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語られてきた2025年問題。 今年以降どうなるのか? 次に待つのは2030年問題、40年問題、さらには…?

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ここ数年の間、懸念がささやかれ続けてきた2025年問題。団塊世代全員が75歳以上となって最初に迎えたのが今年だ。今後はどうなるのか? 不動産市場のフェーズが変わりそうな2030年、40年と、展望を探ってみる。

団塊世代全員が後期高齢者に

ここ数年にわたって「2025年問題」がしばしば語られてきた。日本の人口の最大のボリュームゾーンとなっている「団塊世代」が全員75歳以上となり、迎えるこの年以降、社会や経済にまたがる多くの分野で問題が表面化してくるというものだ。その25年が、間もなく暮れようとしている。なお、団塊世代とは1947年から4 9 年までの第1 次ベビーブームの間に生まれた人たちを指す。団塊の世代という呼称も一般的だ。

75歳といえば、以降は「後期高齢者」と呼ばれることになる。働ける人が少なくなり、多くが現役を退くかたちとなる。そのため、この辺りの年齢を過ぎると、年金等さまざまな社会保障や福祉に支えられながら日々を過ごす人が大半となる。そのうえで、団塊世代は現在560万人程いるといわれている。加えて、このあともしばらくの間、出生数の多かった世代の高齢化が続く。わが国における社会保障費や福祉コストの負担、さらには労働力の減少が一段と深刻化することをシグナライズするものとして「2025年」という数字がこれまで話題とされてきた。

総務省による先般9月19日公表の人口推計を掲げてみよう。2025年の終わりを前にした、わが国の人口における現状の数値はこうなっている。(2025年4月1日現在の確定値)

さらに、団塊世代とそのあとの7年間を合わせた10年間の出生数をを各年別に挙げていこう。

見てのとおり、200万人を切るのはやっとポスト団塊世代4年目のこととなる。

なお、直近2024年の出生数は68万6千人だ。団塊世代のピークの数の1/4程度にまで下がっている(24年人口動態統計確定数・9月16日厚生労働省)。両者を比べると、まるで別の国を見るかのような違いとなる。

2025年問題 不動産市場への影響

2025年問題は、不動産市場にも影響を及ぼすと言われてきた。そのうち最も多く語られたのが空き家の増加となる。なおかつ、それらが市場に放出されることによる不動産価格の急な下落が、地方を中心に広がることが懸念されてきた。

しかしながら、実際にその時を迎えた今年以降、そういった心配は現実として顕著なものにはならないだろう。あるいは、ほとんど現実化しないといってもいい。なぜなら、わが国の人口減少、さらには大都市部への人口集中等による空き家の増加は、すでに過去から段階的に進んで来ているものだ。今年や来年に突如始まり、皆が驚くといった類のものではない。また、そのことは以降も同様で、変化はゆっくりと進んでいくはずだ。2025年が過ぎるや、ほどなく不動産価格に急落・暴落が生じるといった話も過去一部であったようだが、他の突発的要素が絡まない限り、基本としてそれはありえない。そもそも「2025年問題」という言葉自体が、新たな法律がその年から施行されるといったような、前後を画する意味をもつものではない。

以下は、総務省による「令和5年(2023)住宅・土地統計調査」(24年9月公表)で示されたわが国の空き家の数となる。

総数 900万2千戸

───うち、賃貸・売却用及び別荘等を除く空き家385万6千戸。

さらに、上記の20年前の数字はこうだった(2003年)。

総数 659万3千戸

───うち、賃貸・売却用及び別荘等を除く空き家 211万8千戸。

03年(後者)に比べ、23年(前者)の数字はたしかに大きく伸びている。だが、それでも総数で約1.37倍、賃貸・売却用及び別荘等を除く空き家で1.82倍だ。各々1.5倍以下、2倍以下に留まっている。20年の長きを経た上でのこれらの数字は、およそ急変とはいえないレベルのものだろう。

今年以降、増加のペースが多少上がったとしても、市場を激しく揺らすものになるとはさすがに考えにくい。

さらに、以下は厚生労働省「2024年簡易生命表」による、現状においての75歳時の平均余命となる。

すなわち、全員が現在75歳から78歳となっている団塊世代のうち、持ち家に暮らす方々においては、今後もその多くが10年程度以上の長い間、現在の家に住む可能性が高い。よって、空き家は繰り返すがこの間急にではなく、漸次生じていくはずだ。そのうえで、地方において空き家が特に増える地域にあっては、当該エリアそのものが「空き家」になるところも少なからず出て来るだろう(地域そのものから人がいなくなる)。その場合、そこで起こるのは不動産価値の急落や暴落ではない。その場所まるごとが一般の不動産市場から退出するといったかたちになるわけだ。

