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問題は需給のアンバランスだけではない!

都心の新築物件でも空室が埋まらない「もうひとつ」の理由

尾嶋健信

2016/06/29

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都内・駅近の新築アパートなのに人気薄?

 一昨年あたりから銀行の貸出条件が緩和されてきた影響で、昨年は東京都内でも、新築の賃貸物件が急増しました。しかし、なかには新築後何カ月経っても、空室が埋まらない物件もしばしば見受けられるのです。その結果、空室対策コンサルタントである私のところにも、新築物件のオーナーさんから数多くの相談が寄せられています。

 たとえば、昨年8月に完成した東京都目黒区にある新築アパート。ワンルームが1階と2階に3室ずつ、計6室あって、賃料は1室平均8万円。販売価格が7200万円。表面利回りは8パーセントになります。しかも、東急線のある駅から徒歩5分という好立地。普通に考えれば、いかにも若者単身者ウケしそうな物件であり、新築後アッという間に全室埋まりそうに思えます。

 ところが、私がオーナーさんから相談を持ちかけられた昨年12月の時点で、6室あるワンルームのうち、1室しか入居者が入っていませんでした。いったい、なぜでしょうか? そこには、単なる需要と供給によるものではない、「もうひとつの理由」があるのです。

“安普請”の新築物件が増えている

 立地のいい都内にありながら、なぜか新築でも入居者の入らない賃貸物件。こうした物件の問題点は、私から見ると一目瞭然です。すなわち、いかにも“安普請”であること。

 先ほどご紹介した目黒区のワンルームアパートも、室内に押し入れやクローゼットなどの収納スペースのまったくない、あまりに殺伐とした造りでした。いってみれば、ただの四角い箱の部屋に、申し訳程度のキッチン、ユニットバス&トイレがついているだけ。見るからに建築費をケチっていそうな、使い勝手も悪そうなワンルームなのです。

 昨年から、こうした“安普請”の新築物件をよく見かけます。ブロック塀や生け垣などの遮蔽物が何もなく、道路から全室丸見えのアパートとか。一見タイル張りに見えながら、近くで見るといかにもチープなサイディングで外壁処理されているマンションとか…。

 いくら都内にある新築とはいえ、これでは入居者が集まらないだろうなと予感させる物件。しかも、こんな物件に限って、賃料が相場より「やや高」なのです。

表面利回りをよく見せるための「操作」

 なぜ、こんな安普請の賃貸物件が増えているのか。それは、昨今のちょっとした不動産投資ブームと無関係ではありません。

 昨年から今年にかけて都内に新築された賃貸物件の多くは、「表面利回り8パーセント以上」を謳っています。こうした物件は、初めから「表面利回りありき」でつくられているように私には見えます。

 表面利回りが8パーセント以上あれば、いまの時代、不動産投資物件としてはそこそこ儲かる物件であり、不動産投資家のマインドを刺激します。と同時に、表面利回り8パーセント以上あれば、購入資金の融資の受けるとき、銀行もそこそこ高く評価してくれます。

 というわけで、建設会社が収益物件として新築アパート/マンションを建てる場合、表面利回り8パーセント以上になるように、さまざまな“操作”をしていると考えられるのです。

建築費は削って、家賃は相場より少し上げる

 さきほどの目黒区の新築アパートを例に説明しましょう。この物件の場合、表面利回り8パーセントを叩き出すためには、販売価格をどうしても7200万円前後にする必要があったのだと思います。

 とはいえ、立地でいえば、目黒区のそこそこ高級な住宅街。それなりに土地代はかかります。だとすれば、あとは建築費を極力削らざるを得ません。すなわち、安普請になります。さらに、家賃を相場よりほんの少しだけ上げるのです。

 こうした、姑息ともいえる操作によって、地価の高い都内に、そこそこお手頃価格の(でも建築費をケチった)新築物件が数多く供給されるようになっていくわけです。

 不動産投資家サイドからすれば、もちろん、こんな“ババ物件”を買わされてはいけません。身を守る手段はただひとつ。ご自分が“情報弱者”にならないこと。「自分は賃貸ビジネスのプロである」という自覚と誇りを持ち、不動産投資や賃貸経営について、前向きに学ぶ姿勢を持ちましょう。

 ちなみに、私が相談を受けた目黒区のババ物件では、「10万円程度のそこそこ高級な収納家具を全室に入れる」「敷金・礼金の初期費用をダンピングする」といった手法で、なんとか空室を埋めることができましたが…。

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この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

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