実際どれくらいかかるの? 週末田舎暮らしのリアルなコスト
馬場未織
2016/06/24
二地域居住にかかるコストを試算してみよう!
「二地域居住を始めたい…」
そう思ったとして、実際に足を踏み出すかどうか迷う大きな理由のひとつに、「どれくらいお金がかかるんだ?」という不安があると思います。
そこで今回は、実際に賃貸物件を借りたことを想定して、生活がどのように変わるか具体的に数字で追ってみたいと思います。誰でもできることですが、案外、素敵なイメージだけふくらませて終わり、となる方も多いと思うので。
まずはどんなところにどう暮らすか想定してみましょう。
●家族:大人ふたり、小学生ふたりの4人家族
●住所:千葉県南房総市千倉町
東京都世田谷区から100km程度
●家賃:3万円(一軒家)
かかるコストは月に約5万円ほど
さて、ではかかるコストを計算してみましょう。
●家賃3万円
不動産情報を見ると、家賃4万円程度の田舎暮らし物件が多いですが、実際に移住・二地域居住者の方の話を聞くと、古い物件を2万円程度で借りている方が多く見られます。
ただ、安いに越したことありませんが、安い物件には安い理由があります。月4~5万円でそのままの状態で住める家を選ぶか、月2万円でDIYをして自分たちの空間をつくるかは、経済状況や趣味の問題ですが、ここではひとまず3万円としておきます。
●自宅から100km
房総半島への往復は、渋滞を回避した時間を選べば比較的スムーズに行き来できます。千倉でしたら、都心から2時間程度。また、燃費は車種によりますが、平均的に10km/リットルと考えると片道10リットル、往復20リットル。レギュラーガソリン120円/リットルだと2400円です。
東京湾アクアラインの通行料が800円、木更津金田IC~富浦ICが1290円、合わせて往復で4180円。
つまり、1回の交通費は6580円となります。
月に3週末通うとなると、1万9740円/月。
●電気・ガス、水道など
月に3週末通うとしたら、6日間滞在です。こちらはなかなか試算しにくいですが、電気代2500円/月、水道代1000円/月、ガス代1500円/月程度とします。
となると、光熱費は月5000円です。
ひとまずこれらを足し合わせると、月にかかるのは5万4740円。
光熱費は、もうひとつの家に住んでいようとかかるものなので差し引くとしても、5万円程度の出費です。
みなさんにとって、家計にしめる5万円というのは、どの程度の大きさでしょうか。おそらく、「これはちょっと厳しい」と思われる方が多いと思います。
加えて、家のメンテナンス費や、農業用資材費、農業用燃料費などもかかってきます。
ただ、食材については、畑仕事を頑張ったり地元のものを買ったりすると、各段に安く、豊かになることが考えられますね。
都市生活での出費はどれくらい?
それでは次に、都市生活においての暮らしの出費について考えてみます。
もし、二地域居住をしようと思ったら、いまある暮らしのどこかの出費を圧縮しなければなりません。
まずは、レジャー費がどれくらいかかっているでしょうか。
水族館や動物園に家族で行くと、交通費込みで1回3000円程度かかるでしょうか。カラオケに行けば、4人で2000円程度。また、家族でショッピングセンターでちょっとほしいものなどごにょごにょ買って5000円、映画を見れば1回5000円。
毎週末そんなイベントがないにせよ、月1万円くらいかかっていそうです(家族単位で動くって、本当にお金がかかりますよね!)。
そして、それとは別に長期休暇に都心を離れて家族旅行となると、10万円以上の出費を覚悟することになります。
次に、教育費。いわゆる習い事にかけるお金です。
小学生の習い事における月平均の出費は、1万1004円だそうです(ソニー生命保険株式会社「子どもの教育資金と学資保険に関する調査 2015」)。
となると、子どもふたりで月2万程度。受験対策で塾に通わせればこれは跳ね上がります。
また、外食費はふたり以上の世帯で、平均1万2229円/月(総務省統計より http://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/24_5.pdf )とのこと。4人家族だと、1万5000円程度になるでしょうか。
ひとり1000~2000円のところで週2~3回食べたらすぐにそれくらいになりますね。
これらを単純に合算すると、4万~5万円/月といった感じになりそうです。
かかるコストがわかったとき、あなたはどう考えますか?
いろいろと漏れがあったり、比較しようのない部分もあるのは承知ですが、数字を並べてみると自分が何に力点を置いた生活をしたいか、改めて認識できるかと思います。
「二地域居住をするための費用を捻出しようと思ったら、生活がタイトになる!」
という印象を持つか。
「そういえば、土日にだらっと使っていた費用を圧縮することができそうだ…」
と思えるかは、各世帯の状況や価値観によってずいぶん違いますね。
高級外車に乗ることが至上の喜びという人もいれば、野菜を育てることが生きがいという人もいます。
「子どもが塾で学べる環境をつくることは、子どもの未来をつくること」という考え方と、「塾のかわりに自然環境のなかでのびのびさせたい」という思いを、引き比べることはできません。
限られた財源を何に使うのかは、人生をどのようにつくっていくかとイコールです。
そのなかで、もし、「田舎で暮らしてみたいな」という気持ちのある方は、現地に行ってイメージを膨らませつつ、現実的に暮らしが成り立つか収支計算をしてみるといいかと思います。
たとえばそれで、いまの暮らし方だと支出が大幅にはみ出てしまう、とわかったとき、
「東京の生活をコンパクトにして、田舎に1軒家を借りない? あるいは、500万円の1軒家を買って15年使ったら、2万円の家賃を15年払うよりお得になるね! 将来はそちらに移住してもいいし」
などと、発展的に考えられたとしたら…。
二地域居住をする暮らしが、ほぼ手に入れられたと考えてもいいかもしれません。
自宅から100km程度のところにある、海に近い家。いいですね!
子どもに自然遊びをさせたい、親は釣りやサーフィンが好き、といった海系家族であれば、憧れるものです。
この記事を書いた人
NPO法人南房総リパブリック理事長
1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。