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プロが教える賢い見積もりの取り方(3)

業者によって違う見積もり金額、どう見きわめればいい?

森田祥範森田祥範

2016/02/25

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見積金額が極端に異なる場合は?

リフォーム工事の契約にあたっては、3社から相見積もりを取ることをおすすめします。その際、見積書の書式が業者により異なることは別項で紹介しましたが、実際には、見積金額も大きく異なる場合があります。

実際にあったケースをご紹介しましょう。

ある木造2階建て住宅で、外壁塗装のリフォームをすることになり、3社から相見積もりを取りました。ちなみにその家は築25年で、延床面積は約100平方メートル。外壁はモルタルです。

大手住宅メーカー系A社の提示した見積金額は、材料・工事費合わせて約140万円。リフォームを数多く手がける地元工務店B社の見積金額は、やはり材料・工事費合わせて約80万円。新聞折り込みチラシでよく見かけるリフォーム専門会社の見積金額は、同じく材料・工事費合わせて約50万円。各社の見積金額は、なぜこれほどかけ離れているのでしょうか。

見積もりを担当したA社の営業マンは次のように説明しました。
「当社の定価表によれば、延床面積100平方メートルの2階建て木造住宅の場合、100万円になります。ただし、お宅は築年数が古いため、塗料の使用量が5割増しになるため、総額150万円になります。そこから、今回初めての見積もり依頼ということで、10万円引かせていただきました」。

B社の営業マンは次のように説明しました。
「延床面積100平方メートルの標準的な2階建て木造住宅の場合、足場架設、木部塗装、モルタル壁塗装を合わせて、約75万円になります。しかし、お宅様は築年数が古いので、強力用シーラーを多めに塗布することを考え、およそ5万円アップの約80万円になります」。

C社の営業マンは次のように説明しました。
「今回、この地域で初めてリフォーム工事をやらせていただきますので、お披露目のためのキャンペーン価格として、通常の50パーセントOFFの50万円でやらせていただきます」。

見積金額が適正価格に近いかどうか

さてあなたは、A社、B社、C社の営業マンの説明を聞いて、どのように感じたでしょうか。

リフォーム費用をできるだけ抑えたいという場合、C社にお願いしようと考える人がいるかもしれません。しかし、それはやめてください。なぜなら、C社の見積金額は、適正価格に比べてあまりにも安すぎるからです。この金額では、足場は架せずに、ハシゴだけで施工してしまうつもりかもしれません。

別項(リフォームに「ディスカウント」は考えにくい)で解説したとおり、「定価」のないリフォームの世界では「安かろう悪かろう」が当たり前。先に金額を決めて工事するのですから、安い金額に合わせて、手抜き工事される確率が高いのです。

定価のないリフォーム工事ではありますが、工事の内容によって、おおよその適正価格というものがあります。リフォームで失敗しないためには、適正価格で業者とリフォーム契約を結ぶのがいちばん。別項で、さまざまな工事費用の目安を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

実は、別項でご紹介したとおり、延床面積が約100平方メートルの標準的な2階建て木造住宅の場合、外壁塗装費用の目安は75〜80万円です。その点、B社の見積金額はほぼ適正価格といえます。この3社のなかで、見積金額がもっとも妥当なのはB社といえます。

それに比べて、A社の見積金額140万円は「暴利」といえるほど高すぎます。大手の業者は、総じてリフォーム費用が高めであることが多いですが、これはちょっとひどすぎます。大手だから安心、とはいえないことを覚えておきましょう。

業者ごとに見積金額が大きく異なる場合は、適正価格を基準に、その妥当性をはかるべきです。

どこまでのグレードとサービスを求めるか

先ほどのA社、B社、C社の見積金額は極端に違いました。そして、適正価格に近いB社の見積金額がもっとも妥当であることがわかりました。

では、3社の見積金額がそれほど違わないときはどう判断すべきでしょうか。

たとえば、別の大手住宅メーカー系リフォーム会社D社の見積金額が90万円、DIYショップ系リフォーム会社E社の見積金額が70万円だった場合、B社80万円、D社90万円、E社70万円を比較して、どんなことがいえるのでしょう。

