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失敗を恐れない——。20歳代からチャレンジしてきた不動産投資

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撮影/吉田 達史(Photo Current 66)

元フリーアナウンサーのchisatoさんが、不動産を購⼊し、賃貸経営を始めたのは20歳代のとき。若くして、おカネを⽣み出す仕組みを作ることや投資の⼤切さなどに興味を持ち、現在、太陽光発電、学⽣向け賃貸アパート、サ⾼住のほか、株や仮想通貨などさまざまな投資に積極的に取り組んでいる。しかし、当然、失敗や苦労も経験済み。chisatoさんの投資への道、賃貸経営で学んだこと、今後の展開や⽬標などについて聞いた。(取材・⽂/財部 寛⼦)

⼩さい頃に出会った⼤好きな⼤家さん

——太陽光発電と賃貸経営という⼤きな投資を20歳代から始めていらっしゃいますね。どのようなきっかけがあったのでしょうか。

「⼈⽣、何が起きるか分からない」という思いが以前からありました。そのため、20歳代の中頃にはおカネを⽣み出せる仕組みを常に持っておきたいなと考え始めていたんです。

——20歳代前半からフリーのアナウンサーとしても活躍されていましたよね。

フリーアナウンサーとしての仕事のほかに、空いた時間を有効活⽤しておカネを増やしていく⼒を⾝に付けたいと思っていました。そこで、最初に副業として始めたのがブランド品の販売事業。ある程度の貯⾦が貯まってきたところで、最初の投資案件として出合ったのが太陽光発電でした。


アナウンサー時代のchisatoさん

——それなりの投資⾦額が必要だったと思いますが、迷いや怖さはありませんでしたか。

実は、最初にお話をいただいたときは、踏み出せずにいたんです。しかし、断ってしまったことに少し後悔も感じていて、「後悔するくらいならやってみよう!」と始めたのが2013 年12⽉です。12⽉は売電価格が下がる時期でしたが、その後はびっくりするくらい価格が上がっていきました。毎⽉、通帳を⾒るのが楽しくて、投資に対してもより前向きになっていきました。

——次に始めたのが賃貸経営ですが、なぜ、不動産を投資案件として選んだのですか。

⼟地を紹介されたことから賃貸経営がスタートしましたが、私のなかでは以前から「投資=不動産」という思いがありました。その理由が、⼩さい頃に暮らしていたマンションにあると思うんです。そのマンションには、⾃主管理をする⼤家さんのご⾃宅もありました。⼩学⽣の私は、家のカギをよく忘れて出掛けていて、そのたびに⼤家さんのところに⾏ってカギを開けてもらっていました。そして、いつもお菓⼦をくれるその⼤家さんのことが私は⼤好きでした。だから、漠然と「そんな⼤家さんになってみたいな」という思いがあり、投資をするなら⾃主管理する賃貸経営だと考えていたような気がします。

また、賃貸経営について⼿取り⾜取り教えていただけた先輩⼤家さんが近くにいたこともあり、取り組む前にしっかり勉強することもできました。


chisato/櫻井 知⾥(さくらい ちさと)
2013年に太陽光投資をスタートし、2015年より収益不動産投資を開始。現在は2棟39室の物件を所有し、1棟の⾃主管理を⾏う。元フリーアナウンサーという経験を⽣かし、コミュニケーションに重点を置きながら「⼊居者ファースト」の経営を⼼掛ける。本業では株式会社comiproの代表取締役。感情AI分析システムを開発し企業研修等のトレーニング事業を⾏う。

1棟⽬のアパートでは失敗を経験

——1棟⽬が15年9⽉の⼊居スタート、2LDKが6室の新築⽊造アパートということですが、初めての不動産投資はいかがでしたか。

いろいろな経験をしました。まず、⼊居スタートの時点で⼊居率50%、3⼾が空室の状態でした。その理由のひとつが、賃貸市場の閑散期に⼊居をスタートさせてしまったこと。ローンの開始⽇を11⽉に設定してしまっていたため、空室があるなかでのスタートはかなり焦りました。6⽉くらいから仲介会社を回っていたのですが、閑散期であることに加えて⾃主管理であることも、なかなか紹介してもらえなかった理由だったようです。

——最終的にどのようにして⼊居を決めたのですか。

プラスでADをお⽀払いしたら仲介会社の⽅々が喜んでくれるかなと思い、感謝の気持ちもあったので「⼼ばかりのADをプラスでお⽀払いいたします」と資料に書きました。すると、すぐに内⾒の申し込みが⼊って満室になりました。しかし、その後、私の経験不⾜でご迷惑をかけてしまったんです。⼊居を決めてくれた仲介会社さんから「……で、AD何カ⽉分をいただけますか?」と聞かれて、そのとき初めて「ADって1カ⽉単位で⽀払うの!?」と驚愕(笑)。私が考えていたプラスするADは3000円。⼀般的に、1カ⽉単位での価格設定であることを私は知らなかったんです。そのときは、恥ずかしさと申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

——プラスのADで満室になるということは、⼊居の対象となるお客様はいたわけですね。そのあたりも賃貸業界の課題といえる部分かもしれません。ほかに苦労したことはありましたか。 

初めて新築物件を建てたことで「わー!すごい、すごい!」と舞い上がってしまい、引き渡し前の施主検査でしっかりチェックしていなかったという失敗もしました。⼊居者様が⼊居してから、「傷がある」「クロスが剥がれている」といった報告を受け、あわてて対応することになりました。


