしていきたい。

よって、悪質な会社であろうとなかろうと、不動産でビジネスをする者として、「なるべく早く物件からお金を生み出したい」――は、当たり前のメンタルとなる。

つまり、これがリースバックにおいてもひとつの本質となる。第2の本質だ。

不動産を現金化するための主な方法には2つある。

「売るか」「貸すか」だ。

そこでいえば、リースバックでは「貸す」の方法が当面は採られることになる。元の持ち主に物件を貸して、家賃をもらう(=現金化していく)道筋が、すでに約束されているからだ。

ただし、そのペースはかなりゆっくりなものとなる。月々の家賃の積み重ねによる現金化というのは、当たり前だが、時間のかかる道のりなのだ。

そこで、事業者が次善の策として追求するのが「利回り」だ。

彼らは、なるべく高い家賃で物件を貸したい。

なぜならば、高く貸せば貸すほど、彼らが仕入れに投じた金額を回収していくスピードは上がる。要は、早く現金化していけるのだ。

なおかつ、回収を終えたのち、家賃が丸ごと儲けとなるウレシイ日も、より早期に近づくことになる。

しかも、だ。

ここで都合のよいことに、リースバックを利用する多くは、その物件に「どうしても住んでいたい」切実な事情を持つ人たちだ。

なので、あえて悪い言葉を使おう。

事業者は、リースバックの利用者に対し、高い家賃を「ふっかける」ことができてしまう。相手の足元を見た交渉が可能になるわけだ。

その結果、リースバックでは、こんな声が少なからず聞こえてくることになる。

「家賃が相場よりもずっと高かった。あとでそれを知った。ちゃんと調べておけばよかった。とても後悔している」

「家賃が高い。交渉の途中でそれに気付いた。それでも泣く泣く呑まざるをえなかった」

なおかつ、後悔で済めばまだしも、のちのちその高い家賃を払えなくなった場合、家を追い出されることも当然ありうる。

オーナー交代は「聞いてないよ」ではなく、あたりまえ

以上の本質――買った物を早く現金化したい――をさらに積極的に追う結果、事業者はこんな判断をしたりもする。

物件を売ってしまうのだ。

買って早々、予定通りに。あるいは、タイミングを見計らったうえで――。ほかの会社や投資家に、彼らがリースバックで得た物件を売却するケースも珍しくない。

つまり「オーナーチェンジ」だ。

家主=大家の交代が行われることになる。

すると、その際、そこに住んでいる元々のオーナー(いまは借主・借家人)は、突然のことに驚いたり、

「次はどんな相手が大家になるのか……」

不安に包まれたりするのだが、そこはもって瞑すべしというほかない。そもそも、これはいつ起きてもおかしくないことだ。

なぜなら、物件を買って所有者となった以上、事業者はそれを適時、任意に売る権利も当然持っている。

よって、突然のオーナーチェンジは、リースバックを利用する場合、事前に予想しておくべき結果のひとつといっていい。

すなわち、当初の貸し手(物件の貸主となったリースバック事業者)が、たとえ親切で真面目な会社だったとしても、こうしたかたちでオーナーの交代があれば、状況は大きく変わる可能性もある。

不幸なケースとして、その後、新たなオーナーが家賃の値上げを要求してきたり、契約内容の改悪(借り手にとっての)を迫ったりということも、もちろんあり得ないことではない。

一方、そうした場合、借り手は借地借家法など、自らの権利を守ってくれる法令や規則をタテに抵抗しなければ、要は泣き寝入りすることになりやすい。

ところが、その辺を全く勉強しておらず、ただ慌てるだけが予想される人も、リースバックに絡んではおそらく数多いのが現状だ。

(リースバック物件のオーナーチェンジについては、それを行うことを前提に、利用者に予定を開示したうえで話を進める事業者もある。一応、真摯な姿勢と言えるだろう)

リースバックは高負担のローン?

リースバックを例えて、こう表現する人もいる。

「あれはローンだ。しかも高負担の」

どういうことだろう?

