円高のいま、海外不動産投資はおすすめできるのか?
大友健右
2016/08/22
円高の追い風を受けて注目される海外不動産
イギリスがEU離脱を決めた6月24日以来、円高の勢いが増しているようです。
私は金融の専門家ではありませんので、これについて深く論じるつもりはありません。ですが最近、おそらく円高の影響を受けて、不動産業界にもちょっとした変化があらわれているのです。
それは、新興国などの海外不動産市場の盛り上がりです。
日本の国内の土地価格は、バブル崩壊の前後で大きく変わりました。キャピタルゲイン、すなわち価格の変動によって値上がり益を稼げた時代は終わり、日本国内の不動産投資はインカムゲイン、土地や建物といった資産を保有することで利益を得るタイプの投資を指すようになりました。
要するに、日本の不動産物件は「安く買って高く売る」ものではなく、「長期的に運用して家賃で儲ける」ものに変わったということです。
ところが、海外の新興国では事情が違います。なかには成長が鈍化している国もあるかもしれませんが、安定して経済成長を遂げている国もあり、そうした国への不動産投資は「安く買って高く売る」ことができるでしょう。
しかも、海外不動産の場合、為替レートが円高へ変動することによって、リターンが掛け算式に増えるという特徴があります。
もちろん、為替レートが不利に働く(円安)というリスクもあるわけですが、そのことを計算に入れておけば、成長著しい新興国への不動産投資はハイリスク・ハイリターン型の投資として注目されるのは当たり前でしょう。
海外不動産投資セミナーに参加する人たち
というわけで最近、海外の不動産を扱う業者が増え、顧客を獲得するための投資セミナーがあちこちで開かれています。
実際にそうしたセミナーに出たわけではないので、どんな人が参加しているかは想像するしかありませんが、「バブル経済のうまい汁」を吸った世代の人は意外に少ないのではないでしょうか。
普通に考えれば、「あのころの夢をもう一度」と発想する人が多いように思えますが、バブル崩壊と同時に手痛いしっぺ返しをくらった人も多く、そのような人がもう一度、同じ夢を見る可能性は低いと考えるからです。
私が不動産会社に入社したとき、バブルはとっくにはじけていましたから、私自身はあのころの狂乱をまったく経験していませんが、上司のなかにはその渦中にいた人も少なからずいました。そういう人のなかには、「不動産業はサービス業ではない。金融業だ」なんて非常識なことを言う人も多くいましたが、そういうタイプはいまでは絶滅しています。
大きなリターンには、大きなリスクがつきもの
大きなリターンには、大きなリスクが伴う
気がかりなのは、バブルを経験したことのない若い世代の人たちが海外不動産の「ハイリターン」の面だけを見せられ、「ハイリスク」の怖さを知らずに投資に参加させられているかもしれないということです。
大きなリターンが期待される投資であればあるほど、リスクは大きくなるのは当たり前です。海外不動産の場合、土地価格の下落に加えて、円安という為替リスクもあります。そのふたつのリスクがマイナス面に働けば、損は掛け算式にふくれあがります。
また、不動産を「安く買って高く売る」には、建物を管理し、売却先を探さなければなりませんが、遠く離れたところから自分でやるのは無理があります。そこで、現地の事情にくわしい業者にまかせることになると思いますが、信頼のおける業者とそうでない業者を見分ける目がなければ、とんでもない物件をつかまされることになります。
「あのころの夢をもう一度」と考える人たちについて、私は何も言うつもりもありません。でも、バブルを知らない世代の人は、決して騙されないでください。リスクのないリターンなどはあり得ないのです。
今回の結論
・海外不動産は、物件価格と為替レートというふたつの要素で儲けが掛け算式に決まる「ハイリスク・ハイリターン」型の投資である。
・当然ながら、リターンが大きければ、リスクも大きい。
・管理や売却を自分で行なうことができないため、業者選びにもリスクがともなう。
・安易に海外不動産に手を出すな。
この記事を書いた人
株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。