北海道の住宅事情とは――道民ライターが物件の特徴6つを解説
田中 あさみ
2021/11/09
イメージ/©️takkemei・123RF
北海道の賃貸物件を購入したい賃貸住宅オーナー、北海道に移住予定の人は住宅事情が気になることでしょう。北海道は札幌市を中心に賃貸住宅に住む人が多く、人口密度が低いため部屋の広さが全国1位です。寒冷地のため二重窓が多い、建物の断熱性が高いという特徴もあります。「雪かきで近隣の住民とトラブルになった」という雪国ならではの実情も存在します。本記事では北海道出身・在住ライターが、北海道の住宅事情と物件の特徴6つを解説していきます。
賃貸住宅に住む人が多く、持ち家率は低め
北海道庁のホームページによると、北海道の人口は東京都の約4分の1である538万1733人で、日本の総人口の約4.2%となっています。
一方で人口密度は69人/km2と全国(341人/km2)の約5分の1となっており、都道府県別では最も低い数値です。2018年総務省統計局が公表した「都道府県別でみる住宅状況~住宅及び世帯に関する基本集計」の結果によると、借家1住宅当たりの居住する部屋の広さは20.73畳と全国1位となっています。
基本的に賃貸住宅は、大きな都市を有する都道府県で多く見られます。北海道には政令指定都市の札幌市があり、人口は約190万人で東京や大阪に続き全国で5位となっています。
北海道の約4割の人口を札幌市が占めており、道内では年々札幌市への人口流入が増加傾向になっています。
出典/国土交通省 北海道開発局「国道5号 創成川通 第1回参考資料」を基に編集部で作成
持ち家住宅率は56.3%であり、全国で5番目に低い結果となっています。北海道は「札幌市に仕事や学校が集中し人口が増えた結果、賃貸住宅が多くなり持ち家率が低い」という住宅事情があるのです。
【北海道の住宅事情】
●賃貸住宅の部屋の広さが全国で1位
●賃貸住宅に住む人が多く、持ち家率は低い
●人口の約4割が札幌市に集中した結果、賃貸住宅の居住率が高くなった
札幌市のベッドタウンの地価が急上昇
土地取引の目安となる都道府県地価調査(2021年9月公表)において、北海道では札幌市の近隣にある北広島市や恵庭市など、ベッドタウンの地価が15~19%程上昇していることが分かりました。
全国の住宅地・地価変動率トップ10のうち2~4位が北広島市であり、北広島市共栄町4丁目では19.2%地価が上昇。5~10位も石狩市・恵庭市など札幌市周辺のエリアが上位を占めています。
北広島市の地価上昇は、プロ野球チーム・北海道日本ハムファイターズが、北広島市に新球場を建設・移転することが要因と考えられます。
加えて札幌市の地価が上昇したため、札幌市より地価が低く近隣にある恵庭市や石狩市などベッドタウンの地価も上昇しました。
北海道の物件ならではの特徴6つとは
「北海道ならでは」の物件の特徴6つを、筆者の体験談と合わせてお伝えしていきたいと思います。
1.家賃が安い
北海道の賃貸住宅の家賃(18年の借家の1カ月当たり家賃・間代)は、平均4万1715円です。全国平均では5万5695円となっていますので、1カ月で約1万4000円安いという計算になります。
JRと地下鉄の駅がある札幌市中央区や札幌駅付近では、築30年以上の木造・ワンルームという条件であれば2万円台から賃貸が可能。さらに、木造で築30年以上の物件は敷金・礼金がゼロである「ゼロゼロ物件」が多く、引っ越し費用を多く準備できない方に適していると言えるでしょう。
多くの物件は敷金・礼金が家賃1カ月分程度で、礼金がない所もあります。オーナーからみると、客付けの難しい物件は敷金・礼金を下げざるを得ないという状況が垣間見えます。
また北海道は、三世代同居割合・平均世帯人員数が全国平均より低く、生涯未婚率も全国平均と同様に増加していることから、単身世帯・二人世帯など少人数の世帯が増加すると見込まれています。
2.二重窓が基本
寒冷地ならではの特色として、既存の窓に加えてサッシ・窓を取り付ける「二重窓」や「複層ガラス窓」があります。北海道は二重以上のサッシ又は複層ガラスの窓がある住宅が79.6%と全国で最も高くなっています。2月には札幌市でも最高気温がマイナスという日も多い事から、二重窓は必須と言えるでしょう。
ただし、北海道内でも道南と道北では気温や雪の量が大きく異なりますので、「地域差が大きい」という点に注意しましょう。
出典/総務省統計局「都道府県別でみる住宅状況~住宅及び世帯に関する基本集計(確報値)より~」を基に編集部で作成
3.断熱の重要性
北海道の住宅は、上記の通り「寒さ対策」が重要なポイントとなりますので、多くの建物には断熱材が使用されています。
建物の断熱には、断熱材を外壁に入れる「外断熱」と、柱の間に断熱材を入れる「内断熱」がありますが、北海道を拠点とするハウスメーカーでは外断熱と内断熱のW断熱で 、独自の工法をアピールポイントとしており、北海道での断熱の重要性が表れています。住宅を選ぶとき、建設する際には「断熱」にも注意してみましょう。
4.“雪かき”でご近所トラブルが発生!?
