不動産に1億円を投資すると月の儲けはいくら?
尾嶋健信
2016/01/27
5年前なら、1億円の投資で月30万円の副収入があったけれど…
これから不動産投資を始めたいという方からよく聞かれる質問に、次のようなものがあります。
「不動産投資に1億円のお金をかけると、月にいくらくらい儲かるのですか?」。
お答えしましょう。
1億円の不動産投資で、儲かるのは月に10〜20万円程度です。
「たったそれだけ?」と驚く人が多いかもしれませんね。そうなんです、たったこれだけです。
5年ほど前だったら、1億円の不動産投資で、月30万円以上の利益が出ていましたが、いまのように景気が上昇局面に入ると、不動産投資は基本的に儲かりにくくなるのです。
その理由は、不動産価格と家賃相場はなかなか連動しないから。平たく言えば、不動産価格が上がったからといって、すぐに家賃を上げられるわけではないということです。
数字を出して具体的に説明しましょう(ここでは、わかりやすさを優先するため、話をかなり単純化して進めます)。
まず、5年前の話をします。
東京のA町に、1室20㎡、賃料8万円×10室のBマンションがありました。このBマンションから得られる家賃収入は、1カ月80万円×12カ月=年間960万円です。
ある不動産投資家が、このマンション1棟を1億円で購入しました。投資家といえども、それだけの現金を一括で払うのはむずかしいので、年利4.5%の銀行ローンを利用しました。
このとき、年間の金利支払い額は1億円×4.5%=450万円です(実際には元金が減れば金利も減ります)。
この場合、金利を支払った後に手元に残るのは、家賃収入960万円−金利450万円=510万円。月額で42万5000円です。
ここから、不動産管理会社に支払う管理費や、将来の修繕に備える積立金、さらには固定資産税などを支払わければならないため、実際の利益は月額30万円ほどになります。
それでも、まあ、月に30万円の純利益が出れば、不動産投資する意味はあるでしょう。
いまは、月10〜20万円の利益が出ればよいほうに
次に、先ほどの例から5年後の「いま」の話をします。
東日本大震災の発生した2011年に比べて、わが国の景気はずいぶん好転しました。デフレ不況から脱しつつあるといっていいでしょう。さらに、2013年9月には東京オリンピック招致が決定。2020年に向けて、首都圏の不動産業界はいま、大いに盛り上がっています。マンションの販売価格もうなぎ上り。東京のA町にある1室20㎡の分譲ワンルームマンションも、300万円以上値上がりしました。
いま、このA町で、1億円で買える不動産物件といえば、1室20㎡×6室の小さなマンションくらい。その一方で、家賃相場は5年前とほとんど変わっていないため、賃料を1室8万円程度にしないと、誰も入居してくれません。
つまり、このマンションから得られる家賃収入は、8万円×6室×12カ月=年間576万円。一方、購入資金1億円を年利4.5%の銀行ローンでまかなった場合、金利支払い額は年間450万円になります。
手元に残るお金は576万円−450万円=年間126万円。月割りにすると12万6000円で、ここから管理費や修繕積立金を拠出すると、赤字になる可能性もあるし、万が一空室でも出れば、赤字に転落するのは確実です。
脱サラ志向が不動産投資を加速させる?
このように、景気が好転して不動産価格が上昇し続けているいま、不動産投資で利益を上げるのはむずかしい状況になっています。にもかかわらず、不動産投資は相変わらず、ブームといってもいいほどの賑わいを見せています。いったいなぜでしょうか。
これは私見ですが、この社会にはそれだけ、「サラリーマンを早く卒業したい」と考えている人が多いのではないでしょうか。
日本経済を支えるビジネスマンのなかには、毎日本当に忙しく働いている人たちがいます。
たとえば私の知り合いに、外資系企業に勤めている営業マンがいますが、彼は連日帰宅が夜10時過ぎ。資格取得のための勉強もしているので、休日もほとんど休みなしです。年収は1000万円を超える高給取りですが、40代半ばを過ぎ、さすがに体のほうがキツくなってきたとか。
そんな彼が最近考えているのが、不動産投資で副収入を得ること。そして、もしそちらのほうで成功したら、サラリーマンを辞めて、賃貸経営で悠々自適の生活を送りたいといいます。
彼のように、外資系企業勤務で年収1000万円を超えるビジネスマンには、銀行も喜んでお金を貸します。おそらく、年収の20倍の2億円までは貸してくれるでしょう。銀行側からすれば、2億円程度の小口融資を数多く実行するほうが、リスクが分散されて好都合なのです。
実は私の知人のほうにも、不動産投資を早く始めたい事情があります。なぜなら、彼の勤める外資系企業では最近、早期希望退職者を募り始めたから。もしかすると、近い将来、彼も退職しなければならなくなるかもしれません。だとすれば、年収1000万円超がキープできているいまのうちに、銀行から融資を受けておいたほうがよさそうです
このように、不動産投資にある種の夢を抱くビジネスマンは跡を絶ちません。かくして、不動産投資セミナーが連日盛況なのは、以前の記事でご報告した通りです。
(参考記事)
無料の不動産投資セミナーに参加してみたら一体どうなるのか?
セミナーに参加する人たちの多くは、不動産投資の現状を知らない「情報弱者」ですが、なかには「利益が出ないのは知っているけど、買えるうちに不動産を買っておきたい」という人もいるのです。
この記事を書いた人
満室経営株式会社 代表取締役
1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。