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意外と気づいていない?

介護問題の本質は「家」にあり(3/3ページ)

鬼塚眞子鬼塚眞子

2018/06/19

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実家の建物は築50年と古いが、敷地200坪で庭木も多い。そのため空き家にしていれば、夏は庭の手入れ、冬は雪国ゆえの雪下ろしの問題が出てくる。これまでは何とか近所や地域の人の手助けで何とかなったが、今後もそれを頼りにするわけにもいかない。しかも、親族間のゴタゴタはいっこうに埒が明かず、Bさんと親御さんは「家は売れないもの」と思い込んでいた。

そこで私たちはBさんの実家のある地域をリサーチ。結果、この地域は高齢者が多く、空き家も目立つようになっていた。しかし、Bさんの実家は敷地が広く、立地条件も比較的恵まれているため、活用方法も複数考えられ、いまなら売却が可能ということがわかった。また、Bさんや親族も「その家にはもう誰も住まない」ということだけは明確に一致していたため、弁護士も交えて親族との調整を図り、不動産を売却。そのお金で首都圏の介護施設の入居一時金に充てるプランを提案した。

首都圏のなかでもBさんの住む地域の介護施設は土地の評価が高いため、ほかの介護施設より入居費用はかかる。しかも手厚い介護をしてくれる施設は、やはりそれなりの費用がかかる。しかし、Bさんは家を処分したお金で、親御さんをワンランク上の施設に入居させることができた。

親御さんも当初は、見知らぬ土地での介護生活に不安を感じていたが、南欧風の庭、優しいスタッフ、おいしい料理、何より入居者仲間が素敵に人生を重ねてきた方たちばかりで、親御さんは「毎日が楽しい」と第三の人生を楽しんでいるとの報告を受けた。

こうした相談を受けると、わが身に置き換えて考えてしまう。もちろん、自分の家には愛着はある。けれど、その思いが強くなりすぎると、子どもたちに負担をかけたり、トラブルになることもある。それは親として望むことではない。

高齢になると、体のどこかに不具合も出てくる。地方ほど病院まで遠く、地方のタクシードライバーの話では「買い物や通院にタクシーを利用する人も珍しくない。そんな人の話を聞くと、年金を多くもらっている人ばかりだ。そんな人でも、次第に自分で電話をしてタクシーを呼ぶことも大変になってくる」という。

こうした相談を受けるたびに思うのは、地方での「病院通い」「介護をする子ども」という観点から。、もっとも重要なのは“終の棲家”をどうするか、そして、家については真っ先に考えるべき問題だということだ。

自分たちではどうにもならないと思っていても、プロの不動産関係者や士業に相談するべきだと思う。「実際の売買は今すぐではないが、参考として話を聞きたい。今後、情報もほしい」といえば、協力が得られるはずだ。そして、介護や相続は事前の対策が、のちのトラブル防止につながることだけは間違いない。

 

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この記事を書いた人

一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会理事長

アルバイトニュース・テレビぴあで編集者として勤務。出産を機に専業主婦に。10年間のブランクを経て、大手生保会社の営業職に転身し、その後、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。認知症の両親の遠距離介護を自ら体験し、介護とその後の相続は一体で考えるべきと、13年に一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会(R)を設立。新聞・雑誌での執筆やテレビのコメンテーター、また財団理事長として、講演、相談などで幅広く活躍している。 介護相続コンシェルジュ協会/http://www.ksc-egao.or.jp/

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