ハンガリー家庭に学ぶ、インテリアが10倍素敵に見えるカラーレッスン
パップ英子
2016/07/17
出所:Otthon - Válaszd a kéket! | Színek( http://otthon.com/ihlet/szinek/2358-valaszd-a-keket )
写真は、ハンガリーで人気のインテリア雑誌『Otthon(オットホン)マガジン』に掲載されていた、ブタペストのあるお宅のリビングルーム。ハンガリー語のOttonとは英語ではHome、つまり、日本語でわが家、自宅という意味です。このお部屋の素敵なカラーコーディネートを参考例として、色についての知識をご説明したいと思います。
このお部屋を見ていただくと、ブルーをメインカラーにしてコーディネートされているのがわかりますね。空や海の色を連想させるブルーには、人の心を落ち着かせる効果があるとのこと。色彩心理学に関心が高いご主人が、そのブルーの色彩効果に惹かれて、部屋全体のテーマカラーをブルーにされたそうですよ。
壁の色をはじめ、ソファやクッションにも、品のあるターコイスブルーが空間全体において差し色になっていますね。
居心地の良さが感じられる上質なリビングルームですが、このお部屋がセンス良く見える理由がおわかりでしょうか。それはインテリアにおいて最も大切な要素である、全体的な配色のコツを押えているからなのです。
具体的に説明すると、インテリアのカラーを構成する要素は以下の3つがあります。
(1)床や天井など、その室内で最も基本となる色【ベースカラー】
(2)カーテン、ソファ、ローテーブル、キャビネットなど、室内で主役となる家具の色【メインカラー】
(3)クッションやランプシェードなど、固定された家具ではなく、いつでも位置を変えられるモノに使う色【アクセントカラー】
この3つの色をどのように配色するかによって印象が変わるのですが、理想的な配色、その割合は、下記の程度と覚えておいてください。
ベースカラー:70%
メインカラー:25%
アクセントカラー:5%
メインカラーは自分が最も使いたい色、アクセントカラーは、メインカラーを引き立たせるような色を選びましょう。その配色ポイントを押さえるだけで、お部屋のなかがグッとセンスのあるインテリアに変わりますよ。
多色使いでも、配色の基本を抑えればまとまりのある空間に
出所:Otthon - A konyha színei | Színek( http://otthon.com/ihlet/szinek/3439-a-konyha-szinei )
次は、キッチンを改装したこちらのお宅ですが、とてもカラフルな印象を受けますね。多色使いなのにゴチャゴチャした印象がなく、全体的にまとまりがあるのは、このキッチンもまた、先に説明した配色のポイントを抑えているからなのです。
このキッチンにおけるベースカラーは、床のタイルに使用された“グレー”です。キッチンカウンターのシンク部分、さらには手前に見える食器棚兼作業台の足の部分(ステンレス素材)にもグレーが配色され、空間の70%近くを占めているように見えます。
そして、メインカラーは、カウンターに使用された木材のナチュラルな色。とてもカラフルに見えるキッチンですが、よく見ると多色使いとなっているのは、アクセントカラーと呼ばれる部分のみ。ピンク、黄緑、スカイブルー、オレンジといった壁の一部分や食器類など、それらはどれもアクセントカラーに該当します。
部屋のなかにたくさんの色を使いたい、カラフルなインテリアがお好みの場合は、ベースやメインのカラーで遊ぶのではなく、アクセントとなる部分に色を足してみてください。
そうすると、一見カラフルで賑やかに感じても、全体的にまとまりがある空間を演出できますよ。
「色の三原色」をご存知ですか?
