賃貸・女性の一人暮らし 強制わいせつ、強制性交――卑劣な犯罪被害に遭わないために
賃貸幸せラボラトリー
2023/04/08
住宅での発生が多い、性的な目的での犯罪
以下は、警視庁が公表している「強制わいせつ・強制性交等の発生状況」に挙げられている数字となる。(警視庁「東京の犯罪」令和3年版より)
まずは、強制わいせつの発生場所だ。
道路上 | 27.0% |
中高層住宅(4階建以上) | 17.7% |
その他の住宅 | 10.6% |
一戸建住宅 | 3.4% |
(その他の場所… 車両内、商店等、公園などの数字は省略)
このとおり、道路上が一番多いが、「住宅」各々を足すと31.7%となり、それを上回ることがわかる。
次に、強制性交等の発生場所となる。
中高層住宅(4階建以上) | 26.9% |
ホテル等 | 24.2% |
その他の住宅 | 20.6% |
一戸建住宅 | 5.0% |
(その他の場所… 道路上、飲食店等、学校などの数字は省略)
こちらでは、各「住宅」の合計は半数を超えて52.5%にのぼる。圧倒的な割合といえるだろう。(なお、上記のうち「中高層住宅」「その他の住宅」については、住戸内のみならず共用部分での発生も含まれている)
すなわち、女性が主に被害に遭いやすい性的な目的での犯罪は、場所としては住宅内で起りやすい。
なかでも、そうした女性が一人暮らしをしているケースが多い賃貸マンション・アパートは、いうまでもなく他に増して要注意の場所だ。
対策1.女性の一人暮らしを悟られないために
男性は、普段ほとんどこれを意識していない。だが多くの女性は違う。彼女らは、
- 全く見ず知らずの相手が
- 自分の住む家、部屋に故意に近づき、敷地や室内に侵入し
- わいせつな行為や性的暴行におよぶ
こうした危険を身近に感じながら、毎日を送っている。
すなわち、顔も名前も知らない相手がおよぼすかもしれない危険の範囲が、男性よりも一回りも二回りも広いのだ。これは、女性がつねに意識せざるをえない、住まいのリスク管理においての男性との大きな違いとなる。
そこで、カギとなるひとつが「女性の一人暮らし」を安易に悟られないことだ。
見ず知らずの相手に目を付けられ、狙われるきっかけを減らすための対策として、具体的には以下のような行動が挙げられる。
「物件内での行動」
- 洗濯物を外に干さない
- 女性らしい色、柄のカーテンをかけない
- 出窓の天板や窓際など、外から見えやすいところに女性らしい小物や道具を置かない
- 郵便受けや表札に氏名を表示しない(する場合は苗字まで)
- 集合ポストの鍵は必ずかける(郵便物から氏名が洩れるのを防ぐため)
- ポストの郵便物を溢れさせない(上に同じ)
- ゴミから個人情報、買い物情報などが洩れるのを避ける(シュレッダーにかけてから捨てるなど)
――ある一人暮らしの女性の場合、女性ではなく男性が住んでいる部屋だと周りに思わせるため、窓際に男性用化粧品の容器をわざと置き、ローテーションさせているそうだ。
「物件の外での行動」
- エントランスには周りを確認してから入る(不審な人物が視界に入る場合など、わざと通り過ぎたりもする)
- 通勤時や通学時、同じ道ばかり通るのを避ける
- 毎日同じコンビニで買い物してから帰宅するなど、決まったパターンを作らない
- コンビニでの公共料金等の支払いはしない(善良な店員さんまで疑うのは失礼だが、氏名、住所が洩れやすい)
――「周りを確認してからエントランスに入るとはいっても、家を出るときに見られればおしまいなのでは」との意見もごもっともだが、ここで重要なのはリスク・ゼロを求めることではない。リスクの機会を少しでも減らすこととなる。
対策2.狙われてしまった場合のために
次は「この部屋の女性を狙おう」と、犯罪者がいよいよ行動に及んだ場合を想定しての対策となる。いわば有事の備えだ。
「部屋の中での対策」
- 訪問者が誰かは、常に十分に確認する(モニター付きインターホン、無ければドアスコープで)
- ドアを開ける際はドアチェーンやドアガードをかけたままにする
- 在宅時であっても、ドア、窓の鍵はつねにかけておく。就寝時は特に注意
- ゴミ出しなど一瞬の外出時でも、ドア、窓の鍵は必ずかける
- トイレやバスルームなどの窓の施錠も怠らない(小さくとも犯罪者の体格によっては意外に侵入してしまえる)
- ドアスコープにはマグネットシートなどでカバーをかける(ドアスコープを通して外側から室内を覗く方法もある)
- ドアのサムターンにサムターン回し防止用カバーを取り付ける
- ドアガードプレート(ドアのこじ開け等を予防する器具)を取り付ける
- 窓の防犯対策をする(補助錠の取り付け、防犯フィルムの貼り付け、窓用防犯ブザーの設置など)
- 外側のカーテンは遮光カーテン、内側は室内の様子が判りにくいミラーレースカーテンにする