考え方はこうなる。まずローンだが、こちらは、

「借りることでまとまったお金を手にできる」

代わりに、

「利息と弁済金を毎月支払う義務を負う」

――仕組みとなる。

さらには、これが不動産担保ローンだと、

「上記を払えなくなったら、担保としていた不動産を取られる」

――こんな組み立てになっている。

そこで、リースバックを考えてみると、「代金」と「借金」の違いはあるが、

「自身の持つ不動産を頼りに、最初にまとまったお金を得る」

そこについては、結果――もっと正しくは効果――として、たしかに同じことになるだろう。

次いで、ローンでは、利息を付けて弁済金を払っていく(返済していく)。

リースバックでは、家を借りる対価として家賃を納めていく。

すると、ここでも「効果」は同じだ。これらの仕組みの利用者は、どちらも毎月一定額の支払いを義務として負うことになる。

そのうえで、義務を果たせなかったら、彼らはどうなるだろう?

不動産担保ローンでは、担保に入れていた不動産を奪われる。そこがいま住んでいる家だとすれば、文字どおり住む家を失うわけだ。

一方、リースバックでは、義務の不履行とはすなわち家賃の滞納や不払いを指す。つまり、そうした状況が一定期間続けば、賃貸借契約は解消となり、やはり住む家が失われることになるわけだ。

どうだろう?

それぞれの段階で起こる効果という点に着目すれば、リースバックは実はローンと似ている。加えて、それが不動産担保ローンであればなおさらそっくりだというのが、

「リースバックは、実はローンと同じだ」

と、する人たちの意見だ。

そのうえで、ローンはローンでも、「かなり高負担なローンだ」という見解の理由については、端的にはこうなる。

「ローンは返し終われば返済の義務から解放される」
「リースバックはそこに住んでいる限り支払いが終わらない」

言われてみれば、確かにそうだろう。

たとえば、ごく簡単な計算をしてみよう(あくまで単純計算)。

自身の物件を1,000万円で売り、年間家賃102万円(月額8万5千円)で借りるリースバック契約を結んだ人がいるとしよう。(リースバックでの年間家賃は、物件買取り価格の7~13%くらいになることが多いとされる)

すると、この人は10年経たずに手に入れた1,000万円分を使い切る――あるいは返し切る・戻し切る――。記すまでもないが、10年間で102万円×10=1,020万円を家賃として支払うことになるからだ。

そのうえで、この家に15年住むことになったとしたらどうだろう。

こちらも、記すまでもない。家賃の累計が1,000万円を超えたあとの5年余りの間も、この人は家賃を払い続けることになる。そのうち5年分だけで510万円だ。仮に、これを金利の負担分とすれば、総支払額(102万×15年=1,530万円)の1/3をそれに費やしたことになる。ちなみに、20年住んだら支払いはもらったお金の“倍返し”を超える。

よって、

「リースバックは他のローンと比べても著しく高負担のローンになりかねない」

と、いう論者の意見だが、この考え方の基本的な部分は、十分にリースバックの本質に数えられるものになるだろう。

すなわち、第3の本質となる。

ただし、いまなぜ「基本的な部分」と、断りを入れたかというと、リースバックで自宅を手放し、他人の所有物とすることには、メリットも存在するためだ。つまり、住人はそれ以後、不動産を所有するリスクやデメリットからは逃れられる。

たとえば、その一例が固定資産税だ。マンションだと管理費や修繕積立金もそうなる。これらは物件の所有者にこそ課される負担だ。

あるいは、

「災害で家が破壊された」

――撤去費用がどれだけかさむことになっても、“借家人”がそれに悩む必要はない。

「定期借家」が使われる理由

以上、リースバックについて、3つの本質をまとめた。

そのうえで、もうひとつ、リースバックを検討する人にぜひ知ってもらいたいことがある。書き添えたい。

それは、リースバックにおいて定期借家が使われやすい理由だ。これは、説明してきた本質1と2の裏書きにもなっている。

まず、繰り返すが、リースバックでは、いままでその家の持ち主だった旧オーナーは、契約後、物件の借主となる。

そこで、借主と貸主(当初は概ねリースバック事業者)の間では、別途、建物賃貸借契約が結ばれることになるわけだが、ここでは「定期借家」が使われるケースが多い。

定期借家契約――より正しくは「定期建物賃貸借契約」だ。

知らなければ、ここで知っておこう。これは、住宅を貸し借りする契約としては、実はマイナーなやり方だ。巷のアパートや賃貸マンションなど、多くの建物賃貸借契約では、定期借家ではなく、いわゆる「普通借家」が採用されている。

