入居者さんが「対応してくれない」「泣き寝入り」…クレーム対応の下手な管理会社にご注意を
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/06/01
文/朝倉 継道 イメージ/©morris71・123RF
管理会社に頼りたいのはクレームやトラブル対応
賃貸物件に住んでいる入居者さんから、
「隣の部屋がうるさい」「部屋の設備が動かない」
あるいは物件のご近所から、
「おたくのアパートの住人のマナーが悪くて困っている」
こうしたクレームやトラブルへの対応を迫られることは、賃貸住宅を経営するうえでの昔からの宿命だ。とはいえ、現在は賃貸住宅オーナーと入居者さんとの間に、管理会社が介在するケースも一般的となっている。
そのため、管理会社とパートナーシップを組む最大のメリットとして、クレームやトラブルの対応を彼らに任せられることを挙げるオーナーもいまは数多い。
ただし、気を付けたいことがある。
管理会社のなかには、クレーム・トラブル対応が上手なところもあるが下手なところもある。オーナーはそのことをぜひ心しておくべきだ。
クレーム対応、トラブル対応が下手な管理会社は入居者さんの不満を余計に膨らませ、ときには退去を誘発してしまう。賃貸経営の味方どころか足を引っ張る存在となることも珍しくない。
筆者が過去に見聞きしてきた、管理会社による「下手な」クレーム・トラブル対応の実例をいくつかおさらいしていきたい。
苦情を伝えた本人には報告なし ちゃんと動いてくれているの?
「夜中にしょっちゅう人を集めて騒ぐうるさい部屋がある。注意してほしい」
そんな入居者さんからの要望を受け、「分かりました」と請け合った管理会社。早速レターを作成した。
「物件内で夜間の騒音への苦情が出ています。ご注意ください」などと記した手紙だ。さらに、それを各部屋のドアポストに入れて回った。「これで一丁上がり」と、担当者はひと安心だ。
ところが、彼はそのレターを苦情を訴えた本人の部屋にだけは配らなかった。理由は?
「それは、この人が苦情を訴えている本人だからです。逆に聞きたい。なぜ、わざわざこの人にまで配る必要があるんですか?」
「レターをほかの部屋に配ったことは本人に伝えたかって? いえ、それもしていませんけど……」
こんな初歩的なミスを犯す管理会社がいまも意外に存在する。ほとんどのオーナーがご理解済みと思うが、この状態では管理会社が苦情を受け動いた事実が、訴えた本人にはまったく伝わらない。
そのうえで、例の「うるさい部屋」に改善がみられない場合、最悪となる。苦情を訴えた入居者さんは、「自分は無視されたのか?」と、当然管理会社を疑うことになる。やがて、不信感が募り募って、早期の退去に結びつくことにもなりかねないといった流れだ。
「この物件は荒れています」を積極PR?
賃貸住宅のエントランス脇などに置かれているゴミの収集ボックスでたびたび見かける光景だ。
「収集日を必ず守ってください」「分別されていないゴミは収集されません。各自お引き取りください」
目立つ文字で書かれたそんな注意書きが、ボックスのフタにべったりと貼り付けられている。これは、空室を内見しにやってきた人の目にはどういった印象で映るだろう?
「この物件は荒れていそうだな。入居は避けよう」か、もしくは「生活が雑でだらしないオレ(ワタシ)向きの物件だ」のどちらかだろう。
ダメな管理会社ほど、入居者ひとりひとりと向き合う手間をすぐに惜しんでしまうものだ。「張り紙1枚でなんでも片づけておく」という、もっとも安易な方法で、トラブル対応を終えたつもりになってしまいやすい。
汗かく時期に「汗をかかない」対応?
真夏の猛暑の頃。「部屋のエアコンが動かなくなった」と、入居者さんから悲鳴交じりの通報。早速、現地出動部隊であるパートナー企業に対応を任せたまではいいが、それっきり。あれってどうなったっけ……?
実は修理の依頼がどっと増す時期ということで、入居者さんはその後1週間以上、サウナのような暑い部屋でまちぼうけを食らわされていた。
「死ぬかと思った」とのことだが、冗談で済まされない事態となることももちろんありえただろう。
一方しっかりした管理会社は、こうした「丸投げ~あとはよろしく」はやらない。このようなケースでは、2つのリスクが生じることをちゃんと分かっているからだ。
・熱中症で入居者さんが倒れるリスク
・エアコンが動かない間、賃料減額の必要が生じるリスクとそれが長引くリスク
この2つだ。
特に前者は重い。入居者さんの命がかかっている。事故物件の発生につながる可能性もあるので、絶対にうかうかしてはいられない。
そこでパートナー企業に出動を依頼しつつも、管理会社の担当者もまた、扇風機や冷風扇といった応急用の機器を携え、まずは急いで部屋に駆け付ける。入居者さんと部屋の様子を確認する……。デキる会社ならばそんなマニュアルを備えているはずだ。
「故障と思っていたら、実はコンセントが外れていただけだった」といった場合も、多くはそれで解決できる。
あの人は神経質だから…
ある賃貸マンションの1室に暮らす入居者が、居住用として契約しながら部屋でひそかに毎日客が訪れるタイプの商売を始めていた。
昼夜を通して響く話し声や笑い声に、隣の入居者さんが憔悴。管理会社に相談した。
そこで管理会社の担当者は、問題の部屋のもう一方の隣室がたまたま空室となっていることを思い出した。そこを訪れ、「隣は本当にうるさいのか……?」潜入調査を開始した。
結果、気になるほどの声や音はほとんど聞こえてこない。そのため担当者は……
「やっぱりか。そもそもこの物件は防音のしっかりしたRC(鉄筋コンクリート)造。おかしいと思ったんだ」
苦情を訴えている人が神経質な事例だと判断、
「集合住宅なんだから、多少の生活音は皆さん我慢しています」
その後は、のらりくらりの“面倒なクレーマー向け”対応を決め込んでしまった。ところが、問題の部屋は本当にうるさかった。
担当者が“潜入”した部屋と、その部屋との間は、たしかにRC造らしく遮音性に優れた厚いコンクリート壁で隔てられていた。
一方、苦情を訴えていた入居者さんの部屋との間は違っていた。コンクリートの入らない、石膏ボードもしくは板2枚でグラスウールを挟んだ、薄い戸境壁があるだけだった。
ちなみにこれは珍しいケースではない。単身用の狭い部屋が並ぶタイプのRC造の集合住宅ではよく見られる状況といっていい。
結果、騒音に耐えられなくなった入居者さんは、泣き寝入りするかたちで退去。問題の部屋の住人も、ほどなく契約違反が発覚し、退去。
なんとも後味の悪い結果となったが、巷にいくらでもあるケースを想像できずにいた管理会社担当者のうかつな決めつけが、残念だったとしかいえない事例だろう。
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この記事を書いた人
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