100円で一戸建てが買える!? いまこそ始めたい空き家投資術
ウチコミ!タイムズ編集部
2016/05/12
築37年の空き家をリノベーション
100万円からの空き家投資術(WAVE出版 定価1400円+税)
——そもそもの空き家との出会いは、ご自宅を購入したときだったとか?
築37年の空き家をリノベーションして暮らし始め、丸5年になります。そろそろ家がほしいなと考えて、東京で戸建を探してみたのですが新築物件は高くて手がでませんでした。そこで、目をつけたのが中古の戸建、しかも空き家でリノベーションが必要という物件であれば、手が届くのではと考えました。リノベーション済み物件も売られていましたが、どうせやるならと思い、自分でリノベーションすることにしたのです。
最初は、SUUMOなどのポータルサイトで探していたのですが見つからず、知り合いの不動産会社に相談したところ紹介してくれました。購入したのは、元は印刷会社の事務所兼住居で、競売にかけられた物件です。落札したのがビル専門の不動産会社だったため、ポータルサイトには情報が出ていなかったんです。
内見してみると、残置物も多く、屋上に出るドアも開けっ放しで雨が吹き込んだままになっているなど、決していい状態ではありませんでした。夫は「本当にここを買うの?」という顔をしていましたが、立地を重視して決めました。
物件価格が約2000万円、リノベーション費用が約1000万円かかりましたが、近辺の新築建売住宅の相場と比較すると、だいたい6〜7割程度の予算に収まっています。金銭的なメリットがいちばん大きかったです。
首都圏でも500万円以下で当たり前に一戸建てが買える!
——ご自身の体験から空き家活用とリノベーションの魅力を積極的に伝えられているんですね
空き家の数は右肩上がりに増え続け、現在、全国に820万戸もあります。そのなかから、いい家を探してリフォーム、リノベーションすれば安く家を手に入れることができますし、まだ使えるものを壊さずに使うわけですから、何よりもエコですよね。
私が家を買った5年前は、リノベーションはまだまだ注目されておらず、施工できる業者さんも少なかったのですが、すっかり空き家再生の魅力にとりつかれてしまい、ブログや雑誌に記事を書いたり、セミナーを開いたりといったことを始めました。特にセミナーは3年間で約100回を開催して、のべ2000人の人に聞いてもらいました。
また、同じように空き家再生をしている人たちへの取材を続けてきました。空き家投資をしている大家さんともたくさん出会い、お聞きした話をもとにまとめたのが今回の本( http://www.amazon.co.jp/dp/4872907833/ )です。
地方には、たった100円で買える一戸建ても!
——取材されていて印象に残ったことはありますか?
実はいま、首都圏でも500万円以下で買える家がゴロゴロしています。東京都大田区で一戸建てをわずか150万円で買った男性や、渋谷区では一戸建てを500万円で買った女性もいます。決して特殊なルートで物件を探し当てたのではなく、誰でも見られるインターネットの不動産サイトで見つけたそうです。彼らは安く手にいれた空き家で、家賃収入を得ているのです。
また、神奈川や埼玉で豪邸ともいえるような立派な一戸建てを、競売のなかでも期間内に買い手がつかなかったときに行なわれる「特別売却」や、持ち主が国税を滞納したために国税局や税務署が差し押さえた不動産などを売却する「公売」といった方法で激安で入手したケースも取材しました。
これは素人ではなかなかマネができない方法だとは思いますが、私も競売サイトや自治体による公売情報などを調べてみました。首都圏でも千葉や茨城なでは一戸建てが100万円以下で出ていましたし、公売でも中央線沿いのマンションが500万円以下で出ているのを見つけることができました。もちろん、安すぎる物件にはそれなりの理由があるのですが、手の打ちようはあるはずです。
東京では競争が激しいですが、地方に行けばもっと格安の家が売られています。たとえば、富山県では一戸建てがたった100円で買える「100円不動産」というサービスがあります。空き家や空き地の定期巡回サービスを行なっている「NPO法人とやまホーム管理サービス」が取り扱っています。
どうしてそんなに安いのかといえば、「いくらでもいいから受け継いでくれる人を探している」という人がいるからです。実際にタダで家をもらえるケースもあり、私の知人で、近畿地方の空き家を1軒、0円で手にいれた投資家がいます。
いざ売ろうとしても値段がつかなかったり、そもそも不動産業者が近くにいなかったりすることで、空き家を抱えて困っているんですね。しかも、2015年に施行された「空き家特別措置法」によって、倒壊の危険がある空き家は、固定資産税が6倍に跳ね上がることになりました。切実な悩みを抱えて、格安でも手放したいと思っている人が少なからずいるのです。
収入が低くても大家になれる!