図1 色光の三原色(出所:http://www.okidata.co.jp/special/tips1/tips02b.html )
インテリアを考える時に、知っておきたいカラーコーディネートの知識。そこで、さらに詳しく、色についての基礎知識をご紹介したいと思います。
皆さんは、色の三原色をご存知ですか? 色の三原色を正確にお伝えすると、「色光の三原色」と、「色料の三原色」のふたつがあります。
「色光の三原色」、それは下のカラーチャートをご覧いただくと、真ん中が白くなっているのが確認できますよね。そのチャートの通り、光のように色を混ぜていくと、その色が最終的には白に変わるのですが、それを「色光の三原色」といいます。
カラーコーディネーターやインテリアコーディネーターの方、また、出版・印刷業界の方やグラフィックデザインの仕事に携わる方でしたら、日常的に“RGB”、“CMYK”というワードを使用していると思います。
念のため説明すると、RGBとはR=レッド、G=グリーン、B=ブルーの三色のこと。
色光の三原色とはその3色のことで、TVやPC、タブレット端末など、モニタがある発光体では、この“RGB=三原色”を使ってさまざまな色を再現しています。
図2 色料の三原色(出所:http://www.okidata.co.jp/special/tips1/tips02b.html )
次に「色料の三原色」の意味ですが、それは、C=シアン、M=マゼンタ、Y=イエローの三色を指します。シアンはこの色料の三原色にあるひとつで、上のチャートの一番上にある色。やや緑みの明るい青、水色に近い青緑色がシアンです。マゼンダはチャートの左下にある、明るい赤紫色のことで、紅紫色(こうししょく)とも呼ばれる色です。
“C・M・Y”の3つの色が重なった真ん中部分をご覧ください。黒になっていますよね。そうなのです、C・M・Yの三色を100%の濃度で混ぜると黒になるのです。
理論的にはこれらの色を合成すると、人間が光の反射により認識した、この世にあるすべての色を再現できるといわれています。ちなみに、デザインや印刷の世界では、この3色にブラックのKを加えてCMYKと一般的に呼ばれています。
もうひとつ知っておきたい基礎知識「色相環」
図3 色相環(出所:http://rock77.fc2web.com/main/color/color1-2.html )
カラーコーディネートが上手になるためには、もうひとつ知っておきたい基礎知識として「色相環」という言葉があります。
雨が上がった直後、空に広がる『虹の色』を思い出してみてください。私たちがよく知る「虹色」とは、赤〜橙〜黄〜緑〜青〜藍〜紫の七色のこと。「せい・とう・おう・りょく・せい・らん・し」と口に出すと、覚えやすいかもしれません。
そんな虹色の順番「赤→橙→黄→緑→青→藍→紫」に赤紫を加えて、リング状にならべると上の図のようになり、これを「色相環」といいます。ちなみに、色相環にはさまざまな種類がありますが、この「色相環」は、日本色研配色体系(PCCS)による色相環です。
また、「色相」とは、赤、黄、青の色味のことを指します。その色相環をみると、黄色に一番近い色相は「黄緑」や「オレンジ」となり、逆に最も遠い色相は「青紫」となり、黄色の対向に位置していますよね。
図4 色相環と補色(出所:http://rock77.fc2web.com/main/color/color1-2.html )
さらに、図4をご覧ください。その色相環をご覧いただくと、先ほどお伝えした黄色と、その黄色と対向する青紫は“補色”となります。つまり、色相環のなかで、反対側に位置する色同士、反対となる二色が“補色”です。
この色相環や補色の知識を覚えて参考にしてみると、“カラーコーディネート”がいっそうまとまりやすくなるのです。センスの良いインテリアをつるうえで、最も大切な知識といっても過言ではないと思います。
暖色系、または寒色系といった言葉で部屋を表現することが多い、インテリアの世界ですが、では実際に、暖色系、寒色系とはどのような色を指すのでしょうか。
それについても、やはり色相環をご覧いただくと話が早いです。色相環の赤から黄色までの3つ、それらの色相を「暖色系」と呼び、青緑から青紫までの3つの色相を「寒色系」と呼びます。
空間や部屋の中に『温もり』や、『明るいイメージ』を与えたいときは、この暖色系が多い配色を心がけると上手にコーディネートができるのです。その反対で、クールで物静かな空間にしたい場合は、寒色系のカラーでそろえるようにします。
この部屋は暖色系? それとも寒色系?
出所:Otthon - Színezd át az életed! | Színek( http://otthon.com/ihlet/szinek/1459-szinezd-at-az-eleted )
では、写真にあるハンガリー家庭のリビングルームをご覧ください。この部屋は暖色系? それとも寒色系? 皆様、もうおわかりですよね。
鮮やかなオレンジのソファ、アースカラーともいわれる黄色の壁色。壁の色や家具の色が、色相環における赤から黄色までの色合いが多いこちらのリビングルームは、“暖色系”ということになりますよね。
以上、いかがでしたか? 今回はインテリアを考えるうえで、最も大切なカラーコーディネートのお話、色彩についての基礎知識を中心にお伝えしました。
カラーコーディネートはインテリアにとって最も大切な要素なので、次回も実際のインテリア例を取り上げながら、その配色ポイントについてご紹介したいと思います。『色を制する者はインテリアを制する』ので、ぜひ、覚えてみてくださいね!
この記事を書いた人
“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)
ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/