両者の違いは何か? それは、主に契約期間満了後の更新・継続の扱いとなる。

普通借家では、貸主側の都合による一方的な理由での契約更新の拒絶は許されない。よって事実上、借主は契約期間を気にせず、その物件に住みたいだけ長く住み続けていられる。(家賃の不払い等々、特別な問題や事情がない限り)

ところが、定期借家は違うのだ。

定期借家では、契約期間が2年と定められていれば2年、3年であれば3年で、きっちり契約は終了となる。借主は、その時点までに必ず家を明け渡さなければならない。

よって、同じ借主が、契約期間を超えてそこに住み続けられる場合があるとすれば、それは新たに「再契約」が交わされる場合のみだ。貸主と借主、双方合意のもと、あらためて建物賃貸借契約を結ぶことになるわけだ。

となると――、もう理解できるだろう。

まず、定期借家にしておけば、貸主は、普通借家の場合に比べて物件を格段に動かしやすくなる。

「いついつまでに契約は確実に終わる」――とのメドがつくため、売却などの予定を立てやすい。市場の動きにも対応しやすいのだ。

さらには、家賃の値上げもしやすくなる。

なぜなら、繰り返すが、定期借家では契約期間満了後も借主がその物件に住み続けたい場合、再契約を望む以外にない。

そこで大事な点だが、この再契約は、元の契約の更新ではなくあくまで新規のものだ。なので、約束される家賃も新規のものとなる。

よって、

「住み続けたいのならば家賃を上げさせてください。でなければ再契約はしません」

――貸主側がこうした条件を突き付けることも、当然、容易なものとなるわけだ。

以上、厳しい話を並べたが、肝に銘じよう。

とにもかくにも、家を売って、それを貸してもらう側が足元を見られやすいのがリースバックなのだ。

であればこそ、2000年に制度が始まって以降、マーケットに好まれず、結果的に普及していない定期借家がここでは「まかり通って」いる。

数字を挙げておこう。

2021年に国土交通省がリースバックに関する検討会(第1回)を開いた際の資料を見ると、リースバックで採用されている賃貸借契約形態の8割を定期借家が占めている。(リンクを当記事文末に置いておく)

一方、普通借家は2割に留まっている。

となると、自らが有利な定期借家を捨て、あえて不利な普通借家で契約する数少ない事業者は、すこぶる良心的なのか? というと、もちろんそのケースもあるだろう。

だが、そこはやはりビジネスだ。マイナスはプラスで補う必要がある。

この場合、定期借家で契約するよりも、より高い家賃が設定される可能性が高いと見ておくのが、とりあえず無難なはずだ。

以上、リースバックについて述べた。

結果的に、このサービスをクサす内容になったとも感じるが、一方で、世のなかにはリースバックを自身の状況にうまくあてはめ、使いこなしている人も数多く存在する。

リースバックは、適所にハマると確かに効果を発揮してくれる。住宅という資産をもつ人の武器であり、いざというときに繰り出せる奥の手といってよいものだろう。

そこで、カギは本質となる。

リースバックの本質をより多くの人が理解することで、リースバックをメリットと出来ず、逆に後悔する人が減ることを願うというのが、最後に添えるわれわれの本音となるわけだ。

文中に触れた国交省の検討会における資料は、下記でご確認いただける。「資料4 リースバックの現状について」をご覧になられたい。

国交省 消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会

(文/賃貸幸せラボラトリー)

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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