不動産ローンにはどのような審査があるのか
赤石崇士
2016/02/24
事前審査により時間のロスを防ぐ
不動産投資の資金を借り入れる場合、ローンの申し込みと契約は、物件の売買契約が終了した後になります。ローン申し込みの手順は次の通りです。
(1)事前審査
(2)ローンの申し込み
(3)本審査
(4)融資の内定・契約手続き
(5)抵当権設定
(6)融資の実行
ローンの申し込みは売買契約の後になるので、ローン審査に落ちてしまうと大変な時間のロスになります。そこで、契約前に事前審査を受けておくことで、このロスを防ぎます。ホームページで事前審査を受け付けている金融機関もあるのでチェックしておきましょう。
融資先を不動産会社から紹介してもらうという方法もありますが、金融機関によって融資条件はかなり違うので、自分で複数の金融機関を当たってみることをおすすめします。
必要書類はどんなものがあるのか
またローンを申し込む際には、一般的に以下の書類が必要になります。不動産会社の協力も得て、そろえておきましょう。
●不動産会社にそろえてもらう書類
登記簿謄本/地積測量図/公図/固定資産税評価額がわかるもの/建築確認済証・検査済証(1棟の建物の場合)
●サラリーマンの場合
直近の源泉徴収票(3期分が必要なケースもあります)
本人確認書類
●自営業者の場合
最低3期分の決算書もしくは確定申告書、事業収支計算書
本人確認書類
●ほかに物件を所有している場合
現在保有している物件の収益状況(借り入れ状況も)
本審査から融資の実行まで
書類をすべてそろえたら、いよいよ本審査です。金融機関の審査を通った後には、「金銭消費貸借契約兼抵当権設定契約(ローン契約)」を結ぶことになります。ここで詳細な借り入れ条件を決定し、契約書に盛り込みます。諸費用は金融機関や契約内容により多少前後しますが、仲介手数料なども含めて物件価格の7~10パーセント程度が目安となります。
以下がローン契約の際に必要な諸経費です。
・印紙代
・融資事務手数料
・抵当権の設定登記にかかる費用
・抵当権の設定登記にかかる手数料(司法書士に払う手数料)
・ローン保証料
・団体信用生命保険料
・火災保険料・地震保険料(地震保険は基本的に任意加入)
このなかで、融資事務手数料は融資を受ける金融機関に支払う手数料で、平均的には3万~5万円程度です(金融機関によっては不要な場合もあります)。抵当権は、万が一ローンが払えなくなってしまったときに不動産が没収されるというもので、抵当権の設定登記費用と設定登記手数料(司法書士に依頼)がかかります。
ローン保証料は、返済不可能になったときに備え、保証会社に保証を依頼するために支払う費用で、一括払いや金利に上乗せして支払います。
ここまで準備を整え、物件の引き渡し日までに金融機関から不動産会社に融資金額が振り込まれて官僚となります。
ローン審査を通過するコツはあるのか
融資審査は、物件の収益性と個人の属性(勤務先、家族構成、年収など)や資産状況の両方を見られます。住宅ローンは、物件よりも個人の年収や年齢、借り入れの有無のほうにウエイトが置かれていますが、不動産投資の融資については、物件のウエイトが高くなるため、審査は当然厳しくなります。
とはいえ、金融機関によって審査の基準が異なるので、ある金融機関に断られたからといって、ほかの金融機関でも断られるというものではありません。そのため、複数の金融機関に同時に融資を申し込むことが基本となります。
また、銀行では小規模な店舗のほうが親身に対応してくれる傾向があるようです。小規模店舗では案件自体が少ないので、支店の融資目標達成のため、真剣に取り組んでくれる可能性もあります。
なお、ローンの金利については、交渉することで下がることがあるので、必ず交渉しましょう。資産に関しては価値が変わりやすい有価証券よりも定期預金のほうが高評価です。
この記事を書いた人
公認会計士、税理士
1994年、大阪大学経済学部卒業後、東証1部上場の印刷会社に入社、営業部、経理部に所属。2004年に公認会計士2次試験合格後、監査法人および併設税理士事務所に勤務。09年9月に赤石会計事務所を開業。宅地建物取引士(試験合格)の知識や資産税の知識等を活かし、不動産関連の顧客を多数有する。 近畿税理士会下京支部研修委員を務めるほか、講演、研修も多数行なっている。