アパート壁に2ミリの穴。屋根裏から「のぞき」をされていた! 知っておきたいいまどきの手口
賃貸幸せラボラトリー
2023/05/11
屋根裏に仕掛けたカメラで約1年間「のぞき」
ゴールデンウィークが迫る先月末近く、驚きの事件が報道された。埼玉県で起きた「のぞき」「わいせつ」行為に関わる事件だ。
現場は、県中西部の毛呂山町に建つアパートの1室。20代の女子大生が暮らす部屋の天井に、小さな穴が開けられていた。穴は直径2ミリメートル。きわめて微細なものだ。2箇所にあったという。
この穴から、小型カメラを使って女子大生の部屋を覗く「のぞき」行為を繰り返していたとして、43歳の男が4月26日に送検された。
男は、女子大生の部屋の屋根裏に侵入し、カメラを設置。昨年の4月から今年3月までの約1年間にわたり、レンズを通してその生活を覗いていたらしい。
のみならず、男は女子大生の部屋に幾度となく足を踏み入れてもいたようだ。
高さ2メートル以上あるはしごを自ら製作、屋根裏から下げ降ろし、これを伝って室内へ侵入していたという。経路には、女子大生の部屋のバスルームの天井にある点検口が使われた。
犯行の足場となった親族宅
男が犯行の足場にしたのが、女子大生と同じアパートに住む、男の親族の部屋だ。この部屋は、女子大生の部屋の隣にあった。男はこの親族から「隣に女子大生が住んでいる」との情報を得たらしい。
そこで、男はまずこの親族宅の合鍵をひそかにこしらえたという。次いで、自宅のある茨城県古河市からはるばるやってきては親族宅に侵入、やはりバスルームの点検口を伝って、屋根裏によじ登っていたようだ。
なお、親族宅の屋根裏と、女子大生宅の屋根裏との間には、石膏ボード製の壁があった。いわゆる界壁だ。男はそれを壊し、自らが行き来するための通路をこしらえていた。
ちなみに、この行為は建物の耐火性能を落とすことにつながる大変危険な行為だ。カメラを仕掛けるために開けた2ミリの穴も併せて、もちろん建造物等損壊の罪となる。
最後は表のドアから大胆に侵入、逮捕
長期にわたる男の犯行が発覚したきっかけは、女子大生をめぐる欲求がいよいよエスカレートし、男の行動が大胆になってしまったことにあるようだ。
今年の3月14日のこと。男は、屋根裏を経由せず、鍵のかかっていない玄関ドアから女子大生の部屋へ侵入し、寝ていた女子大生の体に触ったらしい。
当然、騒ぎになったものと思われ、男は逃走。しかし、逃げた先が隣の親族宅であったところを目撃されていたため、容疑はすぐに男の身に迫り、逮捕に至っている。
ともあれ、とんでもない一連の犯行、あるいは男の愚行だが、幸いな点を挙げるとすれば、男が最後の侵入の際、逃げ出さずに逆上して女子大生を傷つけたり、命に危険を及ぼしたりしなかったことだろう。
男はDIYが得意で、それが今回の犯行に威力を発揮したという。妻子があり、子どもは3人と報道されている。更生を切に願いたいものだ。
知っておきたい、いまどきの「のぞき」の手口
さて、お伝えした埼玉県での事件だが、この例のように屋根裏に侵入したり、天井に穴を開けたりといった大掛かりな方法をとらずとも、もっと簡単なやり方で、住居・室内をねらったのぞきや盗撮といった犯罪は、残念ながら実行が可能だ。
一人暮らしの賃貸マンション、アパートなどで特に気をつけたい例を2つ紹介したい。
1.偽装隠しカメラ、目立たぬ場所への小型カメラの設置
まずひとつ目は、偽装隠しカメラによるのぞきや盗撮、さらに目立たない場所への小型カメラの設置だ。
たとえば、偽装隠しカメラの例――
- 普通の目覚まし時計と思っていたが、中にカメラが仕掛けられていた。音の出る穴に見えていた部分にレンズが仕込まれていた
- ひとに貰ったUSB充電器が、実は隠しカメラの入ったものだった。よく見ると一部に小さなレンズの穴が開いていた
- 友人にプレゼントされたぬいぐるみの中に、カメラとレンズが仕掛けられていた
――などと、いったケースにとどまらず、さまざまな電気製品や置物、照明器具などにカメラは仕掛けられていることがあるので注意が必要だ。
また、何かに偽装しなくとも、近年進化の著しい小型カメラは、設置可能な場所をますます広げている。
たとえば、エアコン内部や換気扇まわり、本棚などに仕掛けたり、トイレや脱衣所の目立たない場所にカメラを潜ませたりすることもさらに容易となっている。
つまり、盗聴器にもいえることだが、一人暮らしの女性などは特に訪問者に気をつけることだ。また、他人からの貰い物にも注意を怠るべきではない。
「男友達に部屋に来てもらい、家電の据え付けを頼んだところ、とんでもないものを仕掛けられてしまった」
「贈り物を喜んでいたら、とんだ裏切りに遭ってしまった」
そうした例があとを絶たない。
2.ドアスコープからののぞき行為
一人暮らしの女性も多い賃貸マンションやアパートでは、玄関ドアにドアスコープが付いていないという例はめずらしい。
オートロックや、モニター付きのものを含めたインターホンはあっても、訪問者の様子を室内から見定める最後のチェックポイントとして、ドアスコープはやはり頼りになる存在だ。
ところが、ドアスコープは、ときに外から室内を覗く「のぞき」の道具にもなってしまう。そして、そのことを知らない人も多い。
実は、ある種の単眼鏡などを使えば、ドアスコープを通してドアの内側を外から覗くことは容易に可能となる。そうした一部は「リバースドアスコープ」などと呼ばれ、誰でも簡単に購入できる。
多くのワンルームのように、ドアのある位置から部屋の奥までがまっすぐに見渡せるような間取りでは、こうしたのぞき行為への警戒が特に必要だ。
対策としては、ドアスコープの内側にカバーを取り付けるのが有効となる。
ただし、カバーは開閉しやすいことが大事だ。開閉しにくいと、住んでいる当人がドアスコープをドアスコープとして利用しにくくなる(たとえばビニールテープを張ってしまうなど)。
そのため、ドアスコープ専用の便利なカバーも売られているが、ドアに磁石がくっつく場合はマグネットシートを貼っておくなど、手軽な方法ももちろんアリだ。
工具などを使ってドアスコープそのものを取り外し、中を覗くというさらに乱暴な手口もあるが、内側のカバーはそれもある程度抑えたり、犯行に気付くのを容易にしたりしてくれるだろう。
(文/賃貸幸せラボラトリー)
この記事を書いた人
編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室