重ねていおう。わが国における人口減少・少子高齢化とそれによる不動産市場への影響は「2025年問題」によって拍車はかかるものの、突如、劇的な変化をマーケットにもたらすものとはいえない。空き家のうち、使用に耐えうるものが市場に放出される機会が今後増えるにしても、そのインパクトは、たとえば外国人の増加による都市部での不動産需要の拡大といったものよりはおそらく低いレベルに留まるだろう。

世帯が減り始める2030年問題

ところで、不動産・住宅という観点から見ると、2025年問題よりもむしろ気になるのが2030年だ。現状の予測では、この年辺りに日本の世帯数がピークを迎える。その数、約5773万2千世帯となる。国立社会保障・人口問題研究所が昨年4月に公表した数字だ。

なお、わが国の人口そのものはご承知のとおりすでに減少の過程にある。2008年が最大で(1億2808万人)、現状そこから500万人近くが減っている(1億2317万人・総務省統計局による本年9月1日概算値)。しかしながら、世帯数は未だ増加中だ。その理由は、当然ながら1世帯あたりの人数が減っていることによる。そこで、振り返れば、相続税の基礎控除額の引き下げ等が行われた2015年およびその前後など、節税のため賃貸住宅の着工数が伸びていく中、「人口が減っているのに物件が建てられすぎている。市場が破綻する」と、いった意見も時折聞かれたものだ。

ところが、現実にはそうならず、昨今は大都市部を中心に家賃の高騰が逆に問題化しつつある。

この理由については、物価上昇あり、外国人による投資ありと、色々言われもするが、シンプルに突き詰めれば需給に差が生じているからこそ家賃も動いている。すなわち、需要が伸びていることの背景には増加している世帯数がある。

あたりまえだが、家には「世帯」が暮らすのだ。世帯数は人口そのものよりもさらに住宅市場と関係が深くなる。

そのうえで、予測では、いまから5年後くらいには前述のとおり日本の世帯数はピークを迎える。それ以降は減っていく。もっとも、これは2025年問題がそうであるように急変ではなく、あくまでゆるやかなターニングポイントとなるものだ。

とはいえ、不動産に投資している人、したい人は若干意識しておきたい。人口に加え、世帯も減少を始めるであろう2030年辺りというのは、たしかに市場全体のフェーズが変わる時期となる。

東京の世帯数は2035年頃がピーク

一方、いまの話を東京に限れば、少し様子が変わってくる。

東京都が昨年3月に公表した予測によれば、世帯数のピークは全国のそれに遅れて2 0 3 5年頃にやって来る。その数、768万3千世帯とされる。

なおかつ、人口の集中する「区部」はさらに遅れると見られている。2040年頃に563万6千世帯をもって最大となる。

大阪府の数字も挙げておこう。大阪府の場合、現在すでにピークが来ているといえそうな予測が出ている。(国立社会保障・人口問題研究所2024年都道府県別推計、24年11月公表)

日本の正念場となる? 2040年問題

最後に、2025年問題よりもさらにインパクト大なものとして語られているのが、実は2040年問題だ。この年、1971年~74年生まれの「団塊ジュニア世代(その中心)」が全員65歳以上となっている。なおかつ、その親たち団塊世代は全員が90歳以上だ。日本の世代別人口においての巨大な山2つが、揃って高齢者の座にそびえることとなる。総人口に占める65歳以上の割合はこの年34.8%と予測されている。3人に1人超えだ。(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」2023年推計)

もっとも、この頃になるとすでに65歳は高齢者の範疇から外されているかもしれない。70歳か、ひょっとするとそれを超える年齢が前期高齢者の入り口となっている可能性もある。とはいえ、それでも65歳となれば当然若くはない。こんにち60歳前後のアイドルがステージ等で活躍する一方、同い年でもおじいさん、おばあさん然とした人もいる。老いにあっての個人差が、このくらいの年齢では相当に著しいものとなってくる。

一方、団塊世代の方も、この頃まだ多数が存命のはずだ。現在、日本人において90歳まで生きる人の割合は、男性で25.8%、女性は50.2%となっている(厚生労働省2024年簡易生命表)。 

2040年にはこの割合がさらに広がっている可能性も低くはない。

労働力、社会保障、福祉、医療、さらには経済、地域づくり等々、まさに日本の正念場が訪れる時代が約15年後にやってくるわけだ。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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