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波乱も? 「賃貸不動産経営管理士試験」の結果発表 賃貸住宅オーナーも受験を

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イメージ/©︎antonioguillem・123RF

マン管も大きく超え、一躍人気資格に

1月7日、昨年11月に行われた「令和3年度賃貸不動産経営管理士試験」の結果が公表されている。今回の試験は、同資格が国家資格に移行してから初の実施となったものだ。以下のような内容となっている。

試験実施日:令和3年(2021)11月21日(日)
試験会場:北海道~沖縄にわたる全国25箇所
受験者数:3万2459人(前年度2万7338人)
対前年度増減率:18.7%
合格者数:1万240人
合格率:31.5%(前年度29.8%)
合格者平均年齢:42.0歳
最年少合格者年齢:18歳
最高齢合格者年齢:85歳

なお、令和3年度マンション管理士試験の受験者数は1万2520人、令和3年度管理業務主任者試験の受験者数は1万6538人、さらに令和3年度行政書士試験の受験者数は4万7870人となっている。今回3万2千人以上が挑んだ賃貸不動産経営管理士は、いまや堂々たる人気資格試験のひとつといっていい。

試験問題は難しくなった?

今回の数字を含め、合格率を過去にさかのぼって掲げてみよう。

令和3年度(2021) 31.5%(今回)
令和2年度(2020) 29.8%
令和元年度(2019) 36.8%
平成30年度(2018) 50.7%
平成29年度(2017) 48.3%
平成28年度(2016) 55.9%
平成27年度(2015) 54.6%

ご覧のとおり、前々回の令和元年度試験より合格率が急に下がっていることが判る。これは、賃貸不動産経営管理士の国家資格化がいよいよ目前となり、それに合わせて難度が一段上がったためだ。

とはいえ、続く前回・令和2年度および今回3年度の合格率は、29.8%から31.5%へと、さほど変わらない推移となった。実際に試験問題を見ても、国家資格化後初の出題であるからといって、今回分が前回分に増して特段難しくなった印象は感じられない、といったところだ。

波乱発生! プロの予想は軒並み外れる

ただし、若干の波乱が今回は起きている。それは、合格ラインの急な上昇だ。50問中40問以上の正解、すなわち40点以上が今回の合格点となっている。

これは、大方の予想を大きく超えた数字だ。なぜなら、同じ50問が出題された前回・令和2年度の合格点は34点以上だった(なお、前々回・令和元年度までの設問数は40問)。その差は6点(問)で、かなりの開きといっていい。そのため、試験分野を満遍なく学習して全体を押さえることをせず、いわゆる「捨て問」をこしらえたまま受験した人の中には、現在、ほぞをかむ思いでいる人がおそらく多いことだろう。

なお、プロもこれについては軒並み予測を外した。多くの資格試験予備校が、今回の合格ラインを36点前後と見ていた。なので、これらの数字を横目に自己採点の結果が40点に迫っていることで安心していた人もまた、いまは複雑な気持ちだろう。あとほんの一歩だったということで、次回はぜひとも目標をゲットしてほしい。

次の試験は難しくなる?

想像するに(あくまで想像だ)、今回の試験では、合格者輩出目標が事前に1万人程度におかれていたところ、国家資格化後初の試験ということで、多くの受験者が気合を入れて勉強し、高得点を獲得。その結果が、上記の波乱に繋がったようにも思われる。

また、さらに想像を重ねると、今回も実際には前回と同様35点前後が合格ラインとなるよう、試験問題自体は設計・構成されていたのかもしれない。

つまり、そのように「合格者約1万人・合格ライン35点前後」が、本来の理想であったとの推測に立つうえでの話だが、仮にこれを次回も目指すとすれば、令和4年度試験は今回よりも若干難しくなるかもしれない。難度が一段上がる可能性を予測しておくのがよいといったところだろう。

と、いうよりも、合格のためにはそう決めて臨んでおくのがそもそもおススメだ。

賃貸住宅オーナーも、入居者も、ぜひ受験を

賃貸不動産経営管理士試験は、誰でも受けられる受験しやすい試験だ。年齢や性別、学歴等の制約はない。なおかつ、文中幾度もふれたとおり、これに合格したことで得られる資格は国家資格となった。民間資格だった前回試験までと比べ、価値も大きく上がっている(賃貸不動産経営管理士として業務を行うためには別途資格登録が必要)。

そのうえで、この試験に挑戦する人は多くが賃貸住宅管理会社のスタッフなど、不動産関係者と思われるが、彼らに並んでぜひおススメしたいのが、大家さん、すなわち賃貸住宅オーナーの受験だ。

賃貸不動産経営管理士試験合格を目指すための勉強をすると、オーナーは「強く」「賢く」なれる。法律や制度を中心に、管理会社や仲介会社と対等に話し合うための知識が広く身につけられる。これは「彼らと対峙せよ」ということではない。パートナーとして協力し合うにおいて、両者が同じベースに立つことは、非常に有効かつ好ましいということだ。

さらには、賃貸住宅に暮らす入居者の皆さんも、よければぜひ挑戦してみてほしい。賃貸住宅に住む人がおかれている法律上の立場や権利などが、受験勉強によってよく理解できる。オーナー同様、入居者として「強く」「賢く」なれるわけだ。若い人など、将来の進路によっては、長く役立つ知識や立場を身につけられることにもなるだろう。

次回・令和4年度賃貸不動産経営管理士試験の実施要領は、間もなく「一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会」のウェブサイトにて発表されるはずだ。時期は3月か4月になると思われる。 

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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