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私立大学新入生の支払う家賃を仕送りから引くと、残りは1万円台に…35年前はどうだったか

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文/朝倉継道 イメージ/©karandaev・123RF

いまどき新入生の家計負担事情 

東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)が、「私立大学新入生の家計負担調査 2020年度」をこの4月5日(2021)に公表している。毎年話題になることも多い注目のレポートだ。主要な部分をまとめた「2020年度調査結果のエッセンス(記者会見版)」が、下記リンク先で公開されている。

東京私大教連 私立大学新入生の家計負担調査 2020年度(記者会見版)

・受験から入学までにかかる費用
・入学の年にかかる平均的な費用
・毎月の仕送り額
・入学費用の借入額

と、いったデータのほか、賃貸住宅オーナーが気になる「学生が暮らす賃貸物件家賃の平均額」も発表されている。

調査対象は、20年度に私立大学に入学した新入生の家庭(保護者・父母)。入学先は、下記1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)にある9つの大学となっている。

・東京(6校):工学院大学、中央大学、東京経済大学、明治大学、明治薬科大学、早稲田大学
・神奈川(1校):麻布大学
・埼玉(1校):獨協大学
・干葉(1校):東邦大学

早速、いくつかの内容を見ていきたい。まず「受験から入学までの費用」だ。自宅通学者と自宅外通学者、それぞれの平均が挙がっている。このうち、自宅通学者の数字は今回が過去最高となっている。

自宅通学者 …159万8523円(前年度比+10,700円 0.7%増)
自宅外通学者 …220万1023円(前年度比-4,300円 0.2%減)

なお、上記自宅外通学者における費用の内訳には、「家賃」と「敷金・礼金」も入っている。それぞれ以下の金額となっている。

家賃(平均) …6万4200円
敷金・礼金(〃) …22万5300円

これらに、受験費用(25万100円)、生活用品費(32万700円)、大学への初年度納付金(134万723円)を合わせた額が、上記220万1023円となるわけだ。

家賃は尻上がり 仕送りは過去最低

「家賃」については、過去のデータも記されている。

抜粋すると、以下のとおりだ。(15年度までは5年刻み。17~20年度までは1年刻みであることに留意を)

1986年度 …34,700円
1990 〃 …48,300円
1995 〃 …55,300円
2000 〃 …59,600円
2005 〃 …58,700円
2010 〃 …61,100円
2015 〃 …61,200円
2017 〃 …61,600円
2018 〃 …62,800円
2019 〃 …63,400円
2020 〃 …64,200円

ご覧のとおり、金額はほぼ尻上がりに増えている。最新データである20年度分が最も高くなっていることも分かる。一方、過去最低となったのが、親が送る学生への仕送りの額だ。

・入学直後の新生活や教材の準備で費用がかさむ「5月」の平均
…8万8900円(前年度比8,800円の減で、過去最低)

・5月を除いた「6月以降」の月平均
…8万2400円(これまで最低だった2018年度より700円減少、過去最低)

これにより、6月以降の月平均仕送り額に占める家賃の割合は、20年度は77.9%となっている。単純にいえば、仕送りの8割方が家賃に充てられてしまう計算だ。そのため、上記の平均モデルにピッタリあてはまるという学生の場合、仕送りから家賃を引いた額は1万8200円となる(82,400円-64,200円)。

さらに、これを30日で割った「1日あたりの生活費」は約607円と出る。

あくまで、一部の大学を対象としたデータによる単純計算ながら、現在の学生達の生活の厳しさが如実に垣間見られる数字となっている。これでは、アルバイト無しでは携帯電話代の支払いさえ難しそうだ。

ちなみに、同じデータを1986年度にさかのぼって見てみたい。

(1986年度)
6月以降の月平均仕送り額 …103,000円
毎月の家賃の平均 …34,700円
上記の差額 …68,300円
1日あたりの生活費 …約2,277円

いかがだろう。この記事を読まれているオーナーのなかには、「1日2千円ちょっとで暮らす」というこちらの数字に、かつての実感が湧く方も多いだろう。

仕送りに対する家賃の割合も3割ちょっとと、かなり健全な印象だ。バイトで稼いだ分は「車に、スキーに」といった当時の風景が、筆者の目の当たりにも浮かんでくる。

なぜ新入生は安い物件を選ばないのか?

ところで、この東京私大教連が毎年発表している数字には、よくオーナーから「不思議だ」との声も挙がる。

「いまだって家賃3万円台、4万円台の物件はいくらでもある。私の物件だってそうだ。なぜ学生さんは生活が苦しくなるのにそっちを選んでくれないのか」

同じ疑問は、10年代の半ば頃まで、筆者も、オーナーのみならず仲介会社や管理会社のスタッフからもよく耳にしたものだ。

しかし、この「謎」は、その後不動産ポータルサイトの編集部などによる調査や研究によって、だんだんと解き明かされてきた。

答えは、「家賃の安い物件にありがちな『環境』に対して、自分が育ってきた過去に同じ経験がない世代は耐えられない」と、いうものだ。

例えば、低家賃の物件でよく出会う、バス・トイレが一緒の「3点ユニット」や、「室外洗濯機置き場」は、見事にこれにあたる。

90年代後半前後以降の、快適性が急速に高まったマンションや一戸建てで育った世代からすると、これらは主に清潔感の面からとても耐えられない。

ゆったりとくつろげるはずのバスタブの目の前に便座。服を清潔に洗う道具であるはずの洗濯機の上に土やホコリ。「おぞましい」といってよいほどの拒絶感をもたれることもあるという。

そう聞くと、筆者も感覚をすぐに理解できた。なるほど腑に落ちるし、おそらく正解だろう。が、上記、仲介会社のスタッフの1人(昭和40年代生まれ。汲み取り式のトイレを知っている)は、筆者に対しこんな風に言っていたものだ。

「初めて一人暮らししたときの自分の部屋で、3点ユニットを見たときは、便利そうで、清潔で、ホテルみたいでお洒落だと私は感動したんですけどね」

賃貸経営は、若い入居者と年齢を重ねたオーナーとのジェネレーションギャップが表面化しやすい業態だと昔からいわれている。顧客レベルでの「あたりまえ」に、オーナーがなかなか気づけないことも多い。

時代とともに変わる人々や社会の感性に、ぜひ日頃から鋭敏でありたいものだ。

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この記事を書いた人

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