現在所有している物件外観

学⽣向け物件はTwitterで募集も

——2棟⽬が、17年3⽉に⼊居をスタートした学⽣向けで9室の1Kアパート。太陽光発電や1棟⽬の購⼊からそれほど期間は空いていませんが、銀⾏からの融資はスムーズに受けることができましたか。

もちろん、融資の交渉は簡単ではありませんでした。しかし、マイナス⾦利の影響もあり、1棟⽬のときに⽐べて銀⾏は融資をしたい状況にあると感じました。ただ、「2棟も⾃主管理ができるのか」ということが気になっていたようで、その点についてはかなり詰められました。

——どのようにして理解してもらいましたか。

まずは実績を⾒せる必要があると考え、⾃分の客付け能⼒をアピールしました。1棟⽬の客付けの失敗も正直に話しつつ、客付けの⽅法、空室の埋め⽅、いかに満室経営を維持できるかといったことをプレゼンし、融資を受けることができました。

——2棟⽬の経営はいかがでしたか。

⼊居スタートは3⽉に設定し、近くに⼤学があるのですぐに満室になりました。施主検査もしっかり⾏い、⼊居者様からのクレームはまったくありませんでした。

——客付けに関してはどうですか。

客付けについてもかなり勉強しました。1棟⽬のときは、30社以上の仲介会社を回りましたが、2棟⽬では、学⽣物件やその地域に強い仲介会社を調べ、最終的に1社に絞り込んでお願いをしました。専任媒介契約をしたわけではありませんが、1 社に絞ったことでうまくいったと思います。

——Twitterでの⼊居募集も⾏ったそうですね。

⼤学名や地域名をキーワードにツイートしました。学⽣さんたちはけっこう検索していたようで、5〜6件のダイレクトメッセージが届きました。そのうち、⼊居が決まった⽅も1⼈いらっしゃいます。

——SNSでの⼊居募集は注意点もありそうですが、⼼掛けたことはありましたか。

まず、私⾃⾝が「怪しそう」と思われないようなツイートをして、丁寧な返信を⼼掛けました。また、私の顔写真をアイコンに使って、安⼼感も与えるようにしました。直接お会いするときには、⼈がたくさんいるようなカフェなどを選び、お互いに安⼼できる空間で会うようにしていました。

⾃主管理における⼊居者との距離感

——本業のお仕事もあるそうですが、どのように⾃主管理と本業を両⽴させていますか。

賃貸経営も7年⽬なので、ポイントは分かってきました。すでに1棟⽬を売却していることもあり、賃貸経営にそれほど時間はとられません。なにか連絡があればその都度対応すればいい状態ですし、共⽤部のお掃除は1〜2週間に1回、私が⾏っています。

——⼊居者とはコミュニケーションをとっていますか。

お掃除をしているとき、顔を会わせれば挨拶をする程度です。学⽣向け物件の⽅ではコロナ禍で騒⾳トラブルもありましたが、こちらがきちんと対応すれば学⽣さんたちは素直に聞いてくれます。ただ、ファミリー向け物件の⽅では、⼊居者様との距離の取り⽅が難しいと感じたことがありました。

——どういうことがありましたか。

30歳代のご夫婦やご家族の⼊居者様が多く、全体的に私よりも年上といった感じです。そのせいか、顔を会わせる機会が増えると、いい距離感を保てなくなってしまって。夜中に電話で相談事をされたり、あるいはちょっとしたことでもクレームをつけてきたり……。私が若い⼤家だったということもあると思いますが、⼊居者様との距離感については考えさせられました。

先を⾒据えた⾼齢者施設が必要

——20年4⽉からはサービス付き⾼齢者向け住宅(以下、サ⾼住)を始めていますね。

約2億円という⼤きな額が動く投資で、サブリースも含めて、管理などすべてがパッケージ化されているタイプで、運用の流れなどかなり下調べをしました。その結果、オーナーと介護事業者が共倒れしないようなスキームが確⽴されており、また、その地域でサ⾼住のような介護系の物件が必要とされていることもあり、事業をスタートしました。

——サ⾼住は⼀度⼊居されると、退去があまりないというイメージがあります。⼊居率はどの程度ですか。

平均すると95%くらいです。ただし、⼊れ替わりは意外と多くあるんですよ。私も退去が少ないことがメリットだと思っていたので、その点については予想外でした。

——退去の理由にはどんなことが挙げられますか。

例えば、サ⾼住の環境が⾃分に合うかどうか、お試しのような気持ちで⼊居される⽅もいます。⼈間関係も含めて、環境が合わなければ退去につながります。また、体調が悪化して⼊院しなければならなくて退去するケースも少なくありません。“サ⾼住は終の棲家”というイメージを持つ⼈も多いかもしれませんが、現実にはそういうわけにはいかないようです。

——今後、サ⾼住はどうなっていくと思いますか。

これから⼗数年は⾼齢者が増えていくフェーズにあります。しかし、その後は減少し、サ⾼住も空室が⽬⽴つようになるかもしれません。先も⾒据えた、本当に有意義な施設が建築されているのか、よく考える必要があるかもしれませんね。

——最後に、今後の⽬標について教えてください。

⾃主管理の賃貸経営は継続していきますし、不動産投資を拡⼤する可能性もあります。その⼀⽅で、私は、「表情」と「⾳声」の感情を同時にAI分析できるシステム『comiproAI』を開発し、AIを活⽤した企業研修や、ウェビナー時の視聴者の集中⼒の可視化、AIの開発受託を本業としています。21年にスタートしたスタートアップ企業ですが、IPOを⽬指しています。不動産投資家の皆さんに弊社の株を買っていただける魅⼒的な事業にしていくこと、これが私の現在の⽬標です。

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この記事を書いた人

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。

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