【インタビュー】「子どもの頃の気持ちを忘れないで」 親のエゴで子どもを所有物化してはいけない
しばはし聡子
2020/01/17
イメージ/123RF
さまざまなカタチで離婚後も両親で子育てを行っているママの実体験を記事化したシリーズ。今回は、ご自身が離婚家庭で育った経験があり、離婚再婚を経て共同養育を実践し、現在若者の支援活動を行っているママを直撃インタビューしました。
■現在、どんなカタチで共同養育を行っていますか。
息子たちは元夫の家と私の家を自由に行き来しています。私が再婚して新たな生活をしていることもあり、どちらかというと元夫の家の方が拠点になっている感じですね。
元夫と私は 、たまに息子たちの進路や相談事などのやりとりすることもありますが、ほとんど息子たち本人が直接父親と連絡を取っています。
離婚しても父親であることに変わりないので、私は離婚当初から会わせたくないといった感情は一切なかったです。むしろ、離婚後会えなくなっている親子がいることを知り、衝撃を受けました。
■共同養育をするようになった経緯をお聞かせください。
13年前に離婚し幼子2人を育てていたのですが、ワンオペ育児に限界が来て元夫の近所に引っ越したんです。その後、経済的な事情も重なり、7年前に元夫の家に同居する選択を取りました。
子どもたちに寂しい思いをさせずに済んだのはよかったですが、元夫婦が親同士として同居することは決して簡単なことでありませんでした。当時は口論も続きましたし、精神的によいものではなかったですね。
同居生活を数年続けたのちに、私が再婚して元夫の家を出る形でリスタートしました。私は子どもたちになんでもオープンに話すので、再婚相手を息子たちに紹介し「どう思う?」と相談しましたね。子どもたちも再婚を応援してくれました。
再婚後、息子たちは自由に行き来していましたが、私は元夫とはほとんど連絡を取っていませんでした。そんななか、長男のことでどうしても相談することがあり連絡を取ったのがきっかけで、今では親同士気兼ねなく話せる関係になりました。
■共同養育するにあたり困っていること、困っていたことはありますか。
息子たちがまだ小さかったときは、父親と会って帰ってくると鼻水を垂らしていたり、冬なのに上着を着させていなかったりなど、一言いいたくなるような場面もありましたね。些細なこととはいえ、毎日子どもを育てる立場としては子どもたちの健康管理は重要なこと。ただ、息子たちは楽しんでいたし、いちいち小言を言わないように気を付けていましたね。
■お相手がどんなことをしてくれたらうれしいですか。
一緒に育てている意識を持ち続けてくれていることがありがたいです。息子たちにこれからも変わらず愛情を注ぎ続けてほしい、ただそれだけですね。
息子たちは今でも父親に少し遠慮があるのか、なんでも相談できるわけでもなさそうです。父親とも本音で相談できる関係になっていくといいなと見守っています。
■共同養育はどんなメリットがありますか。 お子さんはもちろんご自身にとってもよいことがあれば教えてください。
子どもって大人よりよっぽど大人だったりしますよね。わが家では息子たちが父親の成長を見守りながら父子愛を育んでいるようにもうかがえます。
私は幼少期に両親が離婚し、父親と会えない環境で育ちました。兄弟も親戚もいなくてただただ寂しかった記憶しかありません。親からもう片方の親の悪口を聞かされたりするのは本当に辛いものです。
私の息子たちに限らず、子どもたちにそんな辛い思いをさせてはいけないですし、親が離婚しても両親から愛されていることを実感できる機会を奪ってはならないですから、共同養育はメリットというかあたり前のことだと感じています。
■お相手との関わりにおいてご自身が心がけていることはありますか。
元夫とのやりとりは子どもたちの話がメインで、会ったり電話したりはなく、LINEで話すだけです。
あとは、大事なのは感謝を伝えること。再婚後、久々に連絡したときにあらためて感謝を伝えたら元夫が謝ってきてくれたんです。そこから関係が良くなったこともあり、これからも事あるごとに感謝を伝え続けていきたいですね。
一方で、再婚相手への気遣いも心がけています。再婚初期の頃、再婚相手は私たちの元家族に対して疎外感があったのか、息子たちと元夫との交流に対してやや消極的だったんですよね。息子たちも再婚相手へ父親の話をしないようにしていたり、私も不必要に元夫のことを話題に出すことは控えていました。
息子たちによる再婚相手への歩み寄りもあり、今ではとてもよい関係を築けるようになりました。次男が卒業式に父親だけではなく再婚相手にも来てほしいと手紙を書き、再婚相手が学校行事に初めて来てくれたんですよね。そのときに次男が再婚相手の前で初めて泣いたんです。いろんな感情があったのでしょう。それを機に一気に距離が縮まったように感じます。
■子どもたちに向けてどんな思いがありますか。
子どもたちにはとにかく自由に生きていてほしいです。子育ての原点は信じて見守ること。元夫は私の育て方に同意してくれているので、子育てで困ったときがあると相談してくれます。両親がお互い分担しながら子どもに関わり続けていき、子どもの自由を尊重していきたいですね。
私は離婚後、鬱になったこともあり、子どもたちを頼ってきたし、子どもたちがいたから頑張ることができました。その分、迷惑もかけたし後悔もしています。もし今、育児をやり直せるのであれば、活動など全部やめて子育てに専念したいと思うくらいです。
私にとっては子どもたちが第一優先であり子どもたちの味方です。子どもたち、父親、再婚相手の全体のバランスを取っていきながら、みんなが心地よく過ごし、お互い大事な存在に思えるようなカタチをこれからも築いていきたいですね。
■この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
悩みを持つ子どもたちは家庭環境が100%影響しています。たとえ片親ずつから愛情を注がれていても両親が不仲なのを目の当たりにすると情緒が安定しないんですよね。
離婚しないに越したことはないけれど、子どもがいるから別れないというのは子どもが望んでいることではありません。子どもたちはいつでも親のことを見ているし察するし応援しています。
ただ、離婚したからといって親子関係を引き裂いたり、親同士の不仲を見せることがどんなに子どもにとって辛いことなのかは、自分が子どもだったらと考えればわかること。子どもは持ち物ではないですし、子どもの声に耳を傾けないといずれ反抗や不登校といった形でしっぺ返しが訪れます。
私は今、支援をする立場になっていますが、最初からうまくできていたわけではありません。うまくいっている人の話を聞いたり本を読んだりして、どうか自分自身を追い詰めたり比較したりせずに、肩の力を抜きながら子どもと向き合っていっていただけるといいなと思います。
子どもたちはみんな親の気持ちを察していますし、顔色を伺っています。そして言えない本音を心に抱えていることもたくさんありますが、それはお父さんのこともお母さんのことも本当はとっても大切で大好きだから。
みんな昔は子どもだったことを、ほんの少し思い出すだけで、お子さんが本当はどう思っているのか?が見えてくることもあるかと思います。
今しかないお子さんとの時間を大切にするためにも、世界で一人しかいないお父さんとお母さんとの時間も大切にしていただけたらと思います。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️