雨漏りの後は「壁から吹き出す水」。ローカル団地の“雨季”を憂う
藤谷圭司
2016/07/08
ベトナムでは道路や住宅が簡単に浸水してしまう
ホーチミンの季節は雨季と乾季の二季のみですが、今年(2016年)はなかなか雨が降り始めず、5月も終わり頃になってようやくスコールがやってきました。
このスコールはゲリラ豪雨と同じく、猛烈な雨が短時間降りまくるわけですが、インフラの弱いベトナムではいとも簡単に道路や住宅が浸水してしまいます。
わが家の団地に向かう道も雨が降ると、もう川です。皆、バイクの上で三角座りをするような格好で足を濡らさないように川のなかを走行しています。止まる時には足を地面につけるので、すぐずぶぬれになるわけですが…。
「それは…その家に住んでいる人が何とかします!」
団地の近くに、これまたいつも浸水している道路があるのですが、雨季が本格化する前に突如、道路をもりもりと盛り上げるという非常にシンプルな浸水防止工事が始まりました(おそらく渋滞解消したいのだと思いますが…)。
道路の脇には住宅や店舗がズラッと並んでおり、どうみても丘のように高くなった車道から雨水がいま以上になだれこむ気満々です。ベトナム人の友人に、道路脇に住む人たちはどうなるのか尋ねてみたところ…、
「それは…その家に住んでいる人が何とかします!」
と清々しいくらいシンプルな回答でした。ベトナムで住宅を選ぶ際には、雨季に浸水しないか? というのはかなり大事なポイントだと住んでみて実感します。
雨漏りではなく「壁から水」が入ってきた!?
幸いにもわが家は団地最上階の9階にあり、浸水の心配はないのですが、逆に屋上からの雨漏りの恐怖に怯える日々です。昨年、築半年にもかかわらず決壊したわが家の天井ですが、修復工事のおかげかいまのところ天井からの水漏れはなく、乾いた床を保っています(雨漏りのエピソードはこちらです→ http://sumai-u.com/?p=5010 )。
しかし、平穏な日々は思わぬ方向から攻め込んできた水に打ち砕かれてしまいました。その日は週1回やって来るお手伝いさんが掃除をしてくれていた日だったのですが、家に戻ってみると、カーテンや敷物が取り払われ、ただごとではない様子。聞くと留守中に大雨と強い風で「壁」から水が入ってきて、床が水びたしになったと。
壁から水??! 何度聞いても窓の下の壁から水がもれたというお手伝いさん。いまいち状況をつかめずにいると、また雨が降ってきました。すると、確かに壁から水がしみ出しています。幸い強い雨ではなかったので、床が浸水するほどではなかったのですが(左がそのときの写真です)、まさか横からの水で浸水するなんて、ベトナムのローカル団地は日本人の想像を越えています。
隣のおばさんに聞いてみたところ、わが家と同じ向きの家はみな壁から浸水したと、またまた激怒していました。ベトナム人も怒るのですから、普通ではないかもしれません。
窓ガラスにはたくさんの作業員の足跡が…
翌日、作業員が屋上からロープにぶら下がり、外側から壁の防水補強(ペンキ塗り)をしていたのですが、しっかりとわが家の窓ガラスに足を踏ん張って作業していたため、長靴の足跡がたくさん残っていました。
もちろん拭いて帰るような素敵な心遣いも、足跡を隠そうという気遣いさえもありません。「気持ちいいくらい踏ん張ったんだな!」という足跡がしっかりついていました。こちらも経験値がついてきているので、こうした事態にも「力一杯ちゃんとしっかりやってくれてありがとう!」という受け止め方がようやくできるようになってきました。
日本に住んでいたときは、わずかな不具合や不便さでイライラしたりしたものですが、ローカル団地での暮らしは、数々の出来事に試されつつも心はだんだんと自由になるという、もはや悟り的なものさえ感じます。
雨漏りしない、雨が降っても家が浸水しているか心配しなくていい! というのは日本の誇りだと思います。自然に抗うのではなく、共に過ごす。今年も雨季が終わるまではいつ勃発するとも知れない大雨浸水を憂いながら過ごすことになりそうです…。
この記事を書いた人
ベトナム在住で、現在、在ベトナム外資系企業に勤務中。 中国の大学を卒業して、その後一貫してベトナム周りのビジネスをして14年目。 アジア田舎暮らしをテーマに、現在も日本人が一家族もいないローカル団地に、家族3人で生活中。