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介護問題の本質は「家」にあり(2/3ページ)

鬼塚眞子鬼塚眞子

2018/06/19

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AさんとBさんの双方の親御さんとも、マイホームを売却せずに介護施設に入居したのは、「資産に余裕があるから、家は自分の死後に売却し、子どもたちで按分すればいい」と考えていたようだ。

社団では相談を受けた初回に必ず資産シミュレーションを行っている。というのも、資産の全容を大まかにでも掴んでおかないと、介護施設に入るにしても、将来にわたって支払い続けられるかが、親だけでなく子どもの老後にも大きく影響するからだ。そのうえで認知能力に問題がなければ、金融資産の見直しを提案することもある。

この2つのケースでは、十分な資産があると思っていたAさんも、シミュレーションの結果、数年以内に資金ショートの問題が発生することが判明した。そこでAさんの親御さんに認知症の問題がないか医師に診断をしてもらったうえで、不動産の売却を提案した。その際、社団では提携税理士によって、大まかな子どもへの生前贈与、相続税の納税額も算出。Aさんと親御さんの双方に同席してもらい、その結果を提示した。

親御さんは「思い出の詰まった家だけれど、資金ショートが明らかになった以上、手放すことはいたしかたない。いまの私なら家の卒業を見届けることができる」と話された。Aさんたち子どもたちもそれぞれにマイホームを持っていることもあって、売却に異論は出なかった。幸いにも立地に恵まれ、売却はスムーズにいったと聞く。

「家の問題」に潜む 親族間のトラブル

一方、Bさんのほうはというと、親御さんがマイホームの売却には消極的で、なかなか話が進まなかった。

私たちはこれまでも多くの相談に応じてきたが、まず自分たちの家庭、そして親族に何の問題もないケースを探す方が少数派。多かれ少なかれ、どんな家庭でも親族あるいは親族間のトラブルを抱えている。

なかでも生前に不動産売買を積極的になれないケースでは、親族間のトラブルがあることが多い。実際、Bさんのケースがまさにそれで、親族間に問題があって、自宅を売るに売れず空き家にしていることがわかった。

親御さんの介護については、Bさんがメインで毎月、遠距離介護をしながら、同時に家の手入れも行っていた。しかし、Bさんも次第に介護と家の掃除の両方をやるのがつらくなってきていた。「このままでは自分も倒れてしまう」と感じ始めたBさんは、家は空き家にしたままでもよいので、親を呼び寄せたいと相談してきたのだった。

介護に疲れた子どもはどうしても近視眼的になってしまう。介護疲れが出てきたBさんは、最近は2~3か月に一度しか親に会いに行けないという。

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この記事を書いた人

一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会理事長

アルバイトニュース・テレビぴあで編集者として勤務。出産を機に専業主婦に。10年間のブランクを経て、大手生保会社の営業職に転身し、その後、業界紙の記者を経て、2007年に保険ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー(FP)として独立。認知症の両親の遠距離介護を自ら体験し、介護とその後の相続は一体で考えるべきと、13年に一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会(R)を設立。新聞・雑誌での執筆やテレビのコメンテーター、また財団理事長として、講演、相談などで幅広く活躍している。 介護相続コンシェルジュ協会/http://www.ksc-egao.or.jp/

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