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サラリーマンと⼤家業̶ 二⾜のわらじを履き、楽しむ⼈⽣

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撮影/吉田 達史(Photo Current 66)

昨今、副業を認める企業も増えつつあり、不動産投資を視野に⼊れるサラリーパーソンは多いのではないだろうか。その⼀⽅で、気軽に始めた「サラリーマン⼤家」の失敗や挫折などネガティブな話題も少なくない。兼業であろうが専業であろうが、賃貸経営という事業を⾏っていることは忘れてはならないというわけだ。そんななか、薬剤師の天野弘章さんと保険会社勤務の篠洋平さんは、本職と賃貸経営の兼業をうまくこなし、⼈⽣を楽しんでいる。2⼈で「あまちゃん会」という⼤家の会も⽴ち上げた。サラリーマン⼤家として賃貸経営を始める際の⼼構えや兼業のポイント、あまちゃん会の魅⼒などを語ってもらう。

◆◆◆

2⼈から130⼈に ⼤家の会を楽しむ

——2⼈で⽴ち上げた⼤家の「あまちゃん会」とはどのような会ですか。

天野弘章さん(以下、天野):僕たちのようなサラリーマン⼤家さんが多く参加しています。しかし、これから不動産投資を始めたい⽅、不動産会社や不動産に関わる会社の⽅、どんな⽅でも参加できる気軽な会です。会員になるには、LINEのグループに登録するだけ。会費も余計な制約もありません。とにかく“楽しむこと”、これがあまちゃん会です。


天野 弘章(あまの ひろあき)/1975年⽣まれ。妻と13歳、10歳、8歳の3⼈の⼦どもの5⼈家族。趣味はサーフィン。薬剤師の仕事では、責任者として店舗を任されたり、薬局の社⻑の経験も持つ。所有物件はアパート2棟15⼾とレンタルスペース2室。あまちゃん会では⾃分は何もしていないというが、「いつも会のお店を探してくれる“隊⻑”に感謝している」「妻の誕⽣⽇には毎年バラの花束をプレゼントしている」などと話すように、⼈を⼤切にし、⼈からも愛されている。

——2⼈はどのような経緯で出会ったのですか。

篠洋平さん(以下、篠):初めて出会ったのが、2017年2⽉に参加した千葉⼤家の会のセミナーです。セミナー後の懇親会でたまたま席が向い合わせでした。話をしていると、2⼈の共通点が多くてかなり盛り上がりました。さっそく翌⽉に会う約束をしたことがあまちゃん会の始まりです。あまちゃん会として最初に2⼈で決めたことは、「毎⽉最終⾦曜⽇に飲むこと」。最初のあまちゃん会は2⼈でしたが、翌⽉には1⼈増えていました。現在ではLINEグループも130⼈を超え、毎⽉⾏うあまちゃん会には、20⼈くらいが集まるようになりました。


篠 洋平(しの ようへい)/1978年⽣まれ。妻と10歳、5歳の2⼈の⼦どもの4⼈家族。趣味はバンド活動・ドラム。現在は保険会社に勤務。所有物件は、マンション1棟、アパート5棟、⼾建て3⼾。ファイナンシャルプランナーのほか、宅地建物取引⼠、賃貸不動産経営管理⼠の資格を持つ。講演実績も多数あり、不動産の知識は豊富。物件のDIYやホームステージングなどを、仲間たちと⼀緒にワイワイやるのが最⾼に楽しいと語る。

——「あまちゃん」「しのちゃん」と呼び合っていますが、お互いにどのような印象を持っていますか。

天野:しのちゃんは、不動産に関してかなり“熱い⼈”です。不動産歴も僕より⻑い分、苦労も経験していますし、知識も豊富。僕の“憧れの⼈”です(笑)。

:あまちゃんは、⼈に好かれる能⼒というか、⼈を引き寄せるオーラを持っています。初めて会ったとき、私も惹き寄せられました(笑)。実際、あまちゃん会にこれだけたくさんの仲間が集まったのも、あまちゃんの⼈を惹き寄せるオーラがあったからなんだと思います。
天野:ちなみに、「あまちゃん会」はしのちゃんが命名しました。「しのちゃん会」という案もあったのですが、「しのちゃん」ってかわいい⼥の⼦の名前みたいだから、男性会員さんが奥さんたちによからぬ疑いをかけられても困るんじゃないかと……。それで「あまちゃん会」になったんです(笑)。

