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「融資」と「不動産価格」をどう考えるべきか

いま不動産投資を始めるのは得か損か? 投資時期を判断するポイントは?

川口豊人川口豊人

2016/11/29

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投資を始めるタイミングは「融資」と「価格」で見きわめる

不動産投資を始めるタイミングを判断する材料としては大きくふたつ、「融資」と「不動産価格」があげられます。まずは、融資について見ていきましょう。

不動産投資は、そもそも多額の資金を必要とします。そのため、自己資金のみで完結というわけにはいかず、ほとんどの場合は、物件の購入資金をどこからか調達しなければなりません。
そのため、不動産投資を始めるには、「金融機関で融資をどのくらい受けられるか」が、まず問題となります(融資を受けなくとも不動産投資を始める方法はありますが、ここでは融資を受けて投資を行なうことを前提に話を進めます)。

ですから、「不動産投資を始めるべきタイミングはいつか」という問いに対する答えのひとつは、「金融機関で(投資に必要な資金の)融資を受けることができるとき」ということができるでしょう。

<ポイント1> 融資を受けられるタイミングは?

融資を受けられるときが始めるべきタイミングと申し上げましたが、当然、融資を受けられる人もいれば、そうでない人もいます。
こう言ってしまうと身も蓋もありませんが、金融機関が融資の可否を判断する基準になるのは「収入」です。基本的に、金融機関は収入が多い人に『お金を貸したい』と考えています。
ただし、収入の増え方は人それぞれ、個人差があります。そのため、何歳になったら不動産投資を始めるべきという言い方はできません。ただし、判断のポイントを示すことはできます。

図1をご覧ください。これはAさんからDさんまで、4人の年齢と収入の変動をまとめたものですが、4人のうち融資を受けやすいのは誰だと思われますか?

平均年収がいちばん高いDさんでしょうか?

そう思われた方は残念ですが不正解です。

実は、この4人のうち融資を受けやすい人はAさんとCさんなのです。平均年収は低いのですが、毎年、安定的に収入が増えているからです。
金融機関は融資した金額を確実に回収するため、『それなりの年収を継続的に得ている』人を評価するのです。逆に、年収が高くても、たとえば収入に占めるインセンティブの割合が高い人など、年によって収入の上下がある人は融資が受けにくいといえます。

また、金融機関の審査では、勤続年数も評価の対象となっています。ですから、収入があっても転職を繰り返していると、収入の割には融資額が少なかったりすることもあります。逆に、ひとつの会社に長年勤めている人は、昇給率が低くても思ったより融資が受けられることがあります。
そう考えると、投資を始めるタイミングとしては、社会人になって安定した収入を得てから5〜10年程度過ぎた頃がベストといえるのではないでしょうか。

いまは金融機関が融資に積極的だが…

融資の可否を左右する、もうひとつの重要な要素は、市場環境です。
ご存知のように、景気が悪いときには金融機関は融資をしません。収入が高く、安定した職業に就いている人を「属性がいい人」という言い方をしますが、そうした特別な人たちを除けば、不動産投資を始めるタイミングは、市況に大きく左右されるといっていいでしょう。

現在は、マイナス金利の影響で、金融機関は融資に積極的になっています。場合によっては、頭金ゼロのフルローンで物件を購入することもできます。いまは格段に融資を受けやすい環境だといえるでしょう。

ただし、融資が受けやすいということは、それだけ不動産に資金が流れ込んでいるということです。事実、ここ数年は収益物件(投資用の物件)の価格は高騰しています。さすがにピークは過ぎたと私は見ていますが、まだまだ物件価格は高い水準にあり、不動産投資で利益を出すのはむずかしい状況といえるでしょう。

ですから、融資が出るからといって安易に借り入れすることはおすすめできません。
少なくとも金利、返済期間、不動産物件の立地等を総合的に考慮して融資を受けなければなりません。大切なのは手元にどれだけの現金が残るか、つまりキャッシュフローです。最終的にどれだけのキャッシュフローがあるのか、しっかりシミュレーションをした上で投資の判断をしましょう。

<ポイント2>不動産価格の動きはどうなる?

