賃貸経営における永遠のテーマ「空室対策」――不動産会社からの問い合わせ対応
廣田 裕司
2022/01/19
イメージ/©️sheeler・123RF
皆さんこんにちは。大家兼不動産屋の廣田裕司です。
1月に入り、いよいよ繁忙期が始まります。繁忙期が始まると、不動産屋さんからの問い合わせが多くなると思います。問い合わせのなかには、入居者募集に影響があるものがあります。そこで今回は、不動産屋さんからの問い合わせへの対応について書いていきます。
即答する
繁忙期に限ったことではありませんが、不動産屋さんから、家賃の減額や入居条件など、さまざまな内容の問い合わせがあります。このような問い合わせに対して即答することが重要です。即答すると言っても、すべてのことに「YES」と言えということではなく、結論を出すということです。
不動産屋さんが問い合わせをしてくるときは、お部屋を探しているお客さまが目の前に居ることが多くあります。問い合わせに対して回答が遅くなると、お客さまがあなたの物件を検討候補から外してしまい、入居者さんを確保する機会を失うことになります。
問い合わせのたびに、「回答は明日まで待って」と先延ばしにすると、不動産屋さんから、“回答に時間がかかる大家さん”と判断され、問い合わせすらしてもらえなくなります。
すべての問い合わせに対して即答することは困難ですが、即答するためには問い合わせの内容を想定し、許容範囲を事前に考えておくことが大切です。
どんな問い合わせが想定されるのか
不動産屋さんからの問い合わせは、物件の空室状況(募集中かどうか)のほかに、入居申し込みを前提に家賃の減額や契約条件などの条件の緩和を交渉する内容などがあり、このような問い合わせは、条件が緩和されれば入居申し込みをしてもらえる可能性が高くなるので、急ぎの対応が重要になります。
入居申し込みを前提にした問い合わせの内容は、家賃に関すること、契約に関すること、入居者さんの属性に関すること、物件の使用に関することなどに分類されると思います。
ここから、いくつかの想定される問い合わせの内容について書いていきます。
家賃の減額
家賃の減額は収益に直結するので、慎重に検討したいところですが、事前に許容範囲を決めておけば即答が可能になります。また、あらかじめ管理会社に許容範囲を伝えておけば、問い合わせでかかる時間を減らすこともできます。
家賃減額の問い合わせが同じ物件で何度もあるような場合は、募集家賃の設定の見直しをする必要があると考えられます。
最近は、敷金・礼金なしの物件も増えているので、敷金・礼金などの初期費用に関する交渉も増えています。初期費用に関しても家賃同様、許容範囲を検討しておきましょう。敷金はなしにする代わりに、退去時のルームクリーニング費を徴収するという提案もいいと思います。
家賃の発生時期
契約条件に関する問い合わせで、「家賃の発生時期を調整してほしい」というものがあります。
大学生の場合、2月の合格発表と同時に物件を探しますが、実際に住み始めるのは、3月下旬なので、「家賃発生を3月下旬からにしてほしい」と要望されることがあります。
このような要望に対しては、契約は2月中に締結し、契約後、住み始める3月下旬まではフリーレント(家賃を免除)という対応策が考えられます。フリーレントで収入が減少しますが、入居者さんを早期に確保できるメリットがあると思います。
連帯保証人・保証会社
民法改正により、個人の連帯保証人に極度額の設定が義務付けられたことも影響していると思いますが、連帯保証人を立てられない人が増えています。保証会社を利用してもらう対応が一般的です。最近は、連帯保証人は不要で、保証会社を利用することを必須とする物件も増えています。
逆に保証会社への費用が発生することを理由に、保証会社の利用に難色を示す入居者さんもいらっしゃいます。このような入居者さんには、思い切って入居をお断りすることもありだと思います。
連帯保証人、保証会社は、家賃の回収を担保するために重要です。敷金も含め慎重に検討したい事項です。
高齢者の入居
高齢者を受け入れたときのリスクを懸念し、断る大家さんや管理会社が多いようです。しかし、少子高齢化の状況を考慮すると、今後、高齢の入居者さんが増加していくものと考えられます。
高齢者の入居に伴うリスクと対処方法を下表にまとめてみました。
最近は、高齢者の住宅確保を円滑に進められる方策として、国土交通省より「残置物の処理等に関するモデル契約条項」がだされています。
高齢者は、比較的人気のない1階の部屋を希望されますし、築古、3点ユニットをあまり気にされません。高齢者の入居を許容することで入居促進につながります。
ルームシェア
ルームシェアは海外では一般的なようですが、日本では、ルームシェアを受け入れている物件が少なく一般的ではありません。しかし、ルームシェアを希望している入居者さんは一定数存在します。ルームシェアを受け入れることは、入居促進につながると思います。
ルームシェアは、家賃を複数人のルームメイトで負担するため、入居者同士のトラブルで退去者が出た場合、残された人の家賃の負担が増え滞納の可能性が高くなります。
滞納のトラブルを避けるため、賃貸契約を締結するときに注意が必要です。ルームシェアを受け入れた場合は、定期借家契約を採用するといいと思います。
事務所・店舗・倉庫利用
居住用の物件を、事務所、店舗、倉庫など、住居以外の目的で借りたいという問い合わせがあります。居住用の物件に、事務所、店舗、倉庫が混在したときに、人の出入りの頻度など、そのほかの入居者さんへの影響を考慮して受け入れを検討します。
居住用の物件を住居以外の目的で借りたい人は、個人事業主や小規模な事業者が多いので、与信面での不安があります。保証会社を必須とするなどの対策も必要だと思います。
まとめ
不動産屋さんからの問い合わせに対して回答が遅れると、入居者確保の機会損失になる可能性があります。問い合わせに対してすべて許容することではなく、早く、結論を伝えることが重要です。
今回は、不動産屋さんからの問い合わせとして想定されるいくつかの事例を書いてきました。問い合わせに対して即答するためには、問い合わせ内容を想定し、事前に検討しておくことが有効だと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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この記事を書いた人
「合同会社アップ」代表 「行動する大家さんの会」代表
妻の実家の賃貸事業を引き継ぎ、賃貸経営に関わるようになる。サラリーマン時代の経験を活かし、原状回復費の低減、稼働率アップに成功。賃貸経営での経験をベースにセミナー講師としても活動。2014年大家仲間と一緒に、管理会社「みまもルーム」設立に参加。大家さんとしての経験、不動産業者としての経験を活かし、大家さんの賃貸経営をサポートする会社「合同会社アップ」を設立。大家さんのサポート活動を展開中。