ハンガリー家庭に学ぶ、インテリアが10倍素敵に見えるカラーレッスン(2)
パップ英子
2016/07/24
色相・明度・彩度の「色の3属性」を知っておこう
インテリアを考える上で最も大切なことは、「カラーコーディネート」を考えることです。今回もカラーコーディネートについて、前回同様、ハンガリーの素敵なお宅のインテリアを例にあげながら、その配色ポイントをチェックしていきたいと思います。
前回のコラムで、インテリアのカラーコーディネートは、この色相環の配置がとても重要になること、また、反対側に位置する色同士、反対となる二色が“補色”と呼ばれることなどをお伝えしました。
実は、この色相環において隣同士の色や反対側にある補色、それらの色が持つ効果や関係性を知っておくだけで、コーディネートのセンスを一段と向上させることができるのです。
(図1)色の3属性
色彩学では「色の3属性」と呼ばれる「色相・明度・彩度」 、この3つを元に色を分類し、整理していきます。
図1をご覧ください。まず、色は「有彩色」と「無彩色」というものに分類されます。
有彩色、無彩色いずれにも色相・明度・彩度、すなわち色の3属性が関わってきます。
色の3属性のひとつである「色相」は、赤や青などの色みの違いを言い表す言葉。「明度」は、明るさや暗さの度合い、そして「彩度」は、鮮やかさの度合いを「高い/低い」で表現したものです。彩度が高い色ほど、視覚的に派手に感じ、低いほど地味に見えます。
日頃、私たちがよく使うトーンという言葉ですが、それは、「明度」と「彩度」を同時に組み合わせたものです。赤、青、緑のような有彩色は、3属性(色相・明度・彩度)が組み合わさることで、さまざまな色に変化します。
(図2)出所: http://interior-coordinate.info/color/basic.html
次に、図2をご覧いただくとわかるように、同じ色相でも明度と彩度が変われば淡い色、渋い色に変化していますよね。
有彩色とは対照的に、色みのないグレーや白、ブラックなどの色がありますが、それらの色は無彩色と呼ばれ、色相(色みの違い)や彩度(鮮やかさ)がないので、明るさの違い=明度のみで分類されます。
(図3)出所: http://interior-coordinate.info/color/basic.html
前回のおさらいになりますが、色相環の図(図3)をご覧ください。赤から黄色までの3つ、それらの色相が「暖色系」で、青緑から青紫までの3つの色相を「寒色系」に該当します。さらに、暖色系と寒色系の間にある色相(黄色〜黄緑〜青緑まで)は中間色系、寒色系と暖色系の間にある色相は中性色系になります。
色彩学の基礎知識はまだまだたくさんありますが、文章で記述しているだけだとなかなか覚えにくいかと思います。以下、前回と同様に、実際のインテリア例をご紹介しますので、上述した色彩学の知識を頭の片隅に入れて、それぞれのお部屋の配色ポイントをチェックしていきましょう。
今回も、ハンガリーの人気のインテリア雑誌から、ピックアップしてみたいと思います。
ハンガリー家庭に学ぶコーディネート術
記事冒頭の写真をご覧ください。
白い壁と淡いカラーのフローリング、ナチュラルなベースカラー(床や天井など、その室内で最も基本となる色)のこちらのお宅。フローリングに敷いたマットの模様やローテーブルのデザイン、壁に飾られた絵画など、いたるところにアジアンテイストが散りばめられたリビングルームですね。
上の写真は、リビングルームとダイニングがひと続きとなった「LDK」。ダイニングテーブルは濃いブラウン、ダイニングチェアのカバーはブラックですが、フローリングや壁の色が明るいからか、全体的にリゾート地のホテルのような開放感のある空間を演出しているのが素敵です。
前回、インテリアのカラーを構成する要素として、次の3つを紹介しました。
(1)ベースカラー(床や天井など、その室内で最も基本となる色)
(2)メインカラー(カーテン、ソファ、ローテーブル、キャビネットなど、室内で主役となる家具の色)
(3)アクセントカラー(クッションやランプシェードなど、固定された家具ではなく、いつでも位置を変えられるモノに使う色)
この3つの色をどのように配色するかで部屋の印象が変わり、さらにそれぞれの理想的な配色の割合は、(1)ベースカラー:70%、(2)メインカラー:25%、(3)アクセントカラー:5%程度とご紹介しましたが、覚えていただけましたでしょうか?
この3つの要素の部分をチェックしてみると、このリビングルームはアクセントカラーに類似色をチョイスしてまとめたカラーコーディネートといえます。類似色とはその名の通り、似た色相(赤や青などの色みの違いを表現する言葉)の色を組み合わせるケースのことです。色相環(上の段落参照)でいえば、隣の隣くらいにまでの色が「類似色」に該当します。
この場合は、それぞれの色が似ていて、補色(反対側にある色相)ではないため、それぞれの色が持つ性格や個性がぶつかり合うといったこともありません。類似色でコーディネートすると、部屋全体が無難な印象になるのですが、それぞれ色の配分をさらに細かく調整して、空間にテーマを設けて色みを足すと、よりメリハリのある空間を演出できます。
同一トーンでまとめたインテリアコーディネート例
出所:Otthon - Új élet más színtéren | Lakások( http://otthon.com/kedvenc-otthon/5019-uj-elet-mas-szinteren )
最初に、色は有彩色と無彩色に分類され、有彩色には色相(色みの違い)と「トーン」(明るさの違いと彩度の違いを組み合わせたもの)によって構成されていることをお伝えしました。
こちらのお宅のキッチンダイニングは、メインカラー(カーテンやテーブルなど主役となる家具に用いるカラー)を同一トーンでまとめたコーディネート例です。
出所:Otthon - Új élet más színtéren | Lakások( http://otthon.com/kedvenc-otthon/5019-uj-elet-mas-szinteren )
カーテンの色やソファのクッションカバーを同じトーンでまとめたリビングルーム。こちらのお部屋もまた、先ほどのダイニングキッチンと同様、メインカラーとアクセントカラー(クッションなどのインテリア小物に使う色)を同一のトーンにしています。
色相が違っていてもトーンが同じ場合は、メインカラー、アクセントカラーともに色数を多く使ってもスッキリとまとまっているように見えるのです。
もし、部屋のなかをカラフルにしたい場合は、ぜひ、同一トーンの色をチョイスして、家具や小物の部分で色数を足し算してみてくださいね。
前回と今回の2回に分けて「ベース・メイン・アクセント」カラーの3種類や、「色相環」、そして、色相・明度・彩度から成る「色の3属性」と、明度と彩度を同時に組み合わせた「トーン」といった、色彩学における基礎知識をご紹介しました。
カラーコーディネートの例はまだまだありますが、またの機会にご紹介したいと思います。
『色を制する者はインテリアを制する』ので、色の“いろは”を身につけて、インテリアコーディネートを楽しんでくださいね!
この記事を書いた人
“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)
ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/