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また起きてしまった賃貸住宅での「騒音トラブル」の悲劇…悲惨な事件の芽を摘むには

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文/朝倉 継道 イメージ/©Elnur・123RF

大阪で女子大生が殺害される

ゴ-ルデンウィーク直前の4月28日、大阪府大東市の賃貸マンションで、悲惨な殺人事件が発生した。

その後、報道により少しずつ明らかになってきている前後の状況から、不安をかなり感じている賃貸住宅オーナーも少なくないだろう。

殺害されたのは、この物件の3階の部屋に住んでいた若い女性だった。年齢は21歳、大学生。一方、犯行に及んだのは、女性の真下の部屋に住む、48歳の会社員の男と見られている。

男は、この日の朝、女性の部屋のベランダと、自らの部屋のベランダとの間にはしごをかけて、これを登った。次いで、掃き出し窓を破り、女性の部屋に侵入したようだ。

現場には、凶器となった血のついたバールや包丁、棒の先に刃物をくくりつけた手製の「槍」が残されていたという。加えて、女性の部屋のドアには、女性が逃げ出せないように、あらかじめ外からストッパーもかけられていた。そのうえで、女性は身体の各所を刺されたり、殴られたりして、血まみれの状態で死亡。

一方、男は、犯行後自らの部屋に戻り、そこで用意していた灯油を撒き、火をつけた。自害のかたちで、急性一酸化炭素中毒により死亡している。

若くして亡くなった女性の冥福を心から祈りたい。おそらくは、すさまじい恐怖と、痛みの中での死だったことだろう。

なお、犯行の理由を語る重要な証言者となるはずの容疑者を失ったこの事件だが、その後、背景が少しずつ判明してきた。

殺人事件の原因は騒音トラブル

被害者の女性と、男の間には、どうやら、生活音などにともなう騒音トラブルが発生していたらしい。

男は、普段から、音にはかなり敏感だったようだ。事件の前には、ほかの部屋から聞こえてくる音に悩んでいる旨を周囲に漏らしていたともされる。

さらに、男は、今回の犯行日に近い3月下旬から4月上旬にかけても、やや異様な行動をとっている。隣室との間の壁を執拗に叩くなどしている。

恐怖を感じたその部屋の入居者は、警察に相談のうえ、早々に当物件から退去したが、おそらくはこれで危うく難を逃れたかたちだ。

なお、今回、男と被害者の女性との間に、事件以前の接触ややり取りがあったかは不明のようだ。

しかしながら、無言のまま恨みを募らせての爆発的犯行であったとしても、その原因には多分「音」があっただろうというのが、現在、さまざまな状況を拾い集めたうえでの周囲の一致する見方となっている。

騒音トラブルはオーナーも気付きにくい

騒音によるトラブルは、賃貸住宅で生じる最大の懸案といっていい。

さらには、もっとも大きなリスクのひとつであるともいってよく、記憶に新しいところでは、今回の事件のほぼ1年前にも(2020年5月4日)、東京・足立区のアパートで、30代の男性が、音への抗議を理由に、当該アパートの住人に刺し殺される事件が起きている。

さらには、自らの運営する物件内で、騒音トラブルが起きていることを知らずにいるオーナーも、実は意外に多い。

その理由は、ひとつに、入居者が自ら問題解決している場合が多いこと。いまひとつは、対応にあたった管理会社が、そのことをオーナーに知らせずにおく例も少数ながらあるためだ。

そこで、以下は、経験にもとづいての私見になるが、前者では、騒音に悩まされた入居者が、自ら物件を去るかたちで問題解決している、いわば泣き寝入りのケースが、多分もっとも多い。

次には、いわゆる「壁ドン」や、入居者同士の張り紙・手紙による注意、なかには面と向かって苦情を訴えたり、怒鳴ったりなど、いわば「自力救済」が行われているケースも少なくない。

さらには、そのようなプレッシャーを受けることで、騒音源だった方の入居者(あるいは騒音源だと疑われた入居者)が、相手を恐れ、自ら物件を出ていくというのも、たびたび見られる光景だ。

なお、どのケースにあっても悩ましいのは、こうした原因として、非常識な騒音が実際に存在する以外にも、難しい問題がほかに起きている事例もままあることだ。

経験でいえば、なんらかの理由で心を病み、神経過敏な状態となった賃貸住宅の入居者が、周囲のごく些細な生活音にさえ耐えられなくなり、ついに「暴れ出した」現場で、仲裁に呼ばれたことが過去に何度かある。身の危険も感じる難行だったが、今回、大東市で起きた一連のことにおいても、一部は(あるいはほとんどが?)これに該当する可能性があるようだ。

オーナーは入居者の「人心」を把握しておく必要がある

そこで、オーナーも、管理会社も、普段からもっと物件内の「人心」を知っておいた方がいい。

具体的には、入居者さんに対し、生活上の悩みがないか、物件内での不満がないか、たまにはアンケートをとるべきだ。しかしながら、これを実行するオーナーも、管理会社も、きわめて少ない。

それどころか、オーナーのなかには、管理会社に対し、煩わしいので物件内でのトラブルについてはいちいち知らせないように申し付ける人もいるとかで、それが前述した「管理会社がトラブルをオーナーに知らせずにおく」事例を助長している可能性もある。

これは、もってのほかの行動だ。

賃貸経営という、社会的経済活動を行う経営者としても、入居者と契約を交わす当事者としても、資格に欠けるというほかないだろう。普段から、顧客である入居者の声を拾い上げていれば、大きく育つおそれのあるトラブルの芽も、小さいうちに摘むことができる。

管理者が、そうした悩みや不安に応える姿勢を見せることで、物件内でのトラブルに際しての危険な自力救済も避けられる。さらには、膨大な顧客からの声を収集できるということで、当然、それは経営にも資するだろう。

数千、万を超える物件を管理し、そこに暮らす入居者と直接コミュニケーションをとれる立場にいる管理会社よりも、広告事業者である大手の不動産ポータルサイトなどが、市場のニーズやメンタルに対し優れた慧眼を示す例が時折見られるというのは、本来、とてもおかしなことのはずだ。

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この記事を書いた人

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