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家と方角のはなし

南向きより西向き? 北東が忌み嫌われる理由(1/2ページ)

正木 晃正木 晃

2019/05/22

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イメージ/123RF

個人住宅を建てる際、日本などの北半球では、日当たりを優先して、南向きにするのが普通です。もちろん、立地条件によっては、南向きにできない場合もありますが、南向きにできるのに、わざわざ他の方角を選ぶ人はまずいないでしょう。

ただし、同じ建築物でも、お寺には例外があります。南向きが多いのは事実ですが、全部が南向きとは限りません。阿弥陀如来を信仰して、極楽浄土への往生を願う浄土宗や浄土真宗では、極楽浄土が西方にあると経典に説かれているので、阿弥陀如来像を安置するお堂(阿弥陀堂)は、東向きに建てるのが通例です。京都の知恩院の阿弥陀堂も、同じく浄土真宗の東西本願寺の阿弥陀堂も、東向きに建てられています。京都にお出かけになる機会があったら、確認してみてください。

ちなみに、インドでは、陽が当たる当たらないという南北方向よりも、太陽が昇って沈む東西方向が重視されました。現に、弘法大師空海がもたらした曼荼羅は、胎蔵曼荼羅では東が上、金剛界曼荼羅では西が上になっています。なにしろ、暑いところなので、日当たりが良すぎるというのは、あまり好ましくなかったからといいます。ついでに申し上げれば、太陽は熱く照らし月は冷たく照らすといって、太陽よりも月のほうが尊ばれました。

ところが、中国では南北方向が重視されました。その背景には、皇帝を代表とする最高権力者は、「南面天子」といって、必ず南面するという通則があったからです。

南と北では、南が優位でした。陰陽の思想では、北が陰で、南が陽です。日本でもかつて、高貴な身分の婦人を「北の方」と呼んだ理由は、女性は陰とされたからです。典型的な男尊女卑ですが、この種の発想は、古代や中世の社会ではいたるところに見られます。

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この記事を書いた人

宗教学者

1953年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本・チベット密教)。特に修行における心身変容や図像表現を研究。主著に『お坊さんのための「仏教入門」』『あなたの知らない「仏教」入門』『現代日本語訳 法華経』『現代日本語訳 日蓮の立正安国論』『再興! 日本仏教』『カラーリング・マンダラ』『現代日本語訳空海の秘蔵宝鑰』(いずれも春秋社)、『密教』(講談社)、『マンダラとは何か』(NHK出版)など多数。

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