畳の歴史と効果
横山せつこ
2019/07/25
蒸し蒸しと暑い夏の昼下がり、「ちょっと休憩〜。」と床にごろりと横になります。至福の時も束の間、「いててて。」と腰をさすっている私。
「フローリングって硬くて痛いし、汗でベタベタして、寝心地が悪いんだよなあ。」
昔はフローリングの部屋に憧れて、「畳の部屋なんて古臭い」と思っていたこともありましたが、今は実家の畳の部屋がとても羨ましいのです。畳は柔らかくサラサラとした感触で、寝ていても汗のべたつきが気になりません。畳の香りは優しくて気持ちが落ち着きます。
さて、日本で畳が使われるようになったのはいつ頃からでしょう。
奈良時代や平安時代では、板の間の床に、畳をゴザのように置いて使っていました。寝具や座布団として使われていたのです。使う人の位によって、畳の厚みや縁の柄や色が異なったそうです。
現在のように、床材として畳を敷き詰めて使用するようになったのは鎌倉時代から室町時代にかけてです。建物に書院造が誕生し、部屋全体の床に畳が敷かれるようになりました。そして江戸時代中期以降には、庶民の家にも畳が使われるようになったのです。畳をつくることを生業とする「畳職人」も確立されました。
畳に使用されているのは、「イグサ」という多年生の植物です。硬くて弾力性があるので編むのに最適だったでしょうね。「イグサ」の別名を「燈芯草」とも呼びます。「イグサ」の茎の髄の部分は油を吸いあげるため、行灯の灯芯として使われてきたのです。「イグサ」は、食べることもできます。今では無農薬栽培のイグサを粉末状にしたものが売られていたり、その粉末をうどんやお菓子などに練りこんだ食品もあります。イグサは食物繊維が豊富なので、「肥満防止」や「コレステロール上昇抑制」、「血糖値上昇抑制」などの様々な効果があるのです。ダイエットにも効果的なんですよ。またイグサを細かく砕いて袋につめたものをお風呂にいれると、お肌がスベスベになる効果もあるんだとか。イグサの力は畳として敷くだけではなく、様々な方面で役に立つ存在なのです。
私自身、和室がない家で生活をしていますが「小さな和室の部屋でも、あれば便利だな〜。」と感じることが多いです。たとえば普段は布団を敷いて寝室として使っていても、お客さんが来たときは布団をしまって客間として使うこともできるし、その場に応じてスペースを活用できます。さらに畳は柔らかいので転んでも怪我をする心配がないし、フローリングに比べると足音が響かないので、子どもを遊ばせるスペースにするのも安心です。
畳は、自然素材なので調湿効果もあります。夏のじめじめとした湿気を吸収してくれて、乾燥している冬はイグサの水分を放出し、湿度を調整してくれるのです。この畳の上に布団を敷けば、汗を含んだ布団の湿気を吸収してくれるので、すっきりとした気持ちで過ごせます。たとえば大人より汗をかき、免疫力の弱い赤ちゃんがいる家庭でも畳は向いています。汗を吸水し、抗菌力も高い畳は、赤ちゃんにとっても優しい存在なのです。また畳であれば赤ちゃんが落ちる心配はないし、布団からはみ出しても冷たいフローリングで風邪をひく心配もありません。
さて、そんな体に優しい畳ですが、自然のものなので定期的なメンテナンスは必要になります。畳を長く使うためには3~4年に一度、裏返しや表替えをしましょう。また10年程度で畳床を交換するのが良いそうですよ。畳の魅力を知るとますます和室の部屋が欲しくなってきましたが・・・。この夏はフローリングの上に、実家から持ってきたゴザを敷いて我慢したいと思います。
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イラストレーター、ライター
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