はっきり言おう! 新築区分マンション投資は儲からない
尾嶋健信
2016/04/06
不動産投資は、物件の種類ごとに6パターンあり
先日、ある不動産投資セミナーに参加した人から、次のようなお話をうかがいました。
「不動産投資セミナーでは、『この物件に投資すれば儲かる』という話ばかり聞かされるけど、自分たちには不動産投資の基礎知識が欠落しているので、その儲け話が本当なのかどうか、判断のしようがありません…」
そこで今回から、そもそも不動産投資にはどのような種類があって、それぞれどんなメリットとデメリットがあるのか、物件ごとに分類しつつ、解説していこうと思います。不動産投資の基礎の基礎として、ご理解いただければ幸いです。
不動産投資を、物件の種類ごとに大まかに分類すると、次の6パターンになります。
(1)区分マンション投資
(2)戸建投資
(3)地方高利回りアパート投資
(4)RCマンション投資
(5)新築アパート投資
(6)競売物件投資
これらのなかで、今回は(1)区分マンション投資についてお話ししましょう。
区分マンションとは?
ここでいう「区分マンション」とは、要するに「マンション1棟丸ごと」ではなく、マンションをいくつか区切ったうえでの1室を「区分所有」しているということ。たとえば、1棟に全20室あるマンションであれば、そのマンションを区分所有している人は最大20人いるわけです。
ときどき、不動産会社から「新築ワンルームマンションを投資用に買いませんか?」などと営業電話がかかってくることがあると思いますが、そういう物件を購入して投資に使えば、まさに「区分マンション投資」に当たります。
とはいえ、区分マンション投資、特に新築の区分マンション投資に関して、私は絶対にオススメしません。なぜなら、メリットよりもデメリットのほうがはるかに大きいからです。
新築区分マンション投資はデメリットが多い
ワンルーム、1LDK、3LDKなどどんな間取りであれ、新築のマンションは、どうしても価格が割高になります。なぜなら、新築マンションの場合、通常の販売価格に加えて、広告宣伝費が乗ってくるから。通常、そのマンションの妥当な販売価格=資産価値よりも、2〜3割高く売られているのが普通です。
ということは、新築マンションは買った瞬間から、実質的な資産価値が十数〜二十数パーセント目減りする計算になります。これが、新築区分マンション投資における、ひとつ目のデメリット。資産のバランスシートでいえば、マンション購入者はいきなり債務超過に陥り、不動産投資家としては、赤字を抱えてスタートしなければなりません。銀行などの金融機関側から見れば、このマンション購入者は「不良」と判断されるため、今後、金融機関から融資を受けにくくなってしまいます。
また、区分マンションの場合、賃貸経営にもあまり向いていません。なぜなら、マンションを1室しか所有していない場合、資産の運用状況はつねに100パーセントか0パーセントかの、両極端にしかならないから。
すなわち、借家人が入居していれば家賃は100パーセント入ってきますが、借家人が出ていった瞬間から、家賃収入はゼロに。賃貸経営として見れば、その経営状況はきわめて不安定であり、リスクヘッジができていないといわわざると得ません。これが、新築区分マンション投資のふたつ目のデメリットです。
3つ目のデメリットは、利益率がきわめて低いこと。たとえば、2000万円の新築ワンルームマンション1室を、1月10万円で借家人に賃貸するとしましょう。もし、その物件をローンで購入したのであれば、毎月のローン返済額を差し引くと、利益は月5万円程度にしかなりません。しかもそこから、毎月の管理費・修繕積立金を支払うと、手元に残るのはせいぜい2〜3万円程、場合によっては数千円ということもあります。つまり、ローンで購入した新築マンションで賃貸経営しようと思っても、儲けはほとんど出ないのです。
新築区分マンション投資の4つ目のデメリットは、不動産投資として見た場合、費用対効果が悪すぎること。これは、マンションを1棟丸ごと購入した場合と比較すれば、すぐわかります。
たとえば、全20室あるマンション1棟を3億円で購入して、不動産投資を行なうとしましょう。たとえ1室当たりの利益が5万円だとしても、20室集まれば月100万円になります。月にこれだけの家賃収入があるのであれば、ときどき現地視察に行ったり、クレーム対応で管理会社と打ち合わせするなど、オーナーとして、それなりに労力をかける意味はあります。
