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簾の歴史と魅力

横山せつこ横山せつこ

2019/12/05

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今住んでいるマンションに引っ越しをして、最初の夏。夫と、「外廊下に面する窓を開けるか、閉めるか」で談義をしました。
私は窓をあけて風を入れたいのですが、夫は「人が外廊下を行き来するため視線が気になる」と言います。たしかに昼間はまだしも、夜になれば室内の様子は丸見えになってしまいます。

「カーテンを閉めて人の視線を遮ればいいよ」と、夫。

「いや、カーテンを閉めたら風が入って来ないじゃん」と、私。

そんなやりとりを続けていたとき、はっと思い出しました。

「簾(すだれ)をつけるのはどうだろう?」

1. 簾ってなに?

簾(すだれ)とは、細く割った竹や葦などを並べて、糸で編み繋げたものです。これを窓の内側に吊るすと、日差しを遮りながら風を通すことができます。簾には目隠し効果もあるので、マンションの外廊下に面する窓には最適なアイテムでした。

ちなみに簾に似ているものとして、葦簀(よしず)があります。これは材料に葦(よし)が使われています。これは軒先などに立てかけて使うため、窓全体を覆えるように大きなサイズになっています。夏場は、葦簀に水をかけることで室内の温度を下げることができます。ただし、葦簀はサイズが大きいので、ある程度お家が広くないと保管が難しいことや、いつも外に置いていることから傷みやすいというデメリットもあります。

一方で、簾は窓に吊るすため傷みも少なく、年中かけっぱなしでも問題ないという手軽さがあります。簾の値段はピンキリですが、最近では100円ショップなどでも見かけるようになりました。

2. 簾の歴史

簾の歴史はとても古いといわれていますが、詳しくはまだわかっていません。その昔、中国から日本へ伝来した可能性が高いといわれています。そして日本で最初に「簾」という言葉が登場するのが、「万葉集」です。額田王(ぬかたのおおきみ)が天智天皇を想って作った歌の中にでてきます。

「君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の 簾動かし 秋の風吹く」

「あなたを待ってわたしが恋しく思っていると、わたしの家の戸口の簾を動かして秋の風が吹いてきます」という意味です。簾がこすれる音で、女性が目を輝かせて振り返る様子が目に浮かびます。「彼が来てくれた」と期待したのも束の間、ただの風だと知ってとても切なくなる心情が伝わってきますね。「簾」は、平安時代の中期には清少納言が書いた「枕草子」のなかにも登場します。宮廷生活のなかでも簾が使われていたことがわかるのです。

3.現代の簾

和風のイメージがある簾ですが、形や色を変えて現代の洋風の住まいでも活躍しています。たとえば竹に変わり、麻を使った簾。洋風のお家にもマッチするシックなダークブラウン色の簾などもあります。現代の私たちの生活に自然と溶け込み、不思議と懐かしい気持ちにさせてくれる「簾」。今年の夏から使っている我が家の簾も、早いもので季節も移り変わり肌寒い風が入ってくるようになりました。

 

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この記事を書いた人

イラストレーター、ライター

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