——飲み会以外にはどのような活動をしていますか。

:旅⾏やゴルフなどみんなそれぞれに楽しんでいますが、現場でDIY やホームステージングの体験会などもしています。リフォームが得意なメンバーや知識がある⽅もたくさんいますし、⾃分たちが所有する物件を使っているので、無料で体験する場を提供できています。何かしら集まる理由を作ってみんなで楽しんでいます。

専業⼤家ではなくサラリーマン⼤家

——2⼈は、どのような経緯で賃貸経営を始めたのですか。

天野:僕は⼤学卒業後、薬剤師として会社に就職しました。30歳のときに『⾦持ち⽗さん貧乏⽗さん』(ロバート・キヨサキ著/筑摩書房刊)や『お⾦持ちになれる⻩⾦の⽻根の拾い⽅―知的⼈⽣設計⼊⾨』(橘玲著/幻冬舎刊)などの本を読んだことがひとつのきっかけです。 

⼀⽅で、薬局の社⻑業時代に銀⾏とやりとりする業務もあり、そのときに個⼈的な融資の話も聞き、不動産のことが視野に⼊ってきました。その後、不動産や⾃⼰啓発、中国古典などさまざまな本を読み、41歳のときに1棟⽬である新築アパートを建てました。新築からスタートした理由は、当時は中古も新築も利回りがあまり変わらなかったことや、トラブルが少ない新築物件の⽅が兼業である⾃分にとってはいいスタートだろうと判断したからです。

:私は⼤学卒業後、⼤⼿電機メーカーに就職しました。収⼊は安定していましたが、仕事にあまりやりがいを感じていませんでした。そんな頃に⽬覚めたのが株式投資でした。そこから株式や経済の勉強を始めたのですが、⾦融の世界がとてもおもしろくハマってしまい、ファイナンシャルプランナーの資格を取得しました。そういったこともあって、その後、証券会社に転職しましたが、今度は収⼊のアップダウンがとても激しい世界で……。安定しない収⼊に不安を抱えながら、⾏き着いたのが不動産でした。私も27歳のとき、『⾦持ち⽗さん貧乏⽗さん』を読みましたね。その後、今の保険会社に転職して働きながら、コツコツ勉強と貯⾦を続け、最初に不動産を買ったのが36歳のとき。ボロ⼾建てを200万円で購⼊して賃貸経営をスタートしました。

——天野さんが賃貸経営を始めて5年、篠さんは7年。専業ではなく、なぜサラリーマン⼤家として経営を続けているのですか。

:不動産に興味を持った初期は、物件をたくさん増やして、アーリーリタイアしたいと考えていました。しかし賃貸経営は、物件購⼊や空室対策に少々労働⼒を投⼊する必要がありますが、⼀度⼊居者が決まると、しばらくは労働⼒投⼊が不要になるので、サラリーマンをやりながらでも⼗分に運営できることに気が付きました。また、兼業にすることで、精神的、⾦銭的な余裕も⽣まれます。サラリーマンという社会的信⽤を活⽤することもできますし、本業やファイナンシャルプランナーの知識を不動産に⽣かせることもあります。ですから、今すぐにはサラリーマンを辞める必要はないと考えています。

天野:薬剤師の仕事にも楽しい部分があるんですよ。賃貸経営では、⼊居者様から直接感謝の気持ちを伝えられることはなかなかありませんが、薬剤師は患者様に「ありがとう」と⾔われることがあります。単純なことかもしれないのですが、やっぱりうれしいんですよね。ですがこれからの時代、終⾝雇⽤という考えは崩壊していくでしょう。いくら国家資格を持っていても⽣涯安泰とはいえません。薬局の数も減少していますし、機械化も進んでいます。サラリーマンをやりながら、⾃分⾃⾝でも何か動いていく必要があると考えているんです。

賃貸経営に⼤切な勉強と仲間

——失敗した経験はありますか。

天野:賃貸経営をスタートして2年が経ったとき、15⼾中7⼾が⼀気に退去してしまいました。初めての経験だったので、そのときの⼊居付けには苦労しましたね。管理会社との関係作りの重要性を実感しました。いまでは、⼊居付けを頑張ってくれた管理会社の⽅にお礼を差し上げたり、毎年、お中元・お歳暮として“カタログギフト”を⼊居者様にプレゼントしたりして、⾃分なりに感謝の気持ちを伝えています。

