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築古⼾建ての再⽣は「社会貢献になる投資」 地域再⽣にも寄与していきたい(1/2ページ)

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撮影/吉田 達史(Photo Current 66)

ここ数年、空き家問題が取り沙汰されることが多くなってきた。実際に、朽ちかけた空き家を⽬にすることも増えたのではないだろうか。その⼀⽅で、住宅弱者の問題もよく⽿にする。この2つの問題を解決するひとつの⼿⽴てに“空き家再⽣”がある。税理⼠法⼈に勤務するサラリーマンでもある檮⽊健さんは、ボロボロの⼾建てを購⼊し、きれいな住まいに⽣まれ変わらせ、低家賃で貸し出す⼤家さんのひとりだ。檮⽊さんの賃貸経営にはどのように思いが詰まっているのだろうか。(取材・⽂/財部 寛⼦)

◆◆◆

住まいの再生 清潔で安全が基本

——税理⼠法⼈に勤務しているということですが、⼤家業を始めたきっかけを教えてください。

税務会計の仕事は、永続的に勉強を続けていく必要があり、とても忙しいんですね。仕事⾃体は好きなのですが、⼦どもが⽣まれたときに家族との時間を保つことが難しいと感じるようになりました。そこで、もうひとつ収⼊の柱を作って、なにかあったときや⼦どもとの時間を取れるような余裕のある⽣活を送れるようにしておきたいと考えたのです。


檮⽊ 健(ゆすき けん)
1983年⽣まれ。妻と5歳、3歳の⼦どもの4⼈家族。⾼校卒業後は、⾃ら貯めた学費で⽂化服装学院に進学。卒業と同時に放送⼤学に編⼊。卒業後は、ジョブカウンセラーとして働きながら、⼤原簿記学校で会計を学ぶ。⽂化服装学院や⼤原簿記学校で講師を務めたこともあるなど、多彩な⼈⽣を経験。10年ほど前に現在勤める税理⼠法⼈に就職し、働きながら筑波⼤学⼤学院で税務を学ぶ。家族との時間を⼤切にするために不動産経営を始めたが、困っている⼈を助けたい、地域を再⽣したいといった社会貢献への思いも強い。埼⽟県に⼾建て8棟を所有。

不動産の選択は、税務の仕事で多くのお客様とお会いしてきて導き出されました。というのも、経営者の⽅々を⾒ていると、⾃分で会社を起こすか、不動産経営か、究極的にはその2つのどちらかが⼤きな柱になると捉えることができたんです。前者に関しては、会計法⼈の代表も務めていたため私も経験済み。そうなると、残るは不動産という選択になりました。

——不動産投資のなかでも築古⼾建てを選択したのはなぜですか。

不動産の仕事を始めるまでの2〜3カ⽉は、たくさんの書籍や不動産経営をしている⽅のブログなどを読んだり、さまざまなセミナーに参加しました。そして、最初は区分マンションの購⼊を考えましたが、35年ローンを払ってから⿊字になっていくというようなキャッシュフローは、私が考えている不動産経営とは違う……。築古⼾建てなら、⾃分で体を動かして汗をかきながらやっていくことで、⿊字化も早くなる。その⽅が理想に近いと思ったんです。

また情報収集しているときに、「社会貢献になる投資をやりませんか」という⾔葉を聞いたことも、後押しになりました。

——「社会貢献になる投資」とはどういうことでしょうか。

私が所有している物件は、⼀番新しいものでも1989年築です。⼟地売りしているところに瑕疵担保責任も問わないような古い建物が残っている物件を購⼊することが多くあります。そういった物件を「最低限、清潔で安全に暮らせる住まい」にして、家を借りることが難しいような⽅々にも貸せるようにしているんです。

——困っている⽅に住まいを提供していくということですね。

現在の⽇本には、空き家が約848 万⼾(総務省「平成30年住宅・⼟地統計調査」)あるといわれています。税務の仕事をしていると、相続の問題も⽬の当たりにします。独⽴した⼦どもは⾃分の家を構え、親が亡くなって家主がいなくなった実家が放置される̶  、まるでゴミ屋敷のようになっているケースも増えています。その⼀⽅で、家を借りたくても借りられないという⽅もいます。そこで、空き家を安く現⾦で購⼊させてもらうことで相続問題の早期解決につながり、再⽣して困っている⽅に貸し出すことができる。さらに、汚い空き家がきれいになることでご近所の⽅々にも喜ばれるんです。

⼤量のゴミを⾃ら撤去して得た知識

——最初に購⼊したのは、どのような物件だったのでしょうか。

2019年5⽉に埼⽟県坂戸市⻄坂⼾の物件を購⼊しました。駅から徒歩約25分、築45年ほどの⼾建てです。

物件価格が110万円、諸費⽤が20万円、リフォーム費⽤が200万円。当時はリフォームのことをよく分かっていなかったので、少し⾼くかかったように思います。家賃は5万8000円で、利回りは20%を超えています。

——ボロボロの⼾建てということで、苦労はありませんでしたか。

もちろん、⼤変でした。物件があまりにもひどく、不動産屋さんもリフォーム業者さんも室内に⼊ってくれない状態でした。⾃分で掃除をしているときには、「買わない⽅がよかったかも……」と泣きそうになったこともありました。

——そんな状態の⼾建てをどのように再⽣していったのですか。

まずは、外壁にびっしりと⽣えていた“ツタ”を⾃分で引き剥がすことから始めました。シルバー⼈材センターからも⼈を派遣してもらい、剥がしたツタは3トントラックにどんどん積んで、ゴミ処理場に持って⾏く。それを2〜3 往復したらこざっぱりと⽚付いたんです。室内のゴミもある程度⽚付けると、業者さんたちも中に⼊ってくれるようになりました(笑)。


購入当初。ツタの生い茂った外観

——室内はどのような状態でしたか。

前の住⼈がペットを飼育していたようで、ネコ砂や糞尿、庭には⽝⽤の⼤きな檻などが残っていました。ゴミや残置物もたくさんあって、正直⽚付けるのはかなり⼤変でした。しかし、この経験はその後の⼤家業に⼤いに役⽴っています。リフォームや⽚付けを業者さんにお願いする際、その⼈⼯や時間、⾦額の⽬安が分かるようになったからです。


大量のゴミや残置物も自分の手で片付けきれいな室内に
before(左)after(右)

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この記事を書いた人

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