道南では雪が少ないものの、北海道の多くの地域では12~2月は雪が積もるため雪かきが欠かせません。
筆者が以前札幌市内の実家に住んでいた頃の話ですが、裏に住んでいる住人と母親が、「雪かき」が原因でトラブルになったことがあります。
裏の住宅の屋根が筆者の実家の庭に面しているのですが、裏の家の屋根からこちらの庭に雪が大量に落ちてくることで余計に雪かきをしなければならず、母が裏の住人と話した結果、口論になってしまいました。
最終的に、裏の住人がフェンスを取りつけることで落ちてくる雪の量は少なくなり、解決したのですが……。
ただし雪かきをめぐるトラブルは珍しくなく、近隣の住民同士が雪を捨てる場所で言い争いになっている場面を目撃した経験や、社宅の住民同士が“雪かき当番”をめぐってトラブルになった話などを聞いたことがあります。
賃貸住宅では住民が雪かきをする機会は少なく、市町村の除雪または民間の除雪業者を雇う事例が多いようです。
5.ガスの違いで暖房代が3、4倍になることも
北海道では冬の暖房費がかさみ、企業によっては冬季限定で「寒冷地手当」「光熱費」が支給されます。筆者が以前勤めていた企業では11~3月の間に1世帯当たり2万円の光熱費が支給されていました。
暖房には石油・ガスなどがありますが、ガスストーブの場合LPガスと都市ガスで価格が大きく異なります。
筆者は単身で札幌市内の都市ガスの物件に住んでおり、ガスストーブを使い毎日湯船にお湯を張っても、冬季のガス代は最も多い月で8000円程度です。しかし、同じく単身でLPガス物件に住んでいる友人に聞いたところ、冬季は2~3万円程ガス代が高くなるため湯船に入るのを我慢しているという話でした。
最も多い月には4万円程度とのことで、都市ガスとLPガスでは暖房費が数倍に跳ね上がることになります。
なお、ガスをLPガス・都市ガスのどちらを選ぶかは物件を所有するオーナーの判断であり、オーナーが決めた業者のガスを使うことになります。LPガスも業者によって価格が異なることが問題視され、資源エネルギー庁では「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」が設けられました。
6.ハウスメーカーや管理会社は「地縁」もポイントに
上記で紹介したW断熱のハウスメーカーでは、北海道内の神社・公園などの公共施設を多く建設しています。
北海道は、ハウスメーカー・管理会社など不動産業者は「地縁」が重要視される傾向にあり、賃貸住宅も管理会社が指定される事例があります。なかには、管理委託料が割高である管理会社も存在するので、北海道の不動産投資を検討されている人は、事前に管理手数料などをよく確認しておきましょう。
北海道の住宅事情と物件の特徴6つをお伝えしてきました。北海道は賃貸住宅に住む人が多く部屋は広い傾向にありますが、家賃が安い点が居住者にとってメリットです。
ただし、冬はガスの種類によって暖房費が大きく異なりますので、ガス会社を考慮して物件を選ぶことをおすすめします。物件の断熱性や窓も重要なポイントです。
オーナーや、北海道の不動産投資を検討されている人にとっては、賃貸住宅を購入する際、都市ガス物件を選ぶことで入居率が高くなる確率が上がることをおさえておきましょう。場合によっては除雪代がかかる点にも注意したいですね。
この記事を書いた人
2級FP技能士・ライター
北海道在住。大学在学中に2級FP技能士を取得。 会社員を経てFP資格を活かし、ライターとして不動産・金融・相続・法律分野の記事を多数執筆する。「難しいことを分かりやすく」をモットーにライターとして活動中。