——空き家投資を始めるにはチャンスといえそうですね。しかも、少ない額で始められることも魅力に感じます。
不動産投資や賃貸経営というと、かつては富裕層や地主さんしかできませんでした。融資を受けてアパートなどの投資物件を手に入れるにしても、その人の返済能力が審査されます。大企業に勤めていて、今後も長く安定した収入があるような人でないと始められませんでした。
ですが、空き家投資の場合は、タダ同然の100円から、首都圏でも500万円以下で物件が手に入ります。100円不動産の場合、建物・土地費用は100円でも、登記費用や補修工事などに費用がかかりますが、それでも100万円あれば人が住める状態にすることができます。たとえ派遣やパート、無職の人で、金融機関からお金を借りられなくても、貯金を使って現金一括払いで始めることができるのです。
パート主婦でありながら、2年間で一戸建てを5軒取得し、月の家賃収入30万円を達成した人、年収290万円のサラリーマンが5年で7物件を取得し、副業の株と家賃収入で年収1000万円を超え、ついにサラリーマン生活を卒業した人もいます。
なかには、空き家の所有者から家を借りて、初期費用をほとんどかけずに空き家投資をしている人もいます。空き家の所有者と直接交渉して預かり、掃除やリフォームをして入居者を見つけます。家賃が入ってきたら、数万円を所有者に支払い、残りが自分の収入になるというやり方です。
ただ、この方法は誰にでもできるというものではなく、本人のキャラクターや交渉術によるところが大きいようです。そのやり方をマネしようとした私の知り合いは、60軒の空き家オーナーを訪ねて、1軒も貸してもらえなかったそうですから。
空き家を有効活用したい人におすすめ
——とはいえ、実際に物件を購入するのは勇気がいると思いますが…。
もちろん、投資ですから当然、リスクが伴います。株やFXといったほかの投資であれば、失敗したら紙切れしか残らないこともあります。それに比べれば、不動産、しかも一戸建ててであれば多少の価格変動はあっても、大きく値崩れする心配は少ないはずです。
また、出口、つまり買った物件を最終的にはどうするのかということもよく聞かれるのですが、空き家投資をしている人たちに聞いてみると、もともとの物件価格が安いので、4〜5年といった短い年数で回収できてしまうケースも多く、回収したあとは更地にして売却してもいいし、ずっと住み続けてもらって最後は無償で譲渡してもいいという人もいます。
とはいえ、先ほども申し上げたように、空き家投資にもリスクはあるので、どんどんやりましょうとすすめているつもりはありません。そういう意味では、私がいちばんおすすめしたいのは、すでに空き家をもっている人。たとえば、実家が空き家になっているのであれば、まずはその実家を賃貸に出せないかということを考えてみてはいかがでしょうか。
日本では江戸時代から続く古民家がいまも大事に使われています。大切なのは、家を大事に使い続けていくことであり、空き家投資はそのための方法の有効な方法のひとつだと考えています。
今回の「この人」は…
高橋 洋子(たかはし ようこ)さん
暮らしのジャーナリスト・ファイナンシャルプランナー
暮らし研究所エメラルド・ホーム代表( http://emeraldhome.sakura.ne.jp/ )
1979年岐阜県生まれ。情報誌の編集、フリーライターを経て現職。空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、お得なマネー情報の研究に目覚め、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。講演・執筆・FP相談を通じて、家探しの基本から中古住宅の価値向上とリノベーションの魅力を伝えている。空き家活用に関するセミナーは3年でのべ2000名が参加し、「わかりやすくて、おもしろい。勇気がもらえる」と幅広い世代から好評を得ている。著書に『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)など。
「100万円からの空き家投資術」
高橋洋子 著
2015年12月刊行
定価 本体 1,400円+税
四六判 並製 224ページ
ISBN 978-4-87290-783-4
WAVE出版
http://www.wave-publishers.co.jp/np/isbn/9784872907834/
この記事を書いた人
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