なぜ「継ぎ足しリフォーム」はこれほど失敗しやすいのか
森田祥範
2016/01/25
思いつきで行なうリフォームは失敗しがち
リフォームの失敗事例としてよくあげられるのが「継ぎ足しリフォーム」です。
継ぎ足しリフォームとは、住まいの気になるところから順に進めていくリフォームのこと。リフォームの進め方としてはよくあるパターンなのですが、実はこうしたリフォームは残念な結果に陥りやすいのです。
なぜ残念な結果に終わるのか、事例をあげて見てみましょう。
Aさんのお宅では数カ月前から、洗面所の床がぺこぺこ沈むようになりました。どうやら、長年にわたって水気を吸った床材が腐ってきた様子。そこで以前からつきあいのある工務店に洗面所の床の張り替えリフォームを依頼。合わせて最新の洗面化粧台を導入、洗面所の壁紙も貼り替えました。
洗面所が見違えるほどきれいになり、Aさんもすっかりご機嫌。ところがその数カ月後、今度は洗面所に続く廊下の床がぺこぺこに。廊下の床も全面的に張り替えたいところですが、最近リフォームしたばかりで資金に余裕がありません。そこで工務店に相談すると、床材の重ね張りリフォームなら、費用は安くすむという話です。ただし、いまある床の上に床板を張るので、その分、床が高くなってしまいます。
どうしようか迷ったAさんでしたが、結局は費用の安い重ね張りリフォームを選択しました。しかし、工事が終わってみると、洗面所と廊下の床にできた段差は、想像していた以上に気になります。
「高齢の両親が泊まりにきたとき、つまずくんじゃないかと心配でなりません。見た目も美しくないし。こんなことになるなら、洗面所の床を張り替えたとき、廊下の床も張り替えておけばよかった……」と、Aさん。後悔先に立たず、というわけです。
「継ぎ足し」にならない長期リフォーム計画を
Aさんのような事例は、実は枚挙にいとまがありません。たとえば、次のようなケースです。
【事例B】 風呂釜が壊れたので給湯用ボイラーを交換
⇒その1年後、浴槽や浴室床の傷みが激しくなってきたので、ユニットバス導入を決意。
⇒すると、ヒートポンプ式給湯システムを導入したほうが便利で安上がりだと判明。
⇒結局、交換したばかりの給湯用ボイラーを廃棄。費用が二重にかかってしまった。
⇒こんなことなら、最初からヒートポンプ式給湯システムを導入すればよかった。
【事例C】 外壁塗装のコーティングが水を弾かなくなってきたので、足場を組んで外壁塗装のリフォームを実施
⇒その半年後、2階木製雨戸の桟が壊れてしまったので、アルミ製シャッター雨戸の導入を決定。
⇒しかし、道路に面した窓に新しい雨戸を取りつけるには、足場が必要といわれ、断念。
⇒結局、ベランダに面したサッシにだけシャッター雨戸を取りるけたが、取りつけるため外壁の一部を削ることに。
⇒雨戸取り付け終了後、削った外壁を塗装し直してもらったが、そこだけ色が変わってしまい、見栄えが悪くなった。
⇒こんなことなら、シャッター雨戸の取りつけと外壁塗装工事を同じタイミングでやっておけばよかった。
このような「継ぎ足しリフォーム」に陥らないためには、長期的な視点に立ってリフォーム計画を立てておくことが必要です。住まいの気になる箇所のリフォームを思い立ったら、ついでに手を加えるべき箇所がないか、リフォームの専門家(リフォームに詳しい設計士等)や業者さんも交えてじっくり検討しましょう。
この記事を書いた人
モリタマネジメント株式会社 代表取締役
宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、ファイナンシャルプランナー、増改築相談員、二級建築施工管理技士。 LATUバリ建築スクール(インドネシア、バリ)ディプロマ取得。 1952年生まれ 兵庫県出身。早稲田大学卒業後、積水ハウス株式会社に入社、特建事業部(ゼネコン部隊)に配属。主に土地所有者の土地有効利用を中心とした営業に18年間従事する。また自社集客手法の独自企画や金融機関等のセミナー講師も務めて実績をあげる。 在籍期間の完工実績棟数は387棟。全国特建事業部表彰(特建営業300人中1位)、社長表彰(全社営業3800人中2位)、全社チーム別獲得粗利益表彰(全社全900チーム中1位)などの記録多数。退職するまでプレーイングマネージャーにこだわり続けた。 94年に建築リフォーム会社を設立し、現在まで22年間でテナントビル・マンション、店舗、住宅などのリフォーム工事を中心に約4000件余を完工。不動産の事業化プランニング、賃貸収益物件 (テナントビル、マンション)や店舗の収益最大化手法には定評があり、不動産オーナーの熱烈なファンが多い。 2009年、中小企業コンサルを目指して「ナニワの再建屋」桂幹人の門をたたき薫陶を受ける。桂幹人の実践的コンサルティングと自らの経験とを融合させた「モリタメソッド」を完成した。11年、多くの事業家を実践指導し、新たな事業を創る実践コンサルティングを開始、賃貸ビル・マンションオーナーの満室セミナー、工務店の脱下請け事業構築セミナー、中小企業経営者の新規事業構築勉強会(実践的指導)主催。また経営者、営業幹部の個別コンサルティングも行なっている。 指導先業種は、建設業、工務店、リフォーム会社、鉄工所、内装業、建設資材問屋、自動車輸出入業、子ども服セレクトショップメーカー、自費診療専門整体院チェーン、ブライダルを手がける呉服店、ヒーリングサロン、多店舗展開の美容室、大阪黒門市場マグロ専門店、デザイン事務所の新規事業支援等多岐にわたる。