- 部屋の照明をタイマー付きにし、在宅、外出のパターンを把握されないよう装う
- ベランダ、テラスなどにセンサーライトを取り付ける
- 携帯用防犯ブザーを部屋でも身近に置く
――「私の部屋は1階じゃないから」などと安心して、ベランダの掃き出し窓の鍵をかけずに夜眠ったりするのはとても危険な行為だ。そこに登るための足場や、上下左右の別の部屋からベランダ伝いに侵入するルートを犯罪者がすでに見つけている可能性もある。
「部屋の外側での対策」
- 帰宅時、イヤホンで音楽を聴いたり、電話したりしながら自宅に近づかない(電話での通話中は話し相手に異常が伝わりやすいが、それ以前に犯罪者の接近を察知しにくい)
- 自宅建物内で知らない人物に会ったら、部屋に入るのを避ける(入室とともに背後から襲われる危険や、部屋を特定されるのを避ける)
- 部屋に入る際、ドアは周りをもう一度確認してから開ける(背後からの襲撃予防)
- 知らない人物と同じエレベーターに乗らない
- 集合ポスト付近に知らない人物がいる場合はポストを開けない(部屋の特定を回避)
- 携帯用防犯ブザーをつねに持つ
――ある女性の行動だ。ある日、帰宅時、住んでいるマンションの廊下で作業服姿の男性が壁や天井を窺い、設備の点検でもしているようなところに出くわしたそうだ。
そこで、女性は「こんにちは」と声をかけるも、部屋には向かわず、用事を思い出したような素振りでUターン。一旦外に出て、男性の姿が消えた頃を見計らい、またエントランスをくぐり直したという。
「不審者でなかったのなら申し訳ないのですが、住んでいる部屋や階数を背後から見られたのではないかとあとで心配になり、気に病むこと自体がイヤなので…」
ちなみに、空き巣犯は必ず物件の下見をするといわれている。その際は、怪しまれないように作業服などを着て何かの仕事を装うことが多い。もちろん、性的犯行を企てる者もそうする可能性は高いだろう。
また、犯罪者は挨拶や声かけに弱い。住人などに声をかけられた場合、その場所での犯行をあきらめる傾向がつよいことが知られている。
対策3.狙われにくい物件・犯行しにくい物件を選ぶ
次に、そもそも犯罪者から狙われにくい物件の選び方だ。さらに、犯行におよびたくともそれがしにくい物件の選び方となる。
防犯カメラ
なるべく多くの種類の防犯設備、防犯に役立つ設備が付いた物件を選ぶ
- オートロック
- 防犯カメラ
- モニター付きインターホン
- 1ドア2ロックのドア、ディンプルキーなど防犯性の高い鍵
- 窓用シャッター、雨戸、面格子、窓の補助錠
- 防犯ガラス窓
- ホームセキュリティシステム
- 室内洗濯物干しユニット、浴室乾燥機(洗濯物を外に干さずに済ませやすい)
- 宅配ボックス(他人と顔を合わせず荷物を受け取れる)
犯行しにくい「人の目」がある物件、環境のよい物件を選ぶ
- 管理人の常駐、巡回がある物件
- オーナー宅が同じ建物内にある物件(賃貸併用住宅という)
- オーナー宅が同じ敷地内や隣など、すぐそばにある物件
- 適度な人通りに面した物件
- 通りからの死角に収まっていない物件
- 夜、人気が無くなる場所や、暗くなる場所に建っていない物件
- ゴミの散乱が目立つ、酔っ払いが多いなど、環境の悪い場所に建っていない物件
2階以上にある部屋を選ぶ。侵入しやすい1階は避ける
2階以上であっても、ベランダや窓の下に侵入の足場となるものがある部屋、隣の建物から侵入しやすい部屋は避ける
――マンションだが一部はオーナー(大家さん)の自宅になっており、当人がいつも周囲を掃除している、オーナー宅からの視線も周りに行き届く、といった物件は、犯罪者がもっとも近寄りにくい物件といえるだろう。「大家さんと同じ屋根の下に住むなんて」と、煙たがる人もいるが、安全・安心の面からは、これらは多くがおススメの物件だ。
嫌なことが起こる可能性を少しでも下げる
以上、主に賃貸を想定して、一人暮らしの女性が卑劣な犯罪被害に遭わないためのアドバイスを並べてみた。「すごい数だなぁ」と、思われた方も多いだろう。
ちなみに、海外旅行などすれば、日本とはレベルの違う厳重な警戒態勢の敷かれた家をよく見かけることになる。
住宅の安全・安心は、すなわち求めればキリがないものだ。また、どんなに警戒していても、犯罪被害の可能性をゼロにすることは不可能だ。
とはいえ、リスクがあるのにそれに気付かなかったり、あるいは何も対策しなかったりすることで、被害の可能性はプラス10%、20%、さらに――と、確実に増えていく。
よって、全部は無理でも、リスクを増やさないため出来ることはなるべく実行し、一生の大事が起こる可能性を下げていく。それが大切なこととなるわけだ。
この記事を参考のひとつとしてほしい。
(文/賃貸幸せラボラトリー)
この記事を書いた人
編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室