「葛根湯」の処方箋から読み取る「風邪」という病気の本質(2/3ページ)
杉 幹雄
2021/01/27
「風邪」をひくのは、皮膚と小腸のアンバランスが原因!?
このことから「風邪という病態」の本当の姿が見えてきます。
風邪は皮膚と腸のアンバランスが原因となって、それを元に戻そうと皮膚と腸が熱を持っている状態で、これが風邪の基本的な病態の一つというわけです。この病態の影響によって、咽頭炎、扁桃腺炎、喉頭炎、気管支炎などに症状が出ているということになります。
風邪の原因が「皮膚と腸のアンバランスから生じている」というのはピンとこないかも知れません。しかし、この影響が個々の身体の弱い部分に強く作用し症状を出しているのです。
言い換えると、ウイルスが喉に感染したとしても、背景になる臓器(皮膚と小腸)に問題がなければ大きな症状を起こさないということです。
とはいえ、『傷寒論』のこうした葛根湯解析の結論を見て、私自身もすごく驚きました。
葛根湯を数学的解析のトポロジー的視点で解析すると?
数学の一分野で「トポロジー」という考え方があります。トポロジーは難しい図形をいかに簡単に表現するか、ということに重点が置かれたものです。
これを人間の身体に当てはめると、皮膚が口や肛門で反転し胃腸系を形成しています。消化管は「口・食道・胃・小腸・大腸・肛門」という長い管状の臓器ですが、胃・小腸・大腸という消化器系の大分部分は腹部に集中して配置されています。これを図にすると円筒形になり上部に口、下部に肛門がある簡単な図ができあがります。
人間の内臓、中でも消化器系の管腔臓器において小腸は長く、腹部に配置されています。その表面積はテニスコート一面分(シングルスコートは約196㎡)に相当する消化管系の大部分の臓器なのです。
一方、皮膚は成人男性で畳み1畳(1.6㎡)あり、この小腸と皮膚という2つの臓器は2つの大きな臓器に強い相対性を維持していると推測できます。
一見すると皮膚と腸は遠い関係にありそうですが、実は身体の外と内、表裏の関係、つまり「陰陽の関係」にあり、葛根湯の処方が皮膚と腸のアンバランスを調整させようとしていることも理解できるのではないでしょうか。
また、このことが分かると、世界各国では新型コロナの感染把握を目的に下水の調査を行っていますが、これも理にかなったことだと理解できます。便に多くのコロナウイルスが排出されるため、下水のコロナウイルス量の変化から感染の流行予測ができると思われます。
この記事を書いた人
すぎ内科クリニック院長
1959年東京生まれ。85年昭和大学医学部卒業。国立埼玉病院、常盤台病院、荏原ホームケアクリニックなどを経て、2010年に東京・両国に「すぎ内科クリニック」を開業。1975年大塚敬節先生の漢方治療を受け、漢方と出会ったことをきっかけに、80年北里大学東洋医学研究所セミナーに参加。87年温知堂 矢数医院にて漢方外来診療を学ぶ。88年整体師 森一子氏に師事し「ゆがみの診察と治療」、89年「鍼灸師 谷佳子氏に師事し「鍼治療と気の流れの診察方法」を学ぶ。97年から約150種類の漢方薬草を揃え漢方治療、98年からは薬草の効力別体配置図と効力の解析を研究。クリニックでは漢方内科治療と一般内科治療の併用治療を行っている。