アパート・マンション 孤独死のあとに残されたペットをどう保護するか(3/3ページ)
山本 葉子
2020/11/27
数日の猶予で助け出せる可能性は、かなり上がる
飼い主が亡くなったあとも、猫たちが生き続けられたのは、キッチンのシンクに水が溜まっていたこと。ほぼ空になった大きなドライフードの袋があったことから、それらで飢えや渇きをしのいで、猫たちはなんとか命を繋いでいられたようでした。
捕獲して保護した猫たちは、車に運びその場の車内でブドウ糖を飲ませたり、脱水の酷い子猫に補液をしたりして、とりあえずの応急処置を済ませ、シェルターに帰ります。
まだ、猫たちが残っているのではないかと一晩中心配しながら待って翌日。午前中にお部屋を再訪しました。捕獲機も数台仕掛けていったのですが、これにはかかっていません。ですが、各部屋の扉をそれぞれ閉めた3つの部屋とロフトにあった全てのお皿の餌が減っています。各部屋にはまだまだ見つかってない子がいるということです。
それから2日間、お部屋に通って保護しました。知らない人が怖くて隠れていた猫たちは全部で6頭いました。見つかった場所は、スレンダー(というか痩せている)アメショ柄の4カ月齢くらいと思われる子たちが、洗濯物が入ったカゴの底や、エアコンと天井の隙間、紙製の靴箱の中にみっちり2匹、押し入れの畳んだ布団の中など、さまざまな隙間から出てきました。
すべての猫を保護したあと、お部屋は清掃(いわゆる特殊清掃)をして、フルリフォームされたそうです。こうした清掃やリフォームの費用は借りていた方のご両親が費用を支払われました。大家さんと管理会社さんも「原状回復ができればいいので」とのことで、穏やかに対応されていました。
物件を賃貸しているオーナーさんにとってこのような事態は大変な出来事です。お部屋にダメージがあるだけでも大変なのに、さらに動物がいた場合には、その対応もしなくてはならず、その負担はさらに増えます。
それでも1頭や2頭であればいいのですが、このケースのようにたくさんの猫がいると、すべて保護することは難しくなります。しかし、数日の猶予をいただければ助け出せる確率がかなり上がります。
空室の期間が長くなるのはオーナーさんにとっても負担になりますが、こうした時間をとっていただければと思います。昔はこうした状況になると、頼るところも方法もなく「保健所に!」という一択が多かったのですが、今は猫だけに限らず犬も保護してくれるNPOなども増えています。まずはそうしたところにご相談ください。
私たち「東京キャットガーディアン」ではいろいろなケースに出合いながら猫のレスキューを続けています。オーナーさんも運営上、大変なことが多いと思いますが、ほんの少しの時間と空間を貸していただけるだけで、人と一緒に住んでいる動物達を助けることができます。
さて、保護したたくさんのアメショさんたちは、体力の回復にだいぶ時間がかかりましたが、全員新しいご家庭に繋げることができました。
この記事を書いた人
NPO法人東京キャットガーディアン 代表
東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。