この程度の違いになると、B社がもっとも適正であるとはいえず、見積もりの内容をよく吟味しなければなりません。具体的には、工事のグレードと工事以外のサービスを比較検討することになります。

工事のグレードとは、使用する材料(塗料)とそのグレード、作業量の多さと丁寧さが関わってきます。工事のグレードが高くなれば、その分コストもかさみますが、仕上がりは美しくなります。

工事以外のサービスとは、工事後のクリーニング、工事後訪問点検などのアフターサービス、工事後の引っ越しサービスなど。こうしたサービスがリフォーム代金に含まれている場合、当然、代金そのものは高くなりますが、リフォーム満足度も高くなります。

仮に、D社がB社よりワンランク上の塗料を使い、さらに工期を1日長く取って三度塗りする予定だとしましょう。

すると、D社の見積金額がB社より10万円高いのも納得できるし、仕上がりのいいほうが嬉しいという人には、むしろD社のほうがお得になるかもしれません。

逆に、自分はそこまでのグレードを求めていないという人には、D社は無駄にコストが高いことになるでしょう。

このように、業者の見積金額を高く感じるかどうかは、発注者が「どこまでのグレードやサービスを求めているか」によって違ってきます。相見積もりとは、まさにそこを比較検討するためのもの。金額だけで業者を選ぶのではなく、工事内容をしっかり説明してもらうことが重要です。

とはいえ、普通の人は工事内容や品質についてはわかりにくいですよね。そこでアドバイスです。

困ったら各社の施工事例をいくつか案内してもらってください。施工に自信のある業者さんはどんどん案内してくれます。それが信頼の証ですから。発注者も手を抜かずに真剣に向き合うことをおすすめします。それが納得のいくリフォームのいちばんのコツです。

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この記事を書いた人

モリタマネジメント株式会社 代表取締役

宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、ファイナンシャルプランナー、増改築相談員、二級建築施工管理技士。 LATUバリ建築スクール(インドネシア、バリ)ディプロマ取得。 1952年生まれ 兵庫県出身。早稲田大学卒業後、積水ハウス株式会社に入社、特建事業部(ゼネコン部隊)に配属。主に土地所有者の土地有効利用を中心とした営業に18年間従事する。また自社集客手法の独自企画や金融機関等のセミナー講師も務めて実績をあげる。 在籍期間の完工実績棟数は387棟。全国特建事業部表彰(特建営業300人中1位)、社長表彰(全社営業3800人中2位)、全社チーム別獲得粗利益表彰(全社全900チーム中1位)などの記録多数。退職するまでプレーイングマネージャーにこだわり続けた。 94年に建築リフォーム会社を設立し、現在まで22年間でテナントビル・マンション、店舗、住宅などのリフォーム工事を中心に約4000件余を完工。不動産の事業化プランニング、賃貸収益物件 (テナントビル、マンション)や店舗の収益最大化手法には定評があり、不動産オーナーの熱烈なファンが多い。 2009年、中小企業コンサルを目指して「ナニワの再建屋」桂幹人の門をたたき薫陶を受ける。桂幹人の実践的コンサルティングと自らの経験とを融合させた「モリタメソッド」を完成した。11年、多くの事業家を実践指導し、新たな事業を創る実践コンサルティングを開始、賃貸ビル・マンションオーナーの満室セミナー、工務店の脱下請け事業構築セミナー、中小企業経営者の新規事業構築勉強会(実践的指導)主催。また経営者、営業幹部の個別コンサルティングも行なっている。 指導先業種は、建設業、工務店、リフォーム会社、鉄工所、内装業、建設資材問屋、自動車輸出入業、子ども服セレクトショップメーカー、自費診療専門整体院チェーン、ブライダルを手がける呉服店、ヒーリングサロン、多店舗展開の美容室、大阪黒門市場マグロ専門店、デザイン事務所の新規事業支援等多岐にわたる。

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