オーナーはリスクも心得ておきたい。狭小賃貸物件が 入居率を上げているといわれる理由

2026/03/27
「極小」「激セマ」―――専有面積10平米を切るような狭小な賃貸物件が、マスメディアなどで話題となっている。入居率が高いといわれる理由は何か。どんな工夫が凝らされているのか。投資する際に心がけたいことにも併せて触れていく。
「極小」「激セマ」賃貸物件が話題に
「極小アパート」「激セマ賃貸物件」――このところテレビ番組やニュースサイトなどで、よく採り上げられているのを目にした人も多いだろう。たとえば1住戸の専有面積が10平米を切るような、極めて狭小な賃貸物件が、東京都心などの交通利便性が高いエリアを中心に入居率を上げているという。また、それらを実際に見て知る人も、本紙読者であるオーナーの皆さんのなかには少なからずいらっしゃるに違いない。
これら話題の物件には、狭さを克服するためのある決め手といえる設計が施されている。ロフトの採用だ。天井高を上げ、空いた空間にロフトを設ける。そこを事実上の寝室とする。床面積を大きく奪うベッドを置かなくてもよいかたちにしているわけだ。
水回りも徹底して狭小化されている。風呂はシャワーブースとし、バスタブは置かない。キッチンは、洗面器と見紛うばかりの小型シンクの横にIHコンロが一口のみだ。トイレも同様、飛行機の中で見るあのサイズに近いと感じる人もいるだろう。玄関も、靴を3足も置けばほかには足の踏み場がないといった状態だ。
市場の注目が集まる理由
なぜ、こうした一見不便で窮屈な狭小物件が入居率を上げているとされるのか。理由はいくつか重なっている。第一に、昨今の家賃の高騰だ。たとえば、不動産ポータルサイト「at home」を運営するアットホーム(株)による「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向(2025年12月)」を見ると、東京23区エリアでのシングル向けアパートの平均家賃は前年同月比でプラス6.8%と、大幅に上昇している。賃貸マンションだともっと強烈だ。プラス11.1%となっている。
東京とその周辺で、少しでも安い家賃を望む場合、選択肢は大きく3つある。1つ目は、家賃が高い都心からなるべく離れること。つまり便利さを捨てることだ。2つ目は、築年の古い物件を探すこと。すなわち「キレイ」を捨てる。3つ目は広さだ。窮屈な狭い部屋でもよしとする。そこで、いまどきは単身の若者を中心に3つ目を選ぶ人が多い傾向といわれている。驚くほど狭い部屋でも、家賃が安く、立地が便利で、建物がキレイならば彼らはそちらを選ぶ。なぜなら、彼らはいわゆるタイパ世代だ。通勤や普段の生活含め、何をするにも時間がかからない利便性の高いロケーションに価値をおく。そのうえで、高騰する家賃相場を乗り切るため、部屋の狭さについては我慢するというわけだ。昨今話題にのぼるような洒落たスタイルの狭小物件の場合で、家賃は、広さ以外は似た条件のワンルームよりも2万~3万円ほど下がることが多いようだ。
他方、狭い部屋でも快適に暮らしやすい方向に、さまざまな環境が整ってきているのがいまという時代だ。たとえば、スマホやPC、タブレットがあれば、TVやオーディオセットは要らないという人はかなりの数になるだろう。冷蔵庫やキッチンがミニサイズでも、近所にコンビニやスーパー、飲食店がたくさんあれば十分だという人も少なくないはずだ。同様に、大きな洗濯機は要らない、必要ならばコインランドリーに持ち込むという人、さらに、普段のお風呂はシャワーでよい、湯船に浸かりたいときはたまのスーパー銭湯でくつろぐ方が狭いバスタブより快適という人も結構いるはずだ。狭小物件が入居率を上げているといわれる理由としては、これら時代が生み出した環境も間違いなく挙げられることになるだろう。
狭小物件への投資で心掛けたいこと
オーナー目線から、こうしたいまどきの狭小賃貸物件に投資し、運営する場合の心構えを記しておきたい。なお、賃貸集合住宅の経営においては、住戸1つ1つが狭いほど敷地面積あたりの部屋数は多くとれる。その一方で、部屋の面積が半減すれば家賃も半減するといったことは通常無いため、平米当たりの賃料単価は上がることになる。狭小物件が生み出す一番のメリットといわれるのがこれだ。立地がよく、入居率が常に高ければ、この利点が十二分に活かされることになるだろう。
一方、部屋数が多いと、その分だけ入退去の数が増える。原状回復費用や次の入居者を探すための募集費用が増していく。加えて、設備等の修繕費もかさんでいきやすい。そのうえで、長期間入居する人が少ないとされる狭小物件では、これらコスト増に拍車がかかりがちだ。よって、先ほどのメリットはこちらで大きく削られる可能性もあるわけだ。
以上は、狭小物件の経営に関して最初に指摘されるプラス、マイナスとなる。プラスを伸ばし、マイナスを抑えるには緻密なマネジメントが要求されるため、個人オーナーの自主管
理はハードルが高いともいわれる所以だ。そして、この記事では、現状あまり語られることのないリスクを最後に掲げておこう。
それは、いわば「行政・法令リスク」とすべきものだ。ご存じの方も多いだろう。狭い賃貸物件が建つことを嫌う自治体は多い。住環境、地域の人口バランス、あるいは税収など、さまざまな面を併せての判断だ。東京23区の場合、いわゆる「ワンルーム条例」など、全ての区が1住戸における最低面積を基本とした集合住宅への規制を設けている。
すると、なぜそれでも狭小物件は建つのかと疑問が浮かぶが、それは違法なケースでない限り、事業者の努力による。各自治体の規制に抵触しないプランを彼らが懸命に考え、オーナーに提供している結果がいまの状況だ。行政の方針にももちろん理はある。だが、これら事業者が、都心に住みたい人や住まなければならない人へのリーズナブルな住宅供給の実現という結果を現に示していることも、一方で重い事実といえるだろう。
とはいえ、何かをきっかけに世論の後押しを受けるなど、行政が本気を出せば、そもそも「嫌われて」いる狭小物件に対する風当たりは今後さらに強まる可能性もある。たとえば、対象世帯が広範囲に及ぶ家賃補助政策が将来新たに実施されるとして、狭小物件が外されるといったことが仮に起これば、オーナーにとっては逆風だ。あるいは税制の上乗せ、または金融機関の融資に向けて何らかのプレッシャーがかかるような施策が講じられれば、出口戦略の難度が上がるといった可能性もあるだろう。
この記事を書いた人
編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室






















