AIが入居希望者になって物件を評価?大家さん専門税理士が「自分専用のAI」を作るツールを開発。学べるサロンも開設
ウチコミ!タイムズ編集部
2024/11/08
ウチコミ!が提供する大家さん専用のコミュニケーションツール「大家コネクト」。その目玉機能のひとつが「AI大家税理士による賃貸経営相談」だ。税金にまつわる大家さんからの質問や相談に、大家業に特化したAI税理士としてハイレベルなアドバイスをしてくれる。このツール、実は賃貸住宅業界で長く活躍されている税理士で司法書士の渡邊浩滋さんらが手掛けたものだ。その渡邊さんが現在、AIの活用をさらに広げるため、新たなオンラインサロン「俺のAI研究所」を立ち上げている。どんなプロジェクトなのか、お話を伺う。(取材・文/賃貸幸せラボラトリー)
AIを自分専用にカスタマイズ
──「俺のAI研究所」の概要を教えてください。
「俺のAI研究所」は、AIをいろいろな方が、さまざまなビジネスで使いこなせるようにするための技術や考え方を学び合うオンラインサロンです。今年に入って立ち上げました。具体的には「俺のAI」と名付けられたAIツールの使い方を学んだり、皆で考えたりしていきます。
──「俺のAI」とはどんなツールですか?
ひと言でいえば、自分専用のAIを作れるツールです。できあがったそのAIは、優秀なアシスタントのように作り手の仕事をサポートしてくれます。ベースはChatGPTですが、これをユーザー自身がそれぞれのニーズに合わせてカスタマイズできるものに仕上げました。作業は簡単です。基本やコツを少し学べば、ユーザーひとりひとりに適った“俺のAI”が誰にでも作り出せます。個々のユーザーが抱える仕事の内容を熟知した、自分専用AIの誕生です。プログラムの知識などは要りません。サロンでは、自身のAIを作るためのプロセスや、できあがったそれらをビジネスに活用していく方法を考え、意見交換しながら学んでいきます。
AIが「厳しい大家」に?
活用目的はスタッフ育成
──実際にどんな「俺のAI」が生まれているのでしょう?
私の事務所で活用している事例ですが、AIが架空の大家さんを演じることで、スタッフを指導してくれています。とても真面目で、仕事に厳格な賃貸オーナーです。このオーナーは、サイバー空間の中にだけ存在するバーチャルな大家さんですが、実際にいそうな厳しい大家さんを想定しています。大家さん専門税理士事務所である私のオフィスのスタッフに細かな注文をつけてきます。新人スタッフなどがこれに対応することで、スキルや知識が磨かれます。本物の大家さんと接するためのよい訓練になるわけです。
そのほか、箇条書きで要点を入力するだけで相手に伝わる文章を作成してくれるAI、決断に迷う2つの選択肢の内容を入力すると自動でディベートを行うAIなど、日々新しいものが生み出されています。
ちなみに、先ほどの「AI大家さん」ですが、厳しい注文を投げかけてくる理由もしっかりと説明してくれます。AIのよいところです。態度が厳しいからといって、先方は機嫌が悪いわけではないのです。利用するユーザーのために、そんなペルソナ(人格)を演じているだけなのです。こうしたペルソナをAIに与える作業をわれわれは「ペルソナ設定」と呼んでいます。「俺のAI研究所」では、そんなペルソナ設定の方法も学んでいくわけです。
そのうえで、「AI 大家さん」がわれわれ税理士に厳しい質問ができる理由は、もちろんAI大家さんが知識を持っているからです。賃貸オーナーとしての知識、さらには税務に関する知識です。それらは、われわれが事前にAIに与えています。それをしなければ、AIはわれわれにとって十分なパートナーにはなってくれません。ひたすらインターネット上の平均値を拾い、語ってくれるだけの存在です。AIに予備知識としてのデータを授けることは、現状のAIをビジネスで活用する上での大事なプロセスです。
──すると、たとえば大家さんが「俺のAI」を学べば、AIに仮の入居者や入居希望者になってもらうこともできるわけですね。
そのとおりです。大家さんがご自身の物件のデータを「俺のAI」に落とし込み、入居者や入居希望者のペルソナも設定するとしましょう。するとAIは、その物件の魅力を住む側としてどう思うか、的確に評価してくれるはずです。さらには、管理会社のペルソナを設定して、プロのアドバイスを求めるといった方法もあるでしょう。
きっかけは「分身」作り
──「俺のAI」が生まれ、「俺のAI研究所」を立ち上げることになったきっかけについて教えてください。
私はかれこれ5年以上前から、AIを仕事にどう活かせるのかを考え続けていました。そこにご存じのChatGPTが現れ、私も大変衝撃を受けたのですが、同時にこれを現時点でビジネスに活かすにはハードルが存在することもよく理解できました。
それは、データの蓄積です。どんなビジネスでも、多かれ少なかれ専門的な知識が求められます。税理士などはその代表といえるでしょう。ところが、現在のAIはそうした部分がまだまだ未熟です。特に、私の手がける「大家さん専門税理士」のように特化した分野となると、AIがどれだけインターネット上を探し回り、知識を集めても、とても実際の仕事に耐えうるものにはならないのが現状です。
そこで、私はChatGPTのカスタマイズ機能を使い、私が過去にリリースした本やメルマガ、ブログなど、書籍20冊分以上に相当するあらゆるデータをAIに読み込ませ、AIを鍛えました。その成果として生まれたのが「AI大家税理士レンくん」です。「大家コネクト」の「AI大家税理士による賃貸経営相談」のエンジンとなっているAIです。
ちなみに、私の過去の発信物は、執筆の時点からAIに学ばせることを意識しながら作り込んでいたものです。そこにChatGPTが登場しました。私は「いまこそ準備を活かす機会だ」と考え、私の“分身”作りに挑戦したのです。その結果、生まれたのが「AI大家税理士レンくん」です。なお、この「レンくん」はAIですので、完成して最後ではなく、その後も学び続けます。日々知識をリニューアルしながら、「大家コネクト」だけでなく、私の法人のお客様が増え、スタッフが増えていくごとに、私の代わりとなって活躍する場面を広げているわけです。よって、「俺のAI」とその考え方は、私の経験が基になっています。「俺のAI研究所」は、私や仲間たちが「レンくん」を生み出した過程を多くの方にも共有いただき、さらによい結果を出していただけたらとの想いから立ち上げたものです。
ご興味ある方はぜひ参加してみてください。
渡邊 浩滋(わたなべ こうじ)さん
Knees bee 税理士法人 税理士・司法書士・AIエンジニア
実家のアパート経営危機を立て直した経験から、税理士と大家の両方の視点で賃貸経営に困っている大家さんのサポートに取り組む。2018年に大家さん専門税理士の全国ネットワーク「Knees bee」を設立。
【関連記事】
これからは大家さんも『AI』を活用する時代 未来の賃貸経営で取り残されないために身につけるべきは“ITリテラシー”
無料で使える空室対策♪ ウチコミ!無料会員登録はこちら
この記事を書いた人
賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。