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失敗しない不動産投資の始め方(3)

年収300万円でも不動産投資で成功するために必要なこと

尾嶋健信尾嶋健信

2016/06/22

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手持ち資金ゼロでも投資は可能だが…

手持ちの資金がなくても、不動産を購入することは可能です。それが「フルローン」と「オーバーローン」。簡単におさらいしておくと、土地代金・建物代金・諸費用(登記費用・手数料・不動産取得税など)のうち、土地代金と建物代金を銀行などからのローンでまかなう方法を「フルローン」、諸費用まで含め全額をローンでまかなう方法を「オーバーローン」といいます。

フルローンやオーバーローンを組めば、年収300万円以下の人でも不動産を購入できるし、不動産投資を始めることは可能です。とはいえ、「手持ちの資金ゼロ」で始めることは、私はおすすめしません。なぜなら、年収の少ない人が資金ゼロで不動産投資を始めてしまうと、その後の賃貸経営で苦労するケースが少なくないからです。

たとえば東京郊外で、次のような中古の賃貸アパートが売りに出されていたとしましょう。

・築25年の木造2階建て。
・1Kの居室が1階と2階にそれぞれ3室ずつ、合計6室。
・賃料は1室4万円。満室になれば、月24万円の収入になる。
・販売価格は3000万円。

この物件の表面利回りは9.6パーセントになりますから、賃貸経営すれば、そこそこ利益の出る物件といえます。

このアパートを、オーバーローン、すなわち手持ちの資金ゼロで購入したとしましょう。すると、どんなことが起きるでしょうか。

オーナー変更時に起こる“新陳代謝”とは?

中古のアパートやマンションのオーナーが変わった場合、しばしば起きるのが「新陳代謝」です。新陳代謝とは、私が勝手に使っている言葉で、古い賃借人が退去していく現象のこと。

賃貸物件のオーナーが変わると、その物件で暮らしていた賃借人たちの生活も、少なからず影響を受けます。賃料の支払い方法が変わるとか、振込先が変更になるとか。ときには、賃料やアパートの名称が変わることもあるし、オーナー変更に合わせて空室が埋まり、隣人の顔ぶれが変わることも。

賃借人のなかには、こうした変化を好ましく思わない人もいるため、オーナーが変わってから数カ月のタイミングで、退去者が続出するケースも少なくありません。この現象を私は「新陳代謝」と呼んでいるわけです。

空室が出たときに必要な費用はどれくらい?

こうした新陳代謝が起きた場合、アパートのオーナーとしては、新規に入居者を募集するためのアクションをただちに起こさなければなりません。

具体的には、空室を魅力的に補修・リフォームすること。費用は1室あたり20〜30万円程度必要です。また、入居者募集のための広告宣伝費も、賃料1カ月分程度かかる可能性があります。つまり、空室が1室出た場合は30〜40万円、2室出た場合は60〜80万円が急きょ必要になるのです。

ところが、手持ちの資金ゼロで賃貸経営を始めると、これらの費用を捻出するのがむずかしくなります。その結果、空室のリフォームも広告も行えず、空室はいつまでも空室のまま、という事態になりかねません。

仮に、その状態が何カ月も続けば、賃貸アパートの経営はいつになっても安定せず、「不動産投資を始めたのに、ちっとも利益が出ない」と嘆くハメに陥ってしまうのです。

自己資金300万円を貯めることができますか?

そこで、年収の少ない人、たとえば年収300万円の人が不動産投資を始める場合にオススメしたいのが、まずは最低300万円の自己資金を用意しておくことです。

自己資金をしっかり貯金しておけば、賃貸アパートを購入した際の「新陳代謝」にも即応でき、空室対策をただちに行うことができます。逆にいえば、300万円以上の自己資金を用意できないのであれば、年収300万円の人は、不動産投資を始めるべきではないと考えます。

年収300万円の人が、300万円貯金することは確かに大変です。しかし、私が相談を受けた人のなかには、月収25万円ながら、毎月10万円ずつ貯金して、30カ月で300万円貯金した人もいます。

では具体的に、300万円貯金がたまったら、どのように不動産投資を始めればいいのでしょうか。

おすすめは小規模な中古アパートを購入すること

年収300万円の人は、残念ながら、民間の金融機関から不動産の購入資金を借りることはむずかしいです。そのかわり、日本政策金融公庫や住宅金融支援機構などの政府系金融機関であれば、不動産購入資金の融資を受けることは可能です。

そこで私のおすすめは、先ほどご紹介したような、東京郊外もしくは地方都市の6室程度の小規模な中古アパートを購入すること。価格の目安は3000万円から3500万円くらいまで。自己資金300万円のうちの半分くらいを頭金に充当し、残りを政府系金融機関からの融資でまかなうのです。先ほども少し述べた通り、このクラスの中古アパートは意外に表面利回りが高く、ときには1億円クラスの物件を買ったときと同程度の利益が出ることもあります。

問題は、築年数の古い中古アパートの場合、オーナーとしてやるべき仕事が増えること。前回の記事でご紹介した、いわゆる「やることリスト」が多くなるのです。

不動産投資初心者=新米オーナーであれば、「やることリスト」の少ない物件のほうが、失敗するリスクは低い。前回、そう説明しました。そして、その条件を満たす物件として、新築RCマンションをおすすめしました。新築であれば、漏水などの不具合が発生しにくく、マンション全体の管理を不動産管理会社に一括して任せやすいからです。

一方、中古の小規模アパートであれば、そろそろ補修のことも考えなければならないし、管理会社に多くは期待できない(儲からない物件だと、管理会社も動いてくれない)ため、オーナー自身やるべきことが多く、手間がかかります。

その点でいえば、確かに初心者向けではないのですが、とはいえ、全体で6室しかなければ、やるべき仕事の量もタカが知れています。「やることリスト」の項目は多いけど、全体の仕事量は少なくてすむのです。

以上見てきたように、年収300万円の人でも、不動産投資を始めることはできます。ただし、失敗しにくい方法を取りたいのであれば、始める前に300万円の自己資金を用意したうえで、オーナーとしてそれなりの手間がかかることを覚悟しておく必要があります。

年収が少ない人でも、その分だけ労力をかければ、不動産投資で利益を出すことは十分に可能なのです。

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この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

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