では、マンションの一室しか所有していない場合はどうでしょう。
たとえ1室しか所有していなかったとしても、あなたがオーナーであれば、ときに現地も視察しなければいけないし、借家人や管理会社との折衝も必要になるはず。問題は、月に5万円しか売上げのない出投資物件に対して、それだけの手間と時間と労力をかけられるかどうか、ということ。あまりに、費用対効果が悪すぎるし、場合によっては現地への交通費だけで足が出てしまう可能性も。つまり、区分マンションの賃貸経営は、それだけ割に合わないのです。
一方、新築区分マンション投資の唯一のメリットは、誰にでも物件を購入しやすいこと。区分マンションであれば、販売価格はそれほど高くないし、広告宣伝しているくらいですから、販売情報も誰にでもキャッチできます。つまり、新築区分マンションによる不動産投資は、一般の人でもすぐに始めやすいわけです。
ただし、数々のデメリットを考えれば、初心者は区分マンション投資に手を出すべきではありません。特に、ローンを組んでまで区分マンション投資を行なうのは「ナンセンス」だと断言できます。
狙い目はファミリー向けマンションの転売
とはいえ、区分マンション投資でも、メリットのほうが大きいケースもあります。それは、中古のファミリー物件を安値で買って転売する手法です。
世の中には、2LDKや3LDKといったファミリータイプの分譲マンションが、賃貸経営に使われているケースもあります。たとえば、ファミリー向け分譲マンションのある1室だけ、オーナーが実際にはその部屋に住んでおらず、不動産投資物件として、第三者に賃貸しているようなケースです。
そんな、ファミリータイプの賃貸経営中古物件が、ごくまれに売りに出されていることがあります。そして、そういう物件が売りに出されている場合、一般的な市場価格より、かなり安価で購入できるケースが多いのです。
なぜ、安く購入できるのか。それは、その物件には以前からの入居者がそのまま住み続けている可能性が高いから。日本の法律では、居住権が重視されるため、たとえその一室のオーナーが変わっても、オーナー側の都合で入居者を退去させることはできません。ということは、前のオーナーはそのマンションを、投資用物件として販売せざるを得なくなります。
ここで押さえておきたいポイントは、マンションには「分譲用」と「投資用」の二種類が存在するということ。分譲用は「実需用」とも呼ばれ、オーナー自身がその部屋に住む目的で購入する物件になります。一方、投資用は「仮需用」とも呼ばれ、オーナーはその部屋に住むつもりはなく、最初から賃貸用に購入されます。
こうしたニーズ面での違いから、分譲マンションは投資用マンションに比べてエントランスなど共用部が充実しており、内装・天井高・壁や床の厚さなど、すべてにわたってハイグレードにつくられています。同じ専有面積であれば、分譲用は投資用に比べて、価格も20〜30パーセント高いのが当たり前です。
そこで、先ほどの話に戻りましょう。分譲用の2LDKが投資物件として第三者に貸し出されていた場合、その部屋のオーナーがその物件を売却しようとすると、投資用マンションとしての売値をつけざるを得ません。買う側からすれば、分譲グレードのマンションを20〜30パーセント安く買えることになります。築年数が古ければ、分譲価格より30〜40パーセント以上安く買えることも。
不動産投資のうまみはここにあります。すなわち、グレードの高い分譲中古マンションを市価の3〜4割引で購入しておいて、入居者の退去後、リフォームして市価の1〜2割引きで転売すれば、大きな利益を上げられること。物件の価格にもよりますが、1000万円前後の売却益を得ることもむずかしくありません。事実、こうしたファミリー向け分譲マンションの転売をビジネスとして行なっている、不動産投資会社も存在するくらいです。
ただし、この投資方法にも当然デメリットはあります。それは、こうした物件情報をキャッチするのが、一般の人にはきわめてむずかしいこと。また、以前からの入居者がなかなか退去してくれないというリスクもあります。こうしたマイナス面を考えれば、これは個人投資家向けというより、やはり不動産投資会社向けの投資法ではないでしょうか。
この記事を書いた人
満室経営株式会社 代表取締役
1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。