【インタビュー】自分も共に育つ共同養育ー娘と離れて暮らす間に気づかされたこと
しばはし聡子
2019/03/23
イメージ/123RF
さまざまなカタチで離婚後も両親で子育てを行っているママの実体験を記事化したシリーズ。今回は、一週間交代で共同養育を行っているママに直撃インタビューしました。
■現在、どんなカタチで共同養育を行っていますか。
娘が私と父親の家を行き来する形で1週間交代での共同養育です。金曜日を移動日とし、娘は金曜日の夕方に私の家に帰ってきます。そしてそのまま私の家で過ごし学校へも通い、翌金曜日の朝に学校へ行き終わったら父親の家に帰るという生活です。
教科書などの荷物はスーツケースに入れて、娘の家の玄関先に私が取りに行き、また届けるという形を取っています。長期休暇などは都合に合わせて変則したりもしますが、基本的には娘の望む半分ずつという形になっています。
■共同養育をするようになった経緯をお聞かせください。
娘ですね。これはもう完全に、娘のはっきりとした意思表示からなのです。本来は共同養育を目指して、父親を親権者に私を監護者にとした協議離婚から始まったのですが、特にきちんと取り決めをしていたわけではなかったので、ある日父親との意見の行き違いから親権のない私は娘と暮らせなくなってしまったのです。
そこから調停を経て月2回の面会交流から始まり、月4回(うち宿泊が1回)と決まったのですが、約束が守られず、会えなくなってしまったことがありました。私は娘の学区内に引越しをしたり、いつでも会える環境を作りさまざまな法的手続きもしてきました。
ただ、娘にとっては大人同士がどうのこうのとしている間に「どうして会えないの?」「どうしてママとは一緒にいる時間が少ししかないの?」というような疑問が大きくなったようで、「ママとパパと半分ずついたい」とカレンダーを指差しながら言ったこともありました。近くにいるのに会えることを制限されるということに対し不満が出てしまったのです。
それからまた月4回+αで面会交流をしてきましたが、娘の疑問や行き場のなかった気持ちがより大きくなったようで、ある日の面会交流が終わろうとしている時に「帰りたくない」と頑なに拒否したことから始まりました。幸い父親側の弁護士さんの理解と説得もあり、現在はこのような形となっています。
■共同養育するにあたり困っていること、困っていたことはありますか。
以前は突然会えなくなったり、全くコミュニケーションが取れれなくなったりして、娘の気持ちが伝わることもありませんでした。
今、このような形になったからといって元夫婦で葛藤がなくなったわけではないのに、実は特に困っていることはありません。
娘がある程度自分のことができる年齢になってきたのはだいぶ大きいです。例えば以前は面会交流の送迎がお互いにありましたが、今は娘が自分でそれぞれの家に帰る形となったので、移動日が休日でない限り送迎をすることと、遠目にでも相手と顔を合わせることはなくなりました。
そして娘が私と父親それぞれに必要な情報を伝え伝えてくれたりなどができるようになったので、必要最低限の連絡で済むようになりました。ただこの先、娘の人生において何か困ったことなどがあった時に、両親でどう娘に向き合い協力していけるかは課題だと思っています。
■お相手がどんなことをしてくれたらうれしいですか。
特に何も期待などはないのですが、引き続き娘の気持ちを大事にしてくれていたらそれでいいかなと思います。
■共同養育はどんなメリットがありますか。お子さんはもちろんご自身にとっても良いことがあれば教えてください。
何より娘が以前よりも明るく過ごしているように感じています。毎週金曜日になると、「ただいま!今日からママの家〜!1週間交代っていいね!」と言って帰ってきます。
父親に自分の気持ちを言えたこと、父親がそれを認めてくれたことは、これまで漠然と感じていた父親への理不尽さを拭い、さらに父親を好きになることにもなりました。
また勇気を出して言った1週間交代で両親間を行き来することが叶ったこと、これもまた娘の自己肯定感を増やすこととなりました。
母と父の良いところも悪いところをそれぞれ上手に使い分けているところもあって、それはそれでのびのびと過ごしているようです。
私自身のことで言えば、以前の週末だけ面会をしている時とは違って“お母さん時間”が増えたことにより娘と過ごす1週間が慌しいものになりましたが、これまでお母さんをできなかった時間と心が埋まっていくようでとても充実しています。
■お相手との関わりにおいてご自身が心がけていることはありますか。
期待をしないことです。別居親になったのは不本意であって、私が娘を育てられないわけではないという思いが強く、どうしても感謝というところまではいけないのですが、その分相手に対し、“父親としてこうであってほしい”や、“連絡に対してこう答えてほしい”などの期待をしなくなりました。
私と相手との関係ではなく、相手は相手の、私は私のそれぞれが娘に対してやれることををやればいいんだと。そうすると自然に腹が立つこともなくなってきました。
■ご自身のこれからの夢やビジョンがあれば教えてください。
究極は「別居母オススメよ!」って皮肉を込めずに言えるようになることなのです。頑張りすぎない育児とでもいうか、どんなに愛しい我が子でも育児は1人じゃ限界があり、関わる大人が多ければ多いほど、子どもにとっても親にとっても良いと思います。
私の中でも母性神話はあって、どうしても母親が自己犠牲のように子育てすること囚われがちですが、育児をするだけが母親の姿ではないことは娘が教えてくれました。
できないことはできる人に任せると切り替えて、母親であっても仕事にしろ趣味にしろ自分自身を充実させる時間を持つことも必要だと感じています。
不本意にも別居母になってこれらの時間だけは充分すぎるほどありましたし、娘に関わる時間も制限があったので、“いわゆるお母さん”という固定概念はなくなりました(笑)。
いろんな人に出会い見聞きし経験した自分の糧こそ、自分自身をしっかり持つことと苦難を乗り越える方法の一つでもあると自らの姿勢を持って娘に教えてあげられるのだと思っています。
両親から始まり、祖父母、親戚、ご近所や職場などなど社会全体が共同養育について考えること、そこから共同養育への道が始まります。
そしてそれが社会全体で当たり前になった時には「別居母」という括りはなくなり、「共同養育っていいね」と自然に言い合える世の中になっているのでしょうか。
共に子育て、そして自分自身も共に育つ、それが私の共同養育です。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️