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日本にしかない「お彼岸」の習慣

東京でも見られる「彼岸」の「あの世」と此岸の「この世」(1/2ページ)

正木 晃正木 晃

2019/09/20

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イメージ/123RF

お彼岸は、日本人の霊魂観や死生観を考えるうえで、ひじょうにたいせつなお祭りだ。ご存じのとおり、彼岸には春の彼岸と秋の彼岸がある。それぞれ春分の日と秋分の日を中日として、その前後の三日間ずつをくわえた一週間が彼岸になる。

この期間に、寺では彼岸会という法会を開き、信者は寺に詣でて、本堂でお坊さんの話を聞いたり墓参りをしたりする。もっとも最近では、墓参りはしても、本堂の中に入ることは少なくなっている。ましてやお坊さんの話を聞く機会は激減している。

お彼岸の最大の特徴は、日本にしかない宗教行事だということだ。インドにもチベットにも中国にも韓国にもない。

また、お彼岸になれば寺に詣でて墓参りをするのだから、仏教の行事と思われがちだ。しかし、じつは仏教に由来していない。そもそも彼岸という言葉は「悟りの世界」を意味し、「俗世」を意味する此岸と対置された仏教用語なのだが、仏教の本場だったインドには、日本のお彼岸にあたる宗教行事は存在しなかった。

だから、「彼岸」はもともと「日願」だったのではないか、という説もある。

つまり、日本古来の太陽信仰に由来していたというのである。たしかに、春分の日と秋分の日は、太陽が真東からのぼり真西に沈む特別な日なので、太陽に対する信仰となんらかのかかわりがあったのかもしれない。

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この記事を書いた人

宗教学者

1953年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本・チベット密教)。特に修行における心身変容や図像表現を研究。主著に『お坊さんのための「仏教入門」』『あなたの知らない「仏教」入門』『現代日本語訳 法華経』『現代日本語訳 日蓮の立正安国論』『再興! 日本仏教』『カラーリング・マンダラ』『現代日本語訳空海の秘蔵宝鑰』(いずれも春秋社)、『密教』(講談社)、『マンダラとは何か』(NHK出版)など多数。

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