:⼀番⼤変だったのが、4年ぐらい前に7棟⽬として購⼊したアパートです。複数棟購⼊し運営しているなかで、賃貸経営にも⾃信が付いてきて調⼦に乗っていたのだと思います。いつもなら購⼊前に慎重になる“リスク確認”に対して⽢くなっていました。そのとき購⼊したアパートには、家賃を滞納している⼥性⼊居者がいたのです。しかも、家賃保証会社に未加⼊で、連帯保証⼈は別居している元夫。部屋のなかはゴミ屋敷。弁護⼠さんに裁判をお願いし、明け渡しの強制執⾏もして、家賃滞納から解決までに1年くらいかかりました。退去後もゴミ屋敷のリフォームをして、最終的に総額約200万円の費⽤を私⾃⾝で負担することになってしまいましたが、いい勉強をしたと今は思っています。なかなか⾒ることができない強制執⾏の現場も、有給休暇を取って⾒に⾏ったりしました(笑)。

——サラリーマン⼤家として賃貸経営を始める注意点や⼼構えなどを教えてください。

:私が最初に苦労したのは時間の管理です。賃貸経営を始めた頃は、⼦どもがまだ⼩さく、いい物件を
紹介してもらえるような⼈脈もありませんでした。そのため平⽇は「サラリーマン」、⼟曜⽇を「家族サービスデー」、⽇曜⽇を「不動産デー」と決め、⽇曜⽇に集中して物件探しなどをしていました。今は、⼤家仲間や不動産会社との⼈脈がしっかりできたので、その点は楽になりました。また、賃貸経営を始める前は本を300 冊くらい読みましたね。あまり勉強をしないで賃貸経営を始める⽅もいらっしゃいますが、やはり勉強はとても⼤切だと思います。いざ賃貸経営をスタートするときには、どういった物件を購⼊したいのか、⾃分なりの明確な購⼊基準が必要になると思いますが、勉強することで、そのブレない軸が⾃分⾃⾝のなかでしっかりできると思います。

天野:⼤家仲間って必要ですよね。物件を購⼊するときには、不動産会社からたくさんの資料が届きますが、1⼈で⾒ていてもよく分からないことが多いんです。そんなときに相談できる仲間がいると⼼強いと思います。僕にとってはしのちゃんですが……(笑)。

50歳までに⽬標達成 社会貢献も視野に

——賃貸経営のおもしろさはどんなところにありますか。

:やはり満室になったとき、最⾼に達成感がありますね。私は満室の状態で新年を迎えるというのを毎年の⽬標にしています。賃貸経営のおもしろさは、空室を埋める⽅法など、⾃分で仮説や戦略を⽴てて実⾏できるところです。その戦略がピタッとハマる瞬間を味わえるのが賃貸経営の醍醐味ですね。

天野:僕も同じで、⾃分で考えてやったことが結果として出ることはおもしろい。レンタルスペースも経営しているのですが、スペースが埋まらないときには、料⾦体系を変えるべきなのか、設備を整えるべきなのかなど考えることが楽しいですし、問題が解決したときには本当にうれしいなと思います。

——今後、あまちゃん会での新たな活動を考えていますか。

:あまちゃん会は今年で5年⽬に⼊るため、5周年パーティーを企画しています。それから、DIYやホームステージングの体験会、ミニセミナーなどを定期的に開催したいと考えています。また、リアルでの飲み会はもちろん、遠方の会員さんもいるのでオンラインでの飲み会も定期的に開催して、みんながホッとできて、楽しめる場を作っていきたいと思っています。
天野:とにかく楽しんでもらうこと。毎回僕たち2⼈が⼀番楽しんでいると思うので……(笑)。いつも僕たちを助けてくれ、感謝してもしきれない仲間がたくさんいるので、そんな皆さんに僕たち以上に楽しんでもらいたいと思います。

——今後の⽬標を教えてください。

:7年後の50歳を⽬途に物件を増やしていって、⽬標の家賃年収を達成したいと考えています。その後は、全国の⼤家さんの会を回ったり、仲間と物件訪問やDIY、ホームステージングの体験会を開催したり、とにかく時間に縛られず、仲間たちと楽しく賃貸経営を続けていければいいなと思っています。

天野:不動産とは関係ないのですが、恵まれない⼦どもたちを⽀援するプロジェクトを⽴ち上げたいという⽬標を持っています。不動産がきっかけで集まったあまちゃん会の仲間ですが、みんなが同じ⽅向を向いているからこそ、こういった社会貢献もみんなで実現できると信じています。

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この記事を書いた人

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