次に不動産価格について考えてみましょう。結論から申し上げれば、不動産投資を始めるには「価格が上昇し始めるとき」が最もいいタイミングと考えられます。そして、不動産を売却するときは、価格が上昇し、過熱している時期(ピーク~ピークアウトする時期)が一番売れる時期となります。

実は、ここしばらくの間、投資家の間では「いまは不動産の売りどき」と言われていました。不動産価格は、需要と供給のバランスで決まります。需要が多いから価格が高騰するわけで、当然、売り手にはとっては有利な状況です。

いま投資物件を購入するのは「損」

ですから、いま投資物件を購入するのは得か損かといえば、私は「損であり、いまは買うべきではない」と考えています。
需給バランスで考えると、現在は需要が多いので相場より安く買えることは、ほぼないからです。

ここで気になるのが、いつまで不動産価格が現在の水準を保ち続けるかということです。
これは、すべては「融資」がポイントになります。一言で言ってしまえば、金融機関が積極的に融資をしている間は不動産価格が下がることはほとんどありません。
過去、日本において不動産価格が暴落したのは、バブル崩壊とリーマンショックの時期でした。この両方に共通していることは、「金融機関の崩壊」と「政府の金融引締め」です。これが何を意味しているかと言えば、「金融機関での借り入れができなくなる」ということです。

私の個人の見解としては、現在の経済情勢を考えると、政府が金融引き締めに動くことは、当面、考えられないと思います。
政府は、東京オリンピックが終わるまでは日本経済を健全に保たなければなりませんし、2019年に控えた消費増税に備えて、さらに経済を強くしていかなければなりません。ですから、一気に不動産価格が暴落するような政策は取れないことでしょう。

しかし、一方で、不動産バブル的な事態は避けたいと考えているはずなので、たとえば金融庁からの通達で融資審査を厳しくするなど、あくまでも緩やかなものになるとは思われますが、不動産向け融資に一定の歯止めをかける政策が取られる可能性もあるでしょう。
今後の不動産市況が活性化するかどうかは、そうした政府の動きも含め、金融機関の状況次第だと考えます。

もうひとつ注目すべきは、世界経済の状況です。日本の不動産(特に東京)は世界マーケットにおいて優良な不動産と見られており、多くの外国人投資家が不動産を購入しています。しかし、世界経済が悪化すれば日本の不動産市場への資金流入が止まってしまいますので、不動産価格は暴落します。2007年10月に起きた「リーマンショック」が、これに近い事象といえます。

チャンスはオリンピック終了後にあり!?

以上のことから勘案すると、政府が金融引き締めを行なう可能性は低いですし、世界経済の悪化など、何らかの要因で外国人投資家が日本の不動産市場から資金を引き揚げるようなことが起こらない限りは、不動産価格が大きく下落することは考えにくいのではないでしょうか。
ただし、ここ最近、若干ではありますが不動産売買が減ってきているようです。また、来年度(2017年4月)より、金融機関の不動産向け融資審査が厳しくなる可能性があるという情報も私のところに入ってきています。

では、不動産投資を始めるべきタイミングはいつといえるのでしょうか。

実は、私は、オリンピック終了後1年が経過したくらいからがチャンスではないかと考えています。
過去のオリンピック開催都市のすべてで、経済状況の悪化と不動産価格の暴落が起こっていますので、日本においても同じことが想定されるでしょう。

オリンピック後は、不動産価格がどこまで下落するか不透明な部分がありますので、購入する立地は絞り込むことをおすすめします。
一例としてあげるなら、1日の乗降客数が5万人以上の駅から徒歩10分以内がベストだといえるでしょう。

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この記事を書いた人

株式会社コンシェル川口 代表取締役

1979年千葉県生まれ。 税理士事務所に勤務していた25歳のときに祖父から郊外の赤字アパートの管理を引き継ぎ、黒字化に成功する。 通常の税理士事務所では相続税額の計算や節税についてのアドバイスはできても、不動産の管理運営業務や不動産投資に近いアドバイス、相続税を軽減していく作業ができていない現状を鑑み、株式会社コンシェル川口を立ち上げる。現在は、地権者などを中心に不動産の管理運営面と税務面をワンストップで解決するサービスを提供している。 不動産投資家としても、10数